詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
そうタンスの棚の
まあ一番上か下あたりにしまわれた
一見したところであらためてしまっておく場所さえ覚束ない写真のようなモノであるそれは
残した者にとっては
それ迄の生涯の理由をはらみ
一人では抱えきれなくて
と言うか たまらず溢れて零れ落とした涙そのものなのであるが
それを ふと見やった誰かにとって何の意味も残せない位なら
そのまま知られずにおかれてしまった方が どんなにかましな話しであろう
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雨が降る
じとじととした嫌気で部屋の中にぶら下がる情けなさ達
しわくちゃのありがとうが2LDKのアパートの畳に肩を竦め
あやしてもあやしきれないまま かたづけてもかたづかないまま
散らかった玩具に足の裏を痛め
舌打ちとため息に反射的にすすった鼻水を飲み込んだ
それは
喉を伝わり
胸をもやもやとさせ
しょぼしょぼとした視界
広げられてたち巻く新聞紙面のインクの香りに あぐらをかいた
感謝なんてどこにも載っちゃいないけれど…
ここから
会社迄は25キロある
往復50キロを軽自動車で行き来している
そう シートベルトなのさ大事な事は
いつもいつも 何気なく
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かんからかんはいらないかからのかんからかわないかからかあるのかあるのかいなか
かんでからかたしかめるかからかかんでたしかめるかからかうからかいかんではからなかんかくからかえしからなかいかん
かんとうかんさいかわらぬからならいなかのかんからからのかんからかわないかかんからかんはいらないか
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かずなよ
おまえをないがしろに
書くにも値しない
現実逃避の夢見心地か
あるいは崇高そうな権威の詰まった
よそ行きみたいな そんな服はもう 置いてゆこう
かずなよ
私には お前を抱きかかえ海岸のテトラポットの上を足元にひやひやしながらも潮の香りや海鳥達
遠くの船を数えてみたり
隣の釣り人の釣果を気にしてみたりと そんな景色がいとおしく…
帰りぎわすらも おまえが「もっと、もっと」と拗ねた その刻一刻こそが書くに値し
生涯忘れえぬ情景はおまえから溢れ出た
焦がれるに値するシャングリラであった
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こんな しどけない拙さは
ずぶ濡れのまま
折りたたまれて しまわれた傘のようだから
なにかにつけて
軒先の雨宿りみたいな
そこはかとない歌が恋しいのだろう
遠い雷鳴を憂う
こんな自己憐憫の反芻を踏み蹴散らし
湿った子猫が駆けてゆく
振り払らったはずの
幾つかの情景を映す雫は
時の裾を滴り
淀んだ胸を穿つ
思わず空を見上げれば
眩しいだけの雲のかげりが暗い軒の影をかすめ
蒼白の羽が瞼を撫でた
もう既に
この掴み手の湿った感触が血肉そのものに近づいているのなら
寧ろ しっかりと握りしめ深く噛みしめつつ開き
固く強く踏みゆこう
ずぶ濡れの恥ずかしさのそのままに
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金属を美しく磨ぐには
一定の力で均一に等間隔の滑らかな8の字を描くように揺り動かさねばならない
欲は加減を歪ませ
見合わない背伸びは
その表面に磨き手の顔を
ぐにゃぐにゃに おぞましく映しだす
かと言って無欲では
緊張感がたるみ
ガラス鏡のような
細密にして鋭利な様相を取りこぼしてしまう
と言うよりも
磨き手の目に見えている事など全くあてにはならない
素に指先で触れた感触と
丹精を込めた誠実さが
一漕ぎ 一漕ぎを…
さながら
舟を駆る 揩のリズムのように なだらかに
テンポよく
繋がらねばならない
そう それは
良く晴れた空を映す
湖を行くように
ありのままに
リズミカルに
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僕ら
何かと言えば
取り返しも
とめどもない
勘違いをしていたのかもしれない…
ロケット
あの月に
ズカズカと
人がたどり着いてから
何か
やり場もない
やりきれなさが
星やマンガ雑誌等も巻き込んで
目をつむっていた無垢さと朝の非情で倦怠な目覚めに分からないふりをしてきた
ロケット
イライラしている
ロケット
憧れている
嗚呼…
なんと言えばいいのか
慎ましく限界を試される
荘厳な姿勢
つまりあれは
神なのだから
さて
神だとして
なにをかいわんや
現実の日々の生活である
つまり
つまりなんて言う奴は
ろくでもなく
これは
Ωであり
αなのだ
さよならみんな
さようなら地球
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モクマオウの
ごうごうと風に寝そべる
真昼の青空
ひっそりとした
滝のようなすべり台
置いてきぼりの鉄棒兄弟
ジャングルジムのエベレスト
真っ白い
真っ白な雲と帳面の端
透明に
微かに浮かぶ
骨の月
ねえ先生
忘れ物なんかよりも
この校庭のこの景色が僕には必要なんだ
だから先生
僕よりも忘れ物が大事では無いのなら
どうか叱らないでいて欲しい…
ほら先生
セミがまた
鳴きはじめたよ
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道路脇へ車を止めると
夜のフロントガラスの雨は過ぎ去る ヘッドライトやテールランプを溶かし
まばゆいステンドグラスの物語は
渦巻く万華鏡の縁を零れ
さんざめく銀河の賛美歌が響きわたる
「科学でも 光の正体は 未だに解き明かされてはいないのだという…」
ため息に曇る霜をぬぐい
プリズムのスペクトルから覗く完璧な虹の悲運は
どんなにか目を凝らしても感知できぬ視覚
海の潮騒に似た
深呼吸は 繰り返し打ち寄せ
ただ遠くへと 去ってゆく
「光の正体は 宇宙の真理の核心部分なのかもしれない」
けれんみなど知らない
素敵なスピードの水しぶきに覚まされ
ようやくエンジンキーを
ゆっくりと 静かに回す
すべからく
光と
相対しながら
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誰しも
待っているものがあって
あてもなく
ただ 近づく予感だけが 静かに燃えていて
その期待は
いつしか 音も無く
炭化する灰のように
ポロポロとこぼれ落ち
何を待っていたのか
忘れてしまいそうな
喪失感を
上の空のふりして
カレンダーに目をやり
週末を楽しみにしながら
早く老いる事を
それとは知らずに願い
温暖化の空を燻す
二酸化炭素を
まき散らしながら
どこへ
たどり着けるわけでも無いくゆる願いは
感触も熱も持たないまま
思い出を置き去りに
立ち上るばかりだ