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きこりはふと気付きました
鉄の斧を泉に投げ入れたまま、返してもらっていないことに
これでは仕事ができません
お花以来何となく気まずくて泉には行けなかったきこりは
思い切って家を出ました
泉に行ったものの
泉の精は留守のようでした
その頃泉の精は
鉄の斧を持って森を歩いていました
これがなければきっときこりは困るだろうと思い
きこりを探していたのです
しばらく歩くと
一軒の家を見つけました
あめやチョコレートなど
たくさんのお菓子でできたかわいい家でした
泉の精はノックしようとした時
ある噂を思い出しました
かわいい家には魔法使いのおばばが棲んでいて
うかつに入ると食べられてしまうという話です
しかし小路の柵にきこりの帽子を見つけ
またノックしようとして
手を止めました
また突き飛ばされたらどうしよう…
迷っていると
足音が聞こえてきました
振り向くと
きこりが沈痛な面持ちで帰ってくるではありませんか
きこりが泉の精に気付き
ふたりは目と目を合わせたまま
きゅっと立ち竦んでしまいました…
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しばしそのまま固まっていたふたりでしたが
きこりはふと泉の精が
大事そうに抱えてるものが
自分の投げ入れた鉄の斧であることに
気付きました
きこりは無言で
その斧を奪い取りました
泉の精は腹が立つというよりは
きこりの傍若無人な態度にショックを受け
走り去ろうとしました
その腕を強引に掴み
きこりは黙ったまま
乱暴にドアを開け
無理やり泉の精を中に押し込んで
後ろ手にドアを閉めました
泉の精の瞳から涙が溢れました
しかしきこりは泉の精を椅子に座らせ
優しく腕を取り
手当てを始めました
斧の先が泉の精の左腕に当たって血が流れていたのです
泉の精は初めて自分が怪我をしていたことを知りました
─そんなに痛かったのか?
きこりが顔も上げずに呟きました
泉の精が泣いたのは
怪我が痛いからなんだと
勘違いしているんだなと
泉の精は思いましたが
─…うん
とだけ答えました
手当てが終わって帰ろうとすると
きこりが家の壁から
チョコレートを一枚剥がして
泉の精に渡しました
─これ…お駄賃
泉の精はにっこり受け取りながらも
─ガキのお使いかよ…
と突っ込まずにはいられませんでした
それをきいて
きこりがクスッと笑いました
初めて見せた笑顔は子供のような表情でした
─また来てくださいね?
泉の精が言うと
─行かねーよ
ときこりは明後日の方を見て答えました
─かわいくない!
泉の精は思わず笑いました
次の日泉の中で本を読んでいると
水音がして
見覚えのある鉄の斧が沈んできました
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きみはね
汚れてなんかない
いつも口先だけは達者だから
奇想天外…いや、
奇妙キテレツなこと
言い出すけど
ほんとにそんなこと
したりなんかしない
みのむしみたいに
汚れた葉っぱ
着けてるだけなんだよ…
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大きなダムができて
容量もハンパじゃない
これならオッケーと
川筋を整備した
大きなダム
ハンパでない容量
慢心ゆえか
油断したか
放水を忘れてた
──ダム、決壊──
涙の川は今日も
ダムに流れ着く…
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怒らせてやりたかったのかも
しれない
この頃
無理してるような気がしたから
一歩詰めれば
一歩引く
一歩引けば
一歩詰める
間合いが掴めなくて
苛立ったりもした
でもね?
きみが大切なんだよ
考えても考えても
きみの間合い
教えてよ
そこで見てるから
きみの苦しくない間合いを
教えてよ
もう一人で
苦しまないで…
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雨にも負けず
風にも負けず
犬にも負けず
鼠にも負けず
冬の寒さにはぬくもりをもたらし
夏の日照りには涙で荒野を潤す
きみが泣けば共に泣き
きみが疲れたら子守歌を唄う
きみが姿を現すまで倒れてなるものか
ご隠居に怒られながらも団子を頬張り体力つけて
今日も来ました今日も来た
崖っぷちでにゃあと鳴く
猫を愛でるあの人を
今日も待ちます今日も待つ
そしてきみが何食わぬ顔で現れたら
いつも静かに笑ってる
そういうものに
私はなりたい