詩人:niko | [投票][編集] |
ラジオにまばたきを合わせて
ちょっぴり憂鬱だった今日を綴じる
あしたは誰と話すかな
冷たいお茶を飲んで
タオルケットに潜り込む
ひとりはいつまで続くかな
たくさんの想いに見守られて
僕はとても幸せなはずだろう
憂鬱なんて誰にも来るのさ
でもそれは関係ないこと
誰もが憂鬱になっちゃうんだから
甘い声で歌ってる
ラジオに呼吸を合わせて
思える限り遠くから僕らを
見つめてみたけど
どんなに小さく見えたって
見えないくらい離れたって
僕は僕の重さで
誰かは誰かの重さなんだ
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ガラスの向こうで3匹の猫が足を止めた
僕はショーウィンドウの中から
ガラスの厚さを目で計っていた
1匹の猫が言った
「このガラス何センチだと思う?」
別の猫が言った
「分かるわけないだろ」
もう1匹が言った
「ガラスなんてどこにあるのさ」
そして3匹の猫は急に興味を失ったように
スタスタと歩き去っていった
僕はガラスに両手を当てて
その温度を感じてみた
ガラスはとても冷たかった
今度は目を閉じて額を押しつけてみた
やはりガラスはヒンヤリとしていた
ゆっくり目を開くと
ガラスの向こうにさっきの猫が
1匹だけいた
僕が猫の瞳をじっと見つめると
猫はクスクスと笑い出し
ガラスの方へ真っ直ぐに歩いてきた
そしてガラスを通り抜け僕の足元に座った
僕は驚いて猫に尋ねた
「どうやってこちらに来たんだい?」
猫は飽きれたように首を振りながら
またスタスタとガラスの向こうへと
消えていった
それから何年もたった今も
僕はまだこのガラスを
通り抜けられずにいる
変わったことといえば
その厚さを計ることを止めただけだ
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砂漠を歩いていた僕はある日
大きな道へ出た
するとそこへ君が歩いてきた
僕は君の前で両腕を広げて
通せんぼをした
君は真っ直ぐに僕を見て
自分の両手にたましいを乗せて
僕に見せてくれた
それはとても美しく輝いていた
それから僕らは肩を並べて歩きながら
たくさんの話をした
僕は砂漠の中で見てきたものの話を
君はこの道で出会ったもののことを
僕らは一度も立ち止まらずに歩き続けた
太陽も月も僕たちを追い掛けたけど
いつも追い付けなかった
悔しがった太陽は月と相談して
僕らを離れ離れにしようとした
君には太陽が夢を見せ
僕には月が夢を見せた
気付くと僕は夜に向かって歩き
君は真昼に向けて歩いていた
そんな風にして僕らは
いつかとても遠くなってしまった
だけど僕は月の光の中でいつだって
君の夢を見る
太陽の光の中で
僕の夢を見る君の
夢を見ている