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遥 カズナの部屋  〜 新着順表示 〜


[212] 10年
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

天気予報じゃ
午前中までどしゃ降りの雨の筈だった

「向こう側の交差点からここの前を通りが出来上がりますし
小学校迄なら歩いて10分程です…。」

不動産屋の話しを聞かされた
中古マンションの四階の窓辺から見えるのは
数台のパワーショベルが
町並みの所々を虫食のように住宅の取り壊しをすすめている様子だった
すぐにでも道路ができあがりそうな物言いだったのに
もうあれから随分たっていた

朝日の中
雨上がりの水溜まりから
犬が水を舐めているのだが
よく見ると首輪に鎖をひきずっていて
その端にまた首輪があって
ボロボロの犬の頭らしきものが繋がれ
時折、臭いを嗅ぐようにしながら亡骸を舐めたりしていた

亜熱帯地方特有の気候の気紛れさに
気象台は予報なんて宿題に
鉛筆の先が折れるような心持ちで
キーボードのキーを打ち込んでいるのかもしれない

乾き始めた
コンクリートの瓦礫へ向け
あたりに粉塵が振り撒かれないように絶えずホースで水をまく作業員

ズルズルと犬の首を引き摺りながら
あの犬はどこへ行ってしまったのだろう

なにも分からぬまま














10y

2016/04/17 (Sun)

[211] めんどくさい話し
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心のつまらない人に会う
知らない事を知っているように話す
上面の話しばかりで
へきえきする

この間
庭のはしっこで蛇を見つけた
茂みに逃げ込む前に捕まえてやったら
噛まれてさ
病院まで行って
痛いやら、めんどくさいやら
とにかく大変だった
そうして昨日
蛇の逃げ込もうとしていたあたりの茂みを刈ってたら
そこにあった蜂の巣に気がつかないで
蜂にも刺されてしまって
また、痛いやら、病院やら、めんどくさいやらで
難儀な一日だった
でもまあ
蛇を捕まえようともう少し蜂の巣の方へ近づいていたなら
同じ日に蛇に噛まれるは、蜂に刺されるはで
なおさら厄介な事になっていたかもしれないと思うと笑ってしまう
こんな話しの方がよっぽど面白いと
俺は思う

2016/02/13 (Sat)

[210] 新たに青臭く
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もうここへは戻れない
嘘をついた事が多すぎて
とりかえしのつかない


あてもない
ありきたりな


何にも
例えられたく無い
唯一ふりほどけて
誰もいない
朝もやの
砂浜で
ぼんやりと
座っていたい

何にも例えられず
何にもおびえず
ただ家族と友達と
仕事と女の事を
毎日、毎日
来る日も来る日も
考える

2016/01/17 (Sun)

[209] 入浴
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夜の浴室には
バスタブがあり
チャプチャプと水の中にある
なにもないような
いけないような
哀しみが
目を細めさせたがる

誰も知らない近さや遠さは
栓を抜いてさえしまえば
とりかえしのつかない
繰り返しへと吸い込まれ
もう指先を差し入れても
間に合いはしない

湿った手の甲で
唇を拭くように撫で
暗闇で呼吸を繰り返すだけだ

2015/12/30 (Wed)

[208] いつのまにか
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ほろほろと、途切れておくれ
何事も
私の馬鹿馬鹿しい弱さに
絡めとられる事なく
やすやすと

2015/11/29 (Sun)

[207] かろやか
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今日は仕事が休み
昼間からビールを買いに
近くのスーパーに歩いて行く
帰りがけに
住宅街に小さくたたずむ公園に
私の子供たちが
ボール蹴りをして遊んでいる姿が見えた
これでいいと
思った。

2015/11/23 (Mon)

[206] やりたい事
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本当にやりたい事がある
なんて幸せだろう
やりたくて、やりたくて、たまらない
やりたい事があるのだから

あの水平線の向こう側から
すべてを明らかにせずにはおけない
日射しが
物事の良し悪しをさらけ出しに
やってくる

さあ、見てくれ
なにもかも僕はやってきた
やりたい事をやってきた
どこへだしても
恥ずかしくないつもりだ
あとは
誰が勝手に思うがままでも

やりたいことをやる



2015/12/29 (Tue)

[205] とおり
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いろんな人が通りすがるこの通りで
夫婦で弁当屋をやっていけるのは幸せな事だ
そう信じている
そんな目をした店主から
お釣と弁当を受けとる
「すみません、そばも貰えますか」
「はい」
沖縄の弁当屋には、たいがいどこの店にも沖縄そばがおいてある
左手で受け取ったポリスチレンのどんぶりを片手に
右手で前歯へくわえさせた割り箸をそのまま二つに裂く
とっさの爆音に見上げると
朝の訓練なのか
F15が上空の雲の隙間に見え隠れしながら海へ向かって旋回していく
コックピットから見える
パイロットのゴーグルには海に浮かんだ島の様子が
流れ去っているのだろうか

58号線の中央分離帯に立ち並ぶヤシの木々と
それを挟んで、押し合うように密集した街並みに対面する
フェンスの向こう側に広がる芝生をたたえ優雅に立ち並ぶ住宅地
親父が米軍の雇用員だったからなのか
不愉快だと思った事はないし
それどころか、この光景を愛しく思いもする

いつか
訓練場への移送途中だったのか
信号待ちでたくさんの兵士達を乗せた軍用トラックの後ろに着けた乗用車の私と
一瞬、目を合うわせた青年兵の
蔑むような鋭い眼光も思いだされた
「中国人も来ますか」
「はい、近くにホテルがありますから」
富裕層と呼ばれる人達が
不動産を物色しているという噂もある

中学生の頃
学校の近くに、中国人らしい家族が営む弁当屋があった
ぐれた同級生が売り物を万引きしようとしたところを
店主の息子と、とっつかみ合いになり
それがもとで停学処分となった
しばらくして
受験勉強で放課後に隣り合わせた時に
店の息子は強かったと
話してくれた

麺もスープも残らずたいらげ
満足してゴミ箱へ器を放り捨て
「ごちそうさま」
「ありがとうございました」
そばは麺類だから
起源はきっと、中国あたりにあるのだろう
本当に美味しいと思う

弁当を助手席に置き
エンジンキーを回す
射し込みはじめた朝日に
ダッシュボードからサングラスを取り出して掛ける
弁当屋の前には
中国人らしいグループが店先に詰めかけている
F15は
滑走路へ着陸姿勢に入った
それら、サングラスに映る景色のその下で
まえを見ている





2015/07/06 (Mon)

[204] 
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

どこまでも
どこへでもいく

命は海原をさすらう
船のよう

心は真っ白な帆
時は真っ青な風


2015/04/11 (Sat)

[203] 快晴
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葉っぱを
ゆっくりと
二つにさく

別れは
じかに
じっくりと
みつめたものだけに
新鮮なありていを
さらけだしてくれる

そとは晴れ

2015/04/02 (Thu)
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