詩人:右色 | [投票][編集] |
なんだい?
その不満そうな顔は。
君は小説を読んだことが無いのかい?
「君と僕とは一つだ」
そんなセリフをね、書き手が言わずにはいられないのはね。
まさしく、比喩でもなく、そうだからだよ。
延々と繰り返される。
自問自答。
それこそが小説なのだから。
絢爛豪華に彩られた舞台で。
たくさんの個性を演じる。
伝えたいのか。
理解して欲しいのか。
それとも。
知られたくないのか。
それこそ、そんな意図や意味なんかを詰め込んで、ね。
それでも、実在するのは、アメ玉一つなのさ。
だから、好き嫌い言えるし。
言うものでもある。
だから、ホントは何万という文字で無意味なんだ。
だけど、何万人という人に読んで欲しいから。
そして、何千という人に理解して欲しいから。
小説ってアメ玉はあんな形をしている。
だから、どっちが先で、どっちが優れているなんて話ではなく。
自分にとっての無意味を省いて。
多くの人間にとって無意味で理解できなくとも。
「詩」もまた、一つのアメ玉なんだ。
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僕が『世界』って形容詞を使うのは
その言葉の中にたくさんの意味を込めたいから
自分の知ってることや思ったこと
誰かが言ったことや考えたこと
そういうことを全部
覚えていたいし
増やしていきたいから
僕は『世界』って言葉を使うんだ
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君にとって空白こそが充実であるように
僕にとって埋め尽すことが充実になるんだ
真っ白な君の手帳と
真っ黒な僕の手帳
インクの分だけ重たい僕の手帳は持っているのが大変で
軽すぎる君の手帳はなくしてしまう不安を抱えながら
僕と君は同じ日付の上に立っている。
どちらの手帳が幸せなのかはわからない。
けれど。
今この瞬間は笑おうじゃないか。
幸せかどうかなんて、後から手帳に書き足せばいいのだから。
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その雨は安易に傘を突き抜ける
(まるでそれこそが正しい事であるかのように)
それでも心臓は底抜けのグラスで
降れども何も溜まることはなく
(曇天)
不意に目を思い出す
視線はいつだって望んだものを見つけてくる
(まるでそれだけが正しいかのように)
うずくまる
雨は降り続く
止むまで待とう
きっと明日には止むだろう
(もう見たくないから目を閉じる)
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11月の終わり
季節はずれの陽気
抜けるように蒼い空は
地上のありとあらゆるものを受け入れるかのように
どこまでも青々と果てなく広がっていた
だから僕は尋ねてみた
こんな日だから僕は尋ねてみたくなった
やああって
僕は僕の知らない何かを
中空へと放ち
応えを待った
ただ待った
雲一つ流れることもないまま
空は赤くなり黒くなった
何かに絶望したのか
それとも感動したのか
不意に泣きたくなった
僕が泣き出す寸前
「探したよ」
僕の知っている誰かが駆けつけていて
僕は
待っていたよ
なんて科白を口にした
どうやら
僕は嬉しいらしい
口元が緩んで仕方がない
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朝
ハンバーガーを食べたのは
主義や思想に関係なく
主に時間と経費の問題で
昼
何も食べずに
ハードカバーの本を読み耽り
孤独を友とする姿は
なんとなく自虐的で言い訳じみているが
それが趣味だと言い張るだけの自己愛は持ち合わせていた
夕方
ペペロンチーノを食べ損ねたのは
イタリアの文化とか歴史は微塵も関係なくて
需要と供給という
まことに合理的な経済活動のせいで
夜
得体の知れない料理を食べるはめになったのは
謝る言葉が出てくる前に
出て行ってしまった君のせいで
この空腹と倦怠感は全て君のせいで
そして
考えるまでもなく僕のせいだ
ごめんなさい
帰ってきて下さい
お腹が寂しいです
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いわゆる「問題」というものは
常々目の前にブラ下がる腐ったニンジンのようなものでいて
いざ取り除こうと手を伸ばせば
はるか遠く
腕は短い
ならばこそ
足を進める意味があるのだし
ならばこそ
意味のない歩みなどない
今すぐに解決すべきは
目の前の問題ではない
解決すべきは
足どりも重くし
目を曇らせる
親友のような弱き心だ
強くあれ
過去と未来
そして現在の自分のために
強くあれ
すでに出会った
そしてこれから出会う人のために