詩人:右色 | [投票][得票][編集] |
少年は王と対峙する
少年は言う
世界を優しくしてくれ、と
王は笑い、立ち上がる
ならば、世界を変えてみるがいい
王は少年に優しさの種を持たせ
少年は旅に出る
少年は優しさの種をまきながら旅をする
しかし
深い深い森の奥から
人がたくさん居る大きな街まで種をまいたけれど
どの種も芽が出る前に枯れてしまう
だが
少年はそれでも種をまき続ける
やがて少年は青年になり
青年は老人になった
ゆっくりと、ゆっくりと歩を進めた脚も
終には大地に膝を折る
そんな老人に心配そうに
そしてどこか不思議そうに声を掛ける少年
おじいちゃん、大丈夫?
老人は理解した
何故、いくら種をまいても芽が出ないかったのかを
老人は笑った
かつて少年だった老人にこの種を託した
あの王のように笑った
そうして
老人は最後の一粒になってしまった種を少年に託す
少年が種を受け取ると
老人は眠りについた
とてもとても優しい顔つきで
老人は最後の眠りについた
少年は少し考えたあと、老人の隣りに種を埋める
ずっとずっと
後になって
その場所には
一本の木があった