詩人:なってくる | [投票][編集] |
誰も知らないうちに
ひっそりと雷は落ちていた
こぞって同じ煌めき見上げる街と
賑わう祭りの列から外れ
たまたまふと立ち寄った
古びた小さな映画館で
一変する人生や
隠れ家のような本屋の隅
一冊開いた少女に
今起こっている出来事や
立ち入り禁止の屋上で
見つけて駆け出す想い
胸の騒ぎは他人に聞こえない
無音の爆音は
静けさの中にゾクッと
空を裂く閃光が
脳天から背筋を駆け抜けた
一瞬の出来事を
人々は見逃していた
あなた以外誰も知らない
今日だけは地球が二回転したことを
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苦しいほどの
感動をあげる
君を焼き尽くす
感動をあげる
森羅万象が息を殺して
全身を澄まして待つ
有無を言わせない
感動をあげる
君の何もかもを越えて
直に鼓動を止めてあげる
涙腺破いて
鼓膜焼き消して
喉をカッ裂いて
心臓木っ端微塵に
全身摩り切れてみせても
君の嗚咽は全部知ってるよ
仮面の下も
作り笑いも
裏返した態度も
含ませた意味も
言わなかった気持ちも
全部わかり切ってて
狡くて汚くて必死でちっぽけで許せない君を強く抱くよ
細胞を分断して核が飛び出すほどきつく抱くよ
細胞を展開して裏返せるほどまっさらな心の底から
奈落の底から
真正面から君に愛を示したっていいよ
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《別れ話、でしょ?》
わかってたけど言えなかった
あれだけ嫌がった君が髪を切ってきた
いつか好みだと話したショートだった
靴も服もバッグもメイクも何もかも
今までで一番綺麗だった
行こう。と取った手 離すまで
一度も握り返してくれなかった
切り出しやすいように
カラオケボックスに誘って
明るい歌ばかり歌った
一昨日貰ったメール
初めて君からの誘い
脈絡無く唐突に、淡白な一言
昨日何も手につかなくて
夜まで ただひたすら練習した失恋ソング
会ったら結局入れられなかった
《別れ話、でしょ?》
言ってあげられなかった
君は何度も謝って
僕は一度しか謝れずに
ラブソングで枯らした声で
最後の「バイバイ」を言った
何ひとつ、君に届かなかった。
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生涯の終わりというのは
きっとこの心地だろう
失われていく意識の中で
最後に焼き付けるこの世の
触りが生温くて、芯が冷えた風
大切だった仲間
いつもまでも続くみたいに
今日もふざけたノリで
終わりに向かっていく夏の夕焼け
優しく目を細めた水平線
約束された、さよならの匂い
詩人:なってくる | [投票][編集] |
どれだけ丁寧に説明しても伝わらない
もうどれだけ粉々に噛み砕いて意味が、心が、そこにはいなくなったって響きやしないんだ
泣きそうだ
気付こうとしない怠慢に
平気で生きている醜さに
それを許して疑問も感じなくなった人類の薄情さに
泣きそうだ
泣きそうだ!
そして君はまた忘れんだ
詩人:なってくる | [投票][編集] |
ヒヤリ
吹きつけて
長袖二の腕の結晶
傘帽子の中 舞い膨らむ
乾いた金木犀
ビニール 雨粒 映し出す
晩年草木の瑞々しさに
涙腺凍てつき
天空を想う