詩人:右色 | [投票][編集] |
昔の人が言うには
一日に
二つ嫌いなことをすると
魂の健康に良いらしい
なるほど
道理で
不健康なわけだ
僕が何十年か掛けて
作り上げた
僕の日常には
嫌いなモノが入っていない
だいたい
好きな人と一緒にいて
だいたい
好きなことをしている
それらは
大体のところ
代替の聞くモノだけど
少なくとも
嫌ってはいない
無いものは仕方がない
幸い今日は日曜日
無いのなら探しに行けば良いだけ
出来れば
時間やお金や体の健康に
優しいモノが見つかればいいのだけど
そうして
僕は
嫌いなモノを探しに
街へ出る
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僕は煙草は吸わないけど
退屈で丸めた日常に火を点けて
同じ様な不健康してる
今日も
肺一杯に無駄を詰め込んで
ため息をつくことさえ出来ず
大切な「時間」は煙になって
ただ消えて行く
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僕等はざわめきの中で生きている
ずっと疑問だった
なぜ音楽があって
大体どこに行っても流れていて
まるで
水の代わりに音で満たされた水槽のようで
僕等はそこで生きている
交じり合ういくつもの音楽は
耳に届くころには
心臓を持った曖昧で
何を言っているか分からない
街は音楽で満たされ
人で満たされて
だから、もう
言葉の入る余地なんてない
この場所は
余りにも、ざわめきで出来ている
でも僕等は
きっと望んで
このざわめきの中で生きている
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誰でもいいなら
僕でもいい
少しだけの間
君にとっての
誰でもいいの席に
僕が座る
その席は隣り合ってなくて
向かい合ってもいない
ただ視界の隅に
ちょんと
雨どいの雑草みたいに
佇む
そんな場所
特別でも大切でもないけど
ほんの少し
安心してください
君にとって
誰でもいい所に座っている僕は
だからこそ
君にとっての安心になりたい
毎年咲く小さな花とか
毎日見かける名前も知らない雑草とか
その位の安心
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停まっている
でも
進んでる
動いていない
でも
同じ場所に居ることができない
たぶん
そして
おそらく、きっと
僕は落下している
知ろうとしないから
知らないままの未来へと
落ちてゆく
飛べない僕は
しかし
落ちてゆく僕で
しばらく
ずっと
このまま
この落下が
怖い
と
そう思えるまで
僕はしばらく
ずっと
落下する
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貝塚明彦は
失いたくないから逃げているのだと
思っていた
彼は誰とでも分け隔てなく接するが
同時に誰とも仲良くならない
彼自身別段意識しているワケでもないが
気付けばそんな風だった
森崎ユウにとって
感情は理解放棄の態度でしかなかった
彼女は何時如何なる時も思考を休めることなく進める
それこそが唯一意味ある行為で
ろくに会話すら出来ない隣人を相手にする必要はない
彼女は誰に教わることもなくそう確信している
無論
この二人に感情は無い
しかして人の結合原理が妥協と諦観である以上
森崎ユウは一人であるし
世界が有限で時間に支配されている限り
みんなと仲良くしたいと願う貝塚明彦は
誰とも繋がることはできない
そんな二人は
この蒼い月の夜
同時に涙する
貝塚は微笑み
森崎は否定しながら
二人は同じ色の涙を流して
同じ夢を見た
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――ただ一つの機能をもった
そんな、機械になりたい――
崩れぬ確信をパーツに組上げられた
不滅の心臓で
淡々と情熱をリズムする
人形でいいなら人形でいい
この場合、意思など無価値だ
ただ前に歩ける足だけを付けてくれ
完成したら
森へ行く
そこで沈黙するために
ただ一つの機能を必要をする
誰かを待つ為に
しかして
沈黙は
まだ遠い
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いつまでも
甘い甘い少年時代
甘党は別にいいけど
酒場でオレンジジュースを頼むのは
せめて三回が限度
大人とか大人とか
構える必要はないけれど
せめて大人の格好はしないとね
足掻いたところで
ネバーランドは閉館中
いい加減で
いい加減しないと
そのままずっと
そのまま
納得してくれたら
まず
髪でも
切りにいこうか
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何時間かずっと
鏡の前に立っていた
鏡に映る
知らない誰か
どうしても思い出せなくて
ダレダロウ
ダレダッタロウ
とてもよく知っていて
とてもよく嫌っていて
それでも
ずっと長い間一緒にいた
そんな気がする
ダレダロウ
ダレダッタロウ
だんだんと
鏡に映る誰から表情が消えていき
口元には
とても嫌な笑みが滲んでくる
取り返しのつかなくなる
その前に
思い出さなくてはいけない