詩人:謳器 | [投票][編集] |
あの頃は
きっかけを求めていただけだったのかもしれない
でも
それをくれたあなたには
本当の私を伝えておきたかった
高すぎて音もなく飛ぶ
鳥みたいな飛行機が
私の心象風景
何も遮るもののない場所で
一人でずっと誰かを待ってたよ
真夜中の静寂が感情を増幅させるから
解らなかった事が解ったような気がしたんだ
遠くで花火が打ち上げられて
それが始まりを報せる銃声に似てたんだ
何を知りたかったんだろう
無知を恐れる子供みたいに貪欲に
それを知れば世界が変わるって思ってたのか
どこまで知れば満足だったんだろう
それと引き換えに失うものがあるというのに
そう
この世界では躊躇してると気付けば闇
でも
何処に行けばいいんだろう
わかってるよ
止まってることに罪悪感なんて持たなくていいって
わかってるんだよ
でも
これから何かが始まろうとしてる予感がするの
一緒に行きたいよ
今なら何処にだって行けそうな気がするのに
一緒に生きたいよ
ずっと同じ道を歩いていけると思ってたのに
小さな灯が見えてきて
目が眩む
暗闇に慣れすぎてたんだね
そろそろ日常に戻らなきゃ
きっとそこには何かが待ってるはず
あの日みたいな奇跡のような何か
ねぇ
聞こえる?
さっき耳元で
銃声が聞こえたんだ
背中を押すように
銃声が聞こえたんだ
あなたがきっかけをくれたあの日のような
きっとまた終わる
それでもまた始まる
そんな始まりを報せる
銃声が聞こえたんだ
あなたが側にいないのに
あの日と同じように
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旅の始まりは
貴方を失った日
貴方を
もう一度手に入れるための
長い旅
でもその道のりはあまりにも遠過ぎたから
今はもう
貴方を再び取り戻したかったのか
貴方から逃げたかったのかさえわからない
きっと
目的地を見失った時から
この旅は
逃避行になっていた
それは
愛しすぎた貴方から
私を守る為の逃避行
そして
終着のない
逃避行
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雨の匂いが
遠い記憶を呼び覚ます
あの頃好きだった曲を聞き返してみたりして
「きっと君は 君以外 愛せない」
そんな詞に動揺する今
別れを知らなかったあの頃の自分を悲しく想う
ああ、この雨はきっと
あの日に降っていた雨なのだ
だからこの雨音は
こんなにも暖かい
こんなにも
私に優しい
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夜明け前に部屋を飛び出し
狂ったように彷徨い歩いた
大声で叫びたいのに
声はかすれて 言葉にならない
走り出したいのに
足がもつれて しゃがみこんだ
滑稽なのは
かすれた声でも もつれた足でもなく
今この瞬間の私の顔
何の表情もない
今この瞬間の空虚な私の表情
何を叫びたかったんだろう
何処に行きたかったんだろう
どうして失くしてしまったんだろう
呆然と立ちすくんで
見上げた空には
取り残された 最後の星
弱々しい光を瞬かせ
燃え尽きそうな 最後の星
そして
そのとき溢れ出した涙が
私の最後の星
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風のない真夜中に
煙草から真っ直ぐに立ち上ぼる煙
微かな頭痛
あの頃
痛いくらい手をにぎりしめ願った想いすら
消えていきそうなこんな夜
涙すら流れないこんな夜には
大事な何かを思い出すために
シガレット・ケースから
煙草をもう一本
あの日の自分に笑われないように
あの日にぎりしめたこの手を緩めないようにと
もう一度強く手をにぎりしめ
涙の代わりにもう一本
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あなたがあんまり優しいから
あたしは意地悪になってしまう
それでも
あなたは笑っているから
あたしはワガママになってしまう
それでも
あなたはそれをワガママとも思わないから
あたしを残酷な気分にさせる
そんなあたしだって
気持ちよく晴れた日や
一日にさよならを告げる夕方には
あなたに特別優しくしてあげようって思うのよ
優しい笑顔で
あなたを受け止めようって思うのよ
だけど気付いたら
やっぱりあなたが優しい笑顔で
あたしの全てを受け入れてくれているの
かわいいね
儚いね
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この場所で
ずっと足踏みを続けているのは何故だろう
この場所に
ずっと固執し続けているのは何故だろう
時々そんな疑問が頭をかすめて
何もかも切り離してしまいたい気がするけれど
何もかもうまくいくような気がするけれど
自由になったその手は
氷のように冷たいだろう
そう想って
今この手にあるものの愛しさに気付く
どんなささやかな日々にも存在する小さな幸せ
きっとそこから始まる
そこから始まるべきでしょう?
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恐る恐るその一歩を
踏み出してみる
それは深い谷底を覗き込むような
それは真夏の太陽を直視し続けるような
何かと引き換えに手にすべきもの
先を見たくなくて
夢の中で暮らしていた日々には別れを告げよう
後悔するのなら
このまま今が崩れていくだけなら
何かを捨ててでも
その手には力がある
恐怖と引き換えに
がむしゃらに前だけを見つめていられる
必死な、子供じみた
それでも確実な
魔法のような力
誰もが持っている
それは生命に直結した
原始的な力
疑ってる?
信じてくれた?
そんなんじゃない
理屈じゃない
そんな感情どうでもいい
ただあふれ出る
押さえきれない
そんな当たり前の
誰もが持っている原始的な力
ここに生まれたということ
ここで生きて行くということ
そのままでいいの?
本当は解ってるんだよね?
見えないけれど存在している
真昼の月のような
そんな力。
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君の居ない朝は
隣にもう一つ
君のカップを置いておくから
君の居ない午後は
隣にもう一冊
君の読みかけの本を置いておくから
君の居ない夜は
隣にもう一人分
君の場所を空けておくから
いつだって君の場所を
作っておくから
いつだって君の事を
考えているから
いつだって君を
包んでいてあげられるから
近くに居ても
遠くに居ても
いつだって君の場所を
一番近くに作っておくから
僕の隣が君の場所
君の隣が僕の場所
今日もまた
君がこの扉をノックする
そしたらいつでも
最上級の笑顔で出迎えるから
安心してここに来て
そしてその暖かい微笑で
この部屋を満たして
あぁ、
なんて素敵な毎日だろう
なんて幸せな毎日だろう
今日は涼しくて過ごしやすいね
さぁ、何をしましょうか?