| 詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
月夜の海のなみま
とおく
いくども、いくども
海上へジャンプする
イルカのすがたを
窓際へよりそいながら
眺めていた
着水するたびに
波しぶきは
あたりへと濡れかかり
景色に充満してゆく碧さに
過ぎさりつつある雲達ですら
その足どりを鈍らせているようで
悲しいとも 楽しいとも
とれる そのなきごえは
呼吸をゆるされた瞬間
海原を背に、響きわたり
暗黒の深海と大気との狭間を突き破って
わたしの意識のみなもすらも往来しながら
なにを こらすまもなく
海底へと消えうせていった
それは
生きる理由を
むげにさげすむとか
嘆くとかとは無縁に
命をわがままに満喫したいがゆえの、健やかさに溢れ
しだいに部屋にまで 充満してゆく碧さに
イルカとつれだったわたしにとって
呼吸をする必要すらついに
なくしてしまっていた
、
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外は寒く
この心に沸き立つすね事とあいまって
どこもかしこも
つねられて
笑ったみたいに見えているのなら
皮肉みたいで馬鹿みたいさ
人には安売りらしい
柔らかい切れ端に
肩までぬくまり
恥ずかしい言葉を説き伏せながら
正しく
意味も恥も届かない
風だけが行き交う
無意味を許された場所で
君を想う
、
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勤労と納税の義務を果たし確固たる大人として
社会人であるべく自覚を負い
純然たる充実に満ち
紛れもない現実に裏打ちされ
敢然と立とう
大自然の摂理に則り
ほんのミミズですらも己が勤めを侮りはしない
大地を肥やして黙々として生き
草木へ恵んだ恩恵の見返りに
枯れ葉をまた得て生き長らえて行く
ならば なおさら
この傲りがちな人の形に閉じ込められた意識として
その日の行き着く限り謙遜を貫き
弛むことの無い無限の生命の循環の意義を悟り
己が役割を律しよう
私は
当たり前の事をしっかりとこの筆圧に力を込めて書き記す
「大人たれ」と
起源を辿れば
我らが先祖は農耕民族で
自然との調和を重んじ
この地球のアジアにあって狩猟民族であった欧米列強に仇なした誇り高い民族であった
資源も領土も乏しく
文明すら遅れをとっていた筈が
我らの祖父も曾祖父の親も絶えず労を惜しまず苦境に耐え
劣勢の内に幾度かの大戦を凌ぎ
ついに近代には技巧に活路を見いだし
よしんば最先端の計器ですらも計測不能な領域で未来を体現してきた
それらは
断じて個々の己のみの為ではなかった
そうでなかったなら
私達が踏みしめる居場所はこの地上には既に無かったであろう
彼らが愛おしみぬいた
この大地にかけて
断じて我らもたじろぐべきでは無い
郷土を誇り
信じた側に断固として立ち
こうして又
人の命と威厳と尊厳をあざ笑う者の前に立ちはだかろう
私達は世界に無類の歯車である
、
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数百万円はくだらない
その代物が寵愛するに値するか 侮蔑こそふさわしいのかは 既にそれが存在する事 それ自体が物語っている
男が女の形に恋焦がれ
老いる事を知らない
永遠に恍惚とさせる様を凝固させんと欲するのは必然に他ならない
メトロノームがゆっくりと静かにリズムを刻む
揺れる針を止めては離し 離しては揺らす
つきまとう渇きから逃れた向こう側の実体へ妄想し むしゃぶりつき
支配し 支配される
見える訳も無い義眼をねじ込む他に無い性
シリコン製のさらさらとべたつく事の無い乳房が男の価値観を酔わせる
芸術に近い完璧なラインにじっくりと生唾を飲み込み ピアノの鍵盤を撫でるようにレジン製の爪に舌先を這わす
艶やかな快感は白ワインの旋律で滴り落ち 規則的なリズムをずれさせ始める
こんなめぐり逢いは
孤独を癒せないまま
妬みを玩味させ続け
幸せの意味を疑われたまま狂喜させられ 狂喜させた
グランドピアノの上に横たわった
漆黒の水面に映る双子の星座の美しさのほとり
メトロノームは今
止まっている
、
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道端で 私はどうやら私自身らしい後ろ姿をした人物の背中を十数歩程離れた距離から眺めていた
どうやらと言うのは 後ろ姿ではあっても何せ自分であるし
確かめに歩み寄ろうとしてみても全く同じ歩幅 スピード 方角へ息を合わせたように遠退き 立ち止まりその距離感は微動だに変わらず しかも
そんな何かを感じ取ったかのように 前にいるその私がこちらを振り返ってみようとしてみても その振り返る背後でこの私の位置はその視野の反対方向である彼の死角へとねじ曲がり まるで お互いを隔てた空間が ちょうどストローの蛇腹みたに屈曲して
どうあっても前にいる私であろう人物はその後頭部を私の方へ向ける他に無く
もう背後の気配の正体を確かめる事なんて諦めてしまったようで 今更ながら私は その自身の後ろ姿を まじましと眺めている他になかった
らちがあかず 自然と嘆息とともに足下に目をやると雨が残していったであろう水溜まりに 鏡うつしに逆さま映る筈の自分が 丁度二階の窓から見下ろしたように 水溜まりの底の方で足下を覗きこむようにして立っている姿が見えた…
家へ戻り
それらの事を机に向かい書きまとめようとすると
たもとに置いたコヒーカップの水面に私のメガネが文章を映していたので そのままコレを書き写し
こうして楽々と生きたままここへ 私は閉じ込められている
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太陽を仰ぎ透した
たおやかな花びらにも似た手のひらが
命の毛細を赤く燃やし
宇宙にさえ充満しようと昇華しているのか
堪らぬように迎えに訪れた日射しは溢れるように降り注ぎ
色鮮やかな光のスペクトルの調合をありとあらゆる景色へ与え
その手を連れた無邪気さは
喧騒の残骸を散らばせながら羽ばたいてゆく
それは空の青さを掴もうとして
雲の白さに触れようとして
森の緑を撫でようして
川の流れを掬おうとして
海の深さを探ろうとして
大地の固さを打とうとして
十分にいっぱいに遊び
木々の木陰に膝を抱え
風の爽やかさに頬杖すると
草の柔らかさに腕枕して
うつぶせながら寝息をたてた
蝉時雨はいつしか止み
夕闇が暮れる頃には
光る度に弾け弾ける度に歌う打ち上げ花火と歓声の余韻は
海を渡る彗星と弧を描き水平線の彼方へと去って行く
後に残る漆黒の闇を見下ろすものは
ただ満天の星空だけとなる
幼い頃から
その手のひらが触れてきた
まばゆいばかりの生きてきたという感触は
確かに胸の奥深くにゆっくりと沈み
いつか言葉に出来なくなってしまっても支えとなって
あたりまえに安らかな不平や不満なんかを振りかざしみても
どこかで優しく君をいさめて
正しい道を頑なに指し示す事だろう
永遠に
新たに繋ぐ手を求めて
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成功への期待があって
俺は前へと歩んでいる訳では無い
ただただ
このままでいる事に耐えられないのだ
うだうだ塗れになって今に埋もれてしまうくらいなら
俺はこの先へ行く
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そうタンスの棚の
まあ一番上か下あたりにしまわれた
一見したところであらためてしまっておく場所さえ覚束ない写真のようなモノであるそれは
残した者にとっては
それ迄の生涯の理由をはらみ
一人では抱えきれなくて
と言うか たまらず溢れて零れ落とした涙そのものなのであるが
それを ふと見やった誰かにとって何の意味も残せない位なら
そのまま知られずにおかれてしまった方が どんなにかましな話しであろう
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雨が降る
じとじととした嫌気で部屋の中にぶら下がる情けなさ達
しわくちゃのありがとうが2LDKのアパートの畳に肩を竦め
あやしてもあやしきれないまま かたづけてもかたづかないまま
散らかった玩具に足の裏を痛め
舌打ちとため息に反射的にすすった鼻水を飲み込んだ
それは
喉を伝わり
胸をもやもやとさせ
しょぼしょぼとした視界
広げられてたち巻く新聞紙面のインクの香りに あぐらをかいた
感謝なんてどこにも載っちゃいないけれど…
ここから
会社迄は25キロある
往復50キロを軽自動車で行き来している
そう シートベルトなのさ大事な事は
いつもいつも 何気なく
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かんからかんはいらないかからのかんからかわないかからかあるのかあるのかいなか
かんでからかたしかめるかからかかんでたしかめるかからかうからかいかんではからなかんかくからかえしからなかいかん
かんとうかんさいかわらぬからならいなかのかんからからのかんからかわないかかんからかんはいらないか