詩人:りんくす | [投票][編集] |
さて
泉の精が斧を届けてから
まるでふりだしに戻ったように
また毎日きこりは斧を投げ入れにやってきていました
そして泉の精が持って上がる度に
─俺の斧はどんなだっけなぁ〜
とはぐらかすきこりに
泉の精もいい加減ムカッとするようになり
誰にでも見せるワンパターンの作り笑顔ができなくなってしまいました
笑ったり泣いたり怒ったり…
親しくなるようでいて
名前すら知らないという一定の距離を保っていた二人でした
あるとき
泉の精が斧を持って現れると
きこりが溜め息をつきながら
─全然わかってねぇな…
と呟いたのがきっかけで
泉の精はキレてしまいました
押し殺していたせつなさがあふれ
自分でもコントロールできなくなり
泉の精は
泉の中に閉じこもってしまいました
次の日から斧は落ちてきません
泉の精は水面を見上げながら溜め息をついて
過ごしました
三日ほどして
堪らなくなって泉から顔を覗かせると
なんと
斧は茂みにほったらかし
切り株に腰をおろし
考えごとをしているきこりを見つけました
─やばい!
泉の精は慌てて隠れようとしましたが
瞬間、きこりと目が合ってしまいました
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きみが寂しいとき
左耳のすぐ上らへんに
僕がいるから
いつもいるから
片時も離れずいるから
つかまえてね
つかまえたかわからない?
パッとつかんで
きみの服の中に入れて
パタッと閉じて?
じんわり温かくなるから
大丈夫
火傷なんてしないから
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ここへ来て
きみも一緒に
寝転がろう
緑さやめく
やわらかな海に
浮かぼう
動かないで
雲が止まって
僕たちが動いていると
感じるまで
ありが指先から
登ってくる
てんとう虫が
鼻先に留まる
僕たちが人間だなんて
気付かずに
僕たちが地球の一部と
知ってるかのように
蝶々が耳の横の
たんぽぽに誘われる
ここへ来て
きみも一緒に
緑の波穂に浮かぼう