詩人:右色 | [投票][編集] |
いいかお前は喋るなよ
お前は変な奴だ
しかも最も手がつけならない手合いだ
普通の変な奴は普通を装うもんだし
普通な奴が変な奴を気取っても面倒なだけで害はない
だが
お前は変な奴でそのままだ
そうなると
失敗したかどうかとか悠長なことは言ってられなくて
殺すか殺されるか
そんな切羽詰まった選択肢しかなくなっちまうんだ
だから
自分や他人を大切にしたいと思うなら
お前は喋るな
それでも何か言いたいことがあるなら
お前の言葉を使わずに
本でもマンガでも何でもいい
ともかく別のところから言葉をもってくるといい
それくらいで
ちょうど世の中のバランスが取れるんだ
詩人:右色 | [投票][編集] |
大切な誰かはあなたでなくても良かった
あなたはただそこに
私の隣に居たというだけで
私に何をしてくれたわけでもない
ただいつも隣にいただけ
話掛けさえしてくれなかった
ただいつも
図書館の隅に座って本を読んでいた
最初は安心だった
あなたはいつも同じ穏やかな雰囲気で読書する
あなたの代わりに観葉植物が置かれても
たぶん私は同じ目で見ていた
それくらいあなたは自然で
私にとっても自然だった
私の最大の失敗は
あなたに軽い気持ちで挨拶をしてしまったことで
あなたの最大の罪は私に挨拶を返したことだ
その瞬間
あなたは私にとって自然ではなくなり
私の大切な人となってしまった
だから
だから
わたしは―――
詩人:右色 | [投票][編集] |
アリス(少女)はアリスのまま年をとる
無知は盾
純粋は矛
かくして
ロジカル世界(ワールド)は敗北する
ありとあらゆる道徳や正義も
無知の盾を貫くことはできない
知らない者に知らないことを訊ねる愚行を繰り返すばかり
意味や理由も飽きて空の彼方へ
理論武装した包囲も突破されてしまった
コピーや書き足しでは
原典(オリジン)たる純粋に敵う道理もなく
世界の何一つアリスを止めることはできず
アリスは世界の何一つを知ることはできない
矛盾を抱える少女は
そうして
少女のまま
歳をとってゆく
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誰かと誰かの間で
だんだんと言葉が少なくなってゆく
それは「仲良く」なったということ
話さなくても分かること
話す必要がないこと
話せないこと
そういうものを知ってゆくのが「仲良し」
最初は知りたいことがあった
だけど
話す言葉を選んでいたら
そんな暇も余裕も全て無くなった
そう
とても分かりやすい形で
目的が手段に喰われてしまったんだ
目的化した手段には終わりが来ない
だから
私の話に終わりが無い
始まりさえ無い
ストーリーも無ければ
感傷も無い
つまらないならまだいい
最悪なのは
何よりも私自身が楽しんでしまっていることだ
目的の無い行為は
瞬間瞬間が快楽だから
心弱い私は足を止めながら
天空を駆ける夢を見る
――ああ
だから
仲良くしないでくれ
言葉を消さないでくれ
私は醒めぬ夢を見てしまう
終わらぬ夢を語ってしまう
その地平は
私にとってのみ最上であって
他の誰かにとっては無意味な巨大なのだから――
詩人:右色 | [投票][編集] |
「楽しい」とか
「苦しい」とか
人生にそんな感想を持ってみた
たぶん
それは
どこかの過去が見た夢の追憶
「苦しい」というのは
夢から遠く離れていた僕を見て
「そっちじゃない」と
僕自身の夢が教えてくれること
知らないわけじゃない
素直になれない
でもやっぱり理解してないと思うから
その優しい忠告は
とても苦しいものになる
反対に
夢の中を歩くことが出来れば
それ以上ないほど
「楽しい」
でもやっぱり
楽しいは夢の終わり
追いついた夢はもう夢じゃない
だから
だから
いつも間違ってばかりの僕は
とても苦しいことばかりだけど
まだこの目は夢を映す
まだこの手で夢を追える
僕の持っている答えは
「苦しい」だけど
それは
「楽しい」よりも
ずっとずっと幸せに近い位置にある
詩人:右色 | [投票][編集] |
割と単純なこと言ってる
自分で物を考えろとか
せめて一週間先の自分くらい見てやれって
俺が出来なかった
でも俺は気付くことが出来た
理由なんてそれで十分だ
意味も意図も途方もなく遠くで落ちるだろうが
俺は何度だって繰り返す
偉そうに聞こえるのは
俺が持つ一番強い言葉を使っているからだ
だから今はこれでいい
お世辞にも頭が良いとは言えない方法だが
俺は何度だって繰り返す
生きろ!!そして考えろ!!
それが出来れば人間でいいんだ
繰り返してやる!
俺は何度だって
間違っていようが
これが俺の正義だ
誤解も嘲笑もまとめて砕いて進んでやる
生きろ!!
考え続けろ!!!!
詩人:右色 | [投票][編集] |
語れるものなどモノの数ではない
真に恐怖という言葉を必要とするのは
何一つ語れないものに他ならない
誰にも語れず
誰にも理解されない
そういう恐怖はじくじくと大きくなり
何も分からなくて
だからとても暗くて
無目的の焚き火を始める
大切だった目標や夢なんてものを薪にして
どんどん燃やす
『とりあえず』
言葉にすればそういう名前の炎がある内は安心できる
だから手当たり次第何でも薪にする
大事にしてたもの程よく燃えた
やがて
焚き火の炎が消えた日
恐怖は名前を得て
恐怖ではなくなった
暗闇が晴れたその場所には
もはや一つ存在していなかった
理解は容易で
大切なものがあったから恐怖があって
それがなくなれば恐怖もまた消えた
涙は無い
それも燃やしてしまった
これで結末ならまだ良かった
しかし私は五体満足無事に焼け残ってしまった
とてもとても
面倒な話だが
この空っぽの部屋にまた色々なもので満たさねばならない
まずは、そう椅子がいい
私を灰の山から引き上げた
あの人とゆっくりと語らう為に
まずはとても素敵な椅子を探すことにしよう
詩人:右色 | [投票][編集] |
愛は理屈じゃない
そう言うけど
理屈にしないと触れることが出来ない
カタチにできない愛なんて
あるかどうか分からないじゃないか
語ることが出来ない愛なんて
苦しいだけの空気だ
それが理屈だというのなら
理屈でいいじゃないか
僕はね
僕の愛を理解してもらう為に
理屈を使うよ
それで僕の愛がとても陳腐なものに
成り下がったとしても
僕は僕の愛を証明してみせる
理屈かどうかなんてのは些細なことなんだ
――唇と唇が結ばれれば
―――そんなこと、どうでもよくなる
理屈がいけないのは
言葉で愛を食い尽くすからであって
愛を語り始めたら
語り終える前に
その唇を結べばいい
そうやって
保たれる
永遠の愛があってもいいじゃないか
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あなたは間違っていないというだけで
決して正しい訳ではありません
どんな主義も主張も形を得れば
同時に反対の性質をもってしまうように
あなたの強さは
同質量の弱さに由来していると知るべきです
あなたはきっと
僕の言葉なんて既知の文脈だと笑い飛ばすでしょう
それでも僕は繰り返す
例え一字一句違えぬ文脈をあなたが持っていたとしても
僕からおくられる言葉はあなたのそれとは色が違う
それが同じで意味が無いと思ってしまうのは
単に選択肢が少ないだけで
赤か青か問うのではなく
どんな赤を問うべきなのです
然るに
僕は僕だけの色を以って
あなたに僕の言葉をおくります
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太陽が直視できない
だから昼間は嫌いなんだ
何もかもがよく見えすぎる
そのせいで
見たいものも
言いたいことも
見落としてしまう
本当はもう少し後ろに下がって
空から出発して
ゆっくりと見落とした物 探してみたいけど
いつだって太陽が邪魔するんだ
出来ないのか
やらないのか
そんな有名無実の懐疑に
囚われているわけじゃなく
どうも昼間はうまくいかない
目もよく見えなければ
舌も回らない
そのくせ
昼間にしか
見たいものも
会いたい人も出てこない
やっぱりね
だいたい全部
太陽が悪いんだと
そう
おもう