詩人:あきら | [投票][編集] |
手の届くものは全部、なにもかも守りたかった。
誰にも悲しい想いをさせたくなかった。
でも、守りたくて精一杯伸ばした手は、逆に守りたかったものを、守らなくちゃいけないものを傷つけた。
僕は怖くなった。
自分自身を憎んだ。
手を広げる勇気もなくなった。
広げるほどの手も自分にはないことに気がついた。
自分の手は思ってたより小さくて、なにもかもこぼれ落ちそうだった。
気がついたときにはなにもかもこぼれ落ちていた。
この手を広げても愛する人を抱きしめることはできない。守ることもできない。そう思って拳を握った。
なにからも逃げたかった。
拳で振り払いたかった。
そう思ってしまう、そんな自分が嫌だった。
そんな自分から逃げたかった。
否定したかった。
その苦しさから逃げたくて、自分の為にもう一度だけと思って拳をほどいて手を広げてみた。
守れるものはまだ少しあった。
もう、絶対離したくなかった。