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老女と口紅。の部屋


[81] 黄砂
詩人:老女と口紅。 [投票][編集]

-黄砂-

ステージはここ、二十回建てのマンション群。開け放つリビングに一室を射抜く西の日差し。ふと言い知れぬ気配に耳を傾けると徐々に見えてきたものは、うやむやの内に忍びよる生温かい風と黄砂。その動きに音は無く、沼にとぷりと浸かるかの様に不快な大気が僕の体を取り巻いていた。瞬時に沸き上がる恐れと不安。無意識のうちに一路ベランダへと駆け上がる。見渡たす先の町は砂塵の闇へと消え去りて、その脅威は先程まで公園で遊ぶ子らをも容赦なく飲み込んでいた。同時に狭所感は激しい動悸を呼び覚まし、両足を棒の如くすくませる。この状況下で脳裏に引き戻された過去は、遠く悲しい記憶に激しくリンクした。それは窮地より逃れる為に、押し入れの布団に隠れた幼年期。そしてこの心は孤独感に不随する果てしのない不安へと転落するだけだった。不安定な呼吸と共に、砂を噛む感覚と消えた下半身。幻覚にも似た現実は対処を誤れば自らの精神破壊は免れず、やがては心体に怪しい妖精が住み着く事となる。ゆっくりとゆっくりと部屋に戻るが安定との境界線は手探りに委ねられ避難へと向かう視覚は狭く両足はすり足となり、テーブルを目指すも途中にあるタンスの角は硬く、ぶつけた足の小指がペチッと鳴くのが聞こえた。と同時に光速で駆け上がる痛みは腰を砕きながらも、この不愉快な事態は笑える涙一つで完結を迎える事となる。

ハハハ
痛てててテテ‥と

2009/02/03 (Tue)

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