使い古した空気が懐かしい

好きな匂いがまだ残ってる

月がスイカみたいに

ウサギが笑って無重力を飛ぶ

カエルが歌う夏が来たって

おたまじゃくしのスイング

生まれ変わるために

ゼリーの中何を見てたの

月がライトみたいに暖かくて

メガネが曇る

でもこの視界は濁らない

右手に誰の手

一緒に宇宙遊泳

あの星まで息をしないで

真っ暗ゼリー何を見よう

ウサギが笑って

カエルが歌う

会いに来たって

愛を伝って

人が滅んだそのとき

人類絶滅記念日は誰が祝うの？

僕の気持ちなんて考えないで

また馬鹿なことを言う

少し頭に来るようなことを言う

でもそれでいいんだ

同じ空と仲間で

何にも変わらないまま

僕はそれがいいんだ

ため息だって

大切な一瞬だって分かったんだよ

脇役がいないと

物語りは進まない

あの宇宙のあの星の裏

僕と同じように誰かを想う誰かがいる

二本足で立ち上がって

上手に泳げなくなった人間は

あの涙の味も忘れてしまった？

青くて深くて

包み込まれるようなそこは

いつか誰もが還る場所

僕はいつか魚になるんだ

きっとただいまって

涙の味を思い出すよ

みんなが生まれた場所を

誰より上手に泳いでみせるよ

どうか時間よ止まっておくれ

今のままでいさせて

この位置から動きたくないんだ

後にも先にも行けるけど

それは何だか怖いんだ

ここの空気はおいしくて

ずっと浸っていたいんだ

今のこの手が一番きれい

そんなわがままを

あと少しだけ

この溢れるイメージに

完璧な色と形を

この左手に

自由自在の魔法のペンを

いつか立つ舞台に

熱い熱いスポットライトを

はっきりと映る

虹の影を

やがて来るその真際に

シワだらけの瞼の奥で

これまでのことを

読み返すんだ

思い出せなかったこと

気付けなかったこと

自分が主人公でいられた

唯一の物語を

取るに足らない日々のことを