詩人:niko | [投票][編集] |
砂漠を歩いていた僕はある日
大きな道へ出た
するとそこへ君が歩いてきた
僕は君の前で両腕を広げて
通せんぼをした
君は真っ直ぐに僕を見て
自分の両手にたましいを乗せて
僕に見せてくれた
それはとても美しく輝いていた
それから僕らは肩を並べて歩きながら
たくさんの話をした
僕は砂漠の中で見てきたものの話を
君はこの道で出会ったもののことを
僕らは一度も立ち止まらずに歩き続けた
太陽も月も僕たちを追い掛けたけど
いつも追い付けなかった
悔しがった太陽は月と相談して
僕らを離れ離れにしようとした
君には太陽が夢を見せ
僕には月が夢を見せた
気付くと僕は夜に向かって歩き
君は真昼に向けて歩いていた
そんな風にして僕らは
いつかとても遠くなってしまった
だけど僕は月の光の中でいつだって
君の夢を見る
太陽の光の中で
僕の夢を見る君の
夢を見ている
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ガラスの向こうで3匹の猫が足を止めた
僕はショーウィンドウの中から
ガラスの厚さを目で計っていた
1匹の猫が言った
「このガラス何センチだと思う?」
別の猫が言った
「分かるわけないだろ」
もう1匹が言った
「ガラスなんてどこにあるのさ」
そして3匹の猫は急に興味を失ったように
スタスタと歩き去っていった
僕はガラスに両手を当てて
その温度を感じてみた
ガラスはとても冷たかった
今度は目を閉じて額を押しつけてみた
やはりガラスはヒンヤリとしていた
ゆっくり目を開くと
ガラスの向こうにさっきの猫が
1匹だけいた
僕が猫の瞳をじっと見つめると
猫はクスクスと笑い出し
ガラスの方へ真っ直ぐに歩いてきた
そしてガラスを通り抜け僕の足元に座った
僕は驚いて猫に尋ねた
「どうやってこちらに来たんだい?」
猫は飽きれたように首を振りながら
またスタスタとガラスの向こうへと
消えていった
それから何年もたった今も
僕はまだこのガラスを
通り抜けられずにいる
変わったことといえば
その厚さを計ることを止めただけだ
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ラジオにまばたきを合わせて
ちょっぴり憂鬱だった今日を綴じる
あしたは誰と話すかな
冷たいお茶を飲んで
タオルケットに潜り込む
ひとりはいつまで続くかな
たくさんの想いに見守られて
僕はとても幸せなはずだろう
憂鬱なんて誰にも来るのさ
でもそれは関係ないこと
誰もが憂鬱になっちゃうんだから
甘い声で歌ってる
ラジオに呼吸を合わせて
思える限り遠くから僕らを
見つめてみたけど
どんなに小さく見えたって
見えないくらい離れたって
僕は僕の重さで
誰かは誰かの重さなんだ
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きみが行きたい国に
僕がなれたら
どんな服着て
きみを待とうか
きみが読みたい本に
僕がなれたら
はじめになんて
話し掛けようか
きみが踊りたい曲に
僕がなれたら
何小節目で
転調しようか
きみがつけたい香りに
僕がなれたら
どうゆう名前で
誘おうか
きみが焦がれる愛に
僕がなれたら
何からきみに
差し出そうか
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ひゅーん ひゅーん
と頭の上を
黒い鳥が飛んでゆく
あの鳥の名前さえ
僕は知らない
黒い鳥なら
カラスくらい
他には一つも
思い浮かばない
黒い鳥は
僕を何だと
思うだろう
大きなアリだと
思うだろうか
何十年も生きてきて
自分の正体さえ
僕は知らない
真っ黒なその鳥は
気持ちよさそうに
ひゅーん ひゅーん
と飛んでゆく
見ている僕に
気付くだろうか
無恥な僕を
許すだろうか
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脆いことはよく知ってる
そんな全てで君は生きてる
泣きながら笑い転げたり
捨てながら欲しがったり
全てで君はここにいて
たまに僕を責めるんだ
ビーズのブレスを見つめたり
シルバーのクロスに願ったり
それでも何かが足りないんだ
大事なものは何なのと
僕に聞いても上の空
知りたいのは自分のことだろ
明日も昨日も関係ないのさ
仕様がないから付き合うよ
逸れた君を探しに行こう
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太陽と月なら
どちらが好きですか
砂浜と山道なら
どちらを歩きますか
退屈と忙殺なら
どちらを過ごしますか
哀しみと虚しさなら
どちらが辛いですか
臆病と後悔なら
どちらと戦いますか
無関心と身勝手なら
どちらを許せますか
誓いと約束なら
どちらを信じますか
あなたを創る
無限の中で
魂は何を
望んでいますか
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僕らは
月を見上げる
僕らは
月を見つめる
僕らは
月に惹かれる
だけど少し
その月は明るすぎる
だけど少し
その月は綺麗すぎる
涸れた海も
歪んだ丘も
ここからは
見えない
それでも僕らは
月を見つめる
それは
きっと
君に恋することと
少し似ている
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むずかしいことは
むすかしいままにしとこ
どうしたってきょうは
どこにもいかない
たいようのあるとこで
きぶんがかわるくらいなんだから
かなしいことは
かなしいままにしとこ
そうゆうかんじっていったって
どうゆうかんじかはんぶんも
つたわんないくらいなんだから
しんぽしたっていったって
なんにもかわっちゃいないのさ
もじにもおとにもならないことだけが
ゆいいつほんとにつたわってるんだ
おかしなことは
おかしなままにしとこ
ただでさえきょうも
ほしはいそがしそうだ
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恋によく似た
ときめきだけじゃ
ほんとの人は
探せない
風によく似た
囁きだけじゃ
ほんとの人に
届かない
その手に触れても
心は
もどかしさ
満ちてしまう
呼吸を止めても
この僕は
茜になってしまう