詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
失って
失って
そしてまた
失っていく
「流れ星のようになれたらいいのに」
「感傷に浸っている」
とか、この
粗野な話しかけられ方が
より良い燃料になる
ちりちり ちりちり
燃え焦がされていく
爆発的な噴射力の
燃え吹き出していく
推進力の反対方角に
まとわりつくような
誰かへの想いがある
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君の肌触りは
言葉を知るまえから
発声の為に
書き終えられた楽譜を
嗅いだように
入ってくる
引き裂かれたから、なんだ
しまいたいから、そうなった
もう、どうにもならないほどに
そうなる
してしまった事だげが
足元にある
ん
君の肌触りは
泣きたくても泣けない
ただ、ただ
喉の奥底に深く、深く沈む
痛みが
見えたように
はっきりとある
欲情だけで
ふつふつと満たされ
まさぐられ
かたちになる
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カラスが鳴いている
どうしてだか
カラスが鳴いている
鳴くからには
訳があるだろうに
伝えたいことでも
あるだろうに
どうでもよいように
カラスがどこかで鳴いている
何もそれに
とらわれやしなくとも
よいはずなのに
カラスがどこかで
鳴いているよ
どうにもなれずに
鳴いている
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毎週、週末土曜日には
釣りに行く
週休2日制になったのは
ようやく5年前
幸せな事だ
子供達も
もうすぐに社会人
ここまで来た
この身体と心の奥底には
いらぬ細かな傷痕が
たんまりと
折り重なっている
餌の活き餌に
イソメと言うのがあって
ミミズの柔らかさに
ムカデみたいな足
口にも牙があって
これを掴んで口から釣り針を
差し込むのだが
これがとにかく苦手だ
筆舌に尽くしがたい
気持ちわるさがある
それでもキスが釣れると
えもいわれぬ喜びがあふれる
今晩は天ぷらかな
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何もしていないと
やりたいようにやれて
良いのだろうが
ただ
誰か、誰かの事を考えてしまう時
何か、壊れそうになる
釣りをする
釣りの何がいいのか
釣りを
誰にもこうあるべきだとは
言いたくもない
魚からしても
こうしろとは
言いたくもないだろう
今日の釣果は蟹一匹
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巷で
不味いと聞いていた魚を確かめる為に
釣れてすぐに脳天を貫いてしめた
風は北風
この俺を忌々しく思うような
ただ、ただひたすらに強い
向かい風
冷たいナイフで
手のひらを切らないように
慎重に腹を切り裂く
磯臭く青白い、ドロリと不快で不味そうな腹わたが
その顔をあらわにする
まだもがく魚を
しっかりと押さえて
血だるまの頭の方へ
指先を突っ込み
エラを引きちぎると
荒波に放り捨てた
ところどころ
鱗の張り付く
魚臭い手のひらで
クーラーボックスに獲物を放り込むと
バケツの海水で手を洗い流し
タオルで拭う
不味いと言われている魚は
大概に釣れてからの処理が悪い
血抜きや内臓を捨てるのが遅いからだ
持ち帰っても
家族にまで歓迎されない食材を
まな板に置いて三枚におろす
確かめられるのが
釣り人だけの至福で、いい
小皿の醤油に刺身を浸すと
脂がサッとひろがった
山葵以外に
何がいるだろう
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あさはかな
願い事なのだが
いつか
いつかたんまりと
サヨリが釣れたなら
あいつんちの
玄関のドアノブにでも
買い物袋に氷と一緒に
それを入れて
ぶら下げて
何食わぬ顔して
帰れたらいい
そうして帰ったなら
サヨリの刺し身にビールで
一杯やりたい