詩人:謳器 | [投票][編集] |
目を閉じると思い出す
子供時代の何気ない日々
雨の日の湿った匂い
夏でも冷たい台所の床
温かいストーブと曇った窓
夕飯の支度をする音と湯気
階下から聞こえる笑い声
いつまでもこのままだと思ってたそんな毎日
みんなここでずっと一緒だと思ってた当然の毎日
ありふれた風景
ただそこにいた家族
旅立ちのような静かな別れ
もう戻る事ないあの日々は
記憶の中で暖かく優しく切ない
もう一度作れるだろうか
こんな風景を
こんな家族を
こんな別れを
生活とは
二度と戻らない毎日を生きるという事
かけがえのない日々を知るという事
詩人:謳器 | [投票][編集] |
雄鶏の叫び声とともに
その夜は明けたけど
夜明けまで降り続けた雨は
哀しい記憶を冷たくその身に刻んだようだ
あの日の雨は止んだものと思っていたのに
今も心の隙間に
降り続けていたんだね
「大丈夫、大丈夫…」と
何度も何度も繰り返し耳元で
囁くけれど
「大丈夫、大丈夫…」と
どうすればいいのかわからないまま
抱きしめるけれど
夢から覚めて泣きやまない幼子のように
何を恐れているのかすらわからない
それでも
君を抱きしめたこの腕なら
その哀しみも抱きしめられるから
今は無力なこの手を離さないで
今は一緒にこの雨を眺めていよう
ずっと傍にいてあげる
この争いと憎しみの交差する世界で二人
願いを掲げよう
君にはその権利があるだろう?
どうかいつの日か
優しい雨が君の上に
優しい雨が君の心に
祝福のように降り注ぎますようにと
詩人:謳器 | [投票][編集] |
「君の存在が僕の支えなんだ
僕が君の支えになってあげようと思っていたのに」
あなたが弱さも隠さず
そんなこと言って苦笑いを見せるから
また愚かにも望んでしまう
この世界に絶対なんて無いと
思っていたのに
ほらもう
あなたを必要としている
あなたを失う事だけがひたすら怖い
弱くて、孤独で
頑ななこの心
壊れてしまいそうな
この心
だから
精一杯の勇気であなたに返した言葉は
こんなに単純
「ずっと一緒にいてほしい。」
詩人:謳器 | [投票][編集] |
心を奪ったこの世界に
もはや何も求めるものはないと
遠のいた何かを見つめる君の眼差しは強く美しかった
そして
再び心を得た君は弱くなっってしまったけれど
その微笑みは何よりもはかなく、きれい
そう、退屈なこの世界に真実は積もり続ける
そう、この音も無く降り積もる灰のような真実こそが君の真実
詩人:謳器 | [投票][編集] |
そんなふうに他愛もない話をしながら
君がほんとは何を伝えたいのか
気付いてない訳じゃないけれど
今日は何も言わずに
傍で聞いてるだけでいいかな
ねぇ…
ほんとの気持ちを
見せるのが怖いから
そうやって何気ない言葉を連ねてるんでしょう
君の大切な想いを
他の誰にも拒絶されたくはないから
そうやって独り言を呟いてるんでしょう
そこではずっと雨が降っていたんだね
明日からは晴れるといいのにね
あぁ
何もかもを受け入れる力が欲しい
君の全てを
包み込めるような
さぁ、もう家に帰ろう
そして一緒に眠ろうよ
明日のために
明日からのために
これからも歩いて行けるように
ずっと一緒に歩いて行けるように