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遥 カズナの部屋  〜 新着順表示 〜


[91] 子象
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幼稚園の頃 動物園で子象の背中に乗せられた

何か勿体のないような順番待ちの中
僕は誰かに両脇を抱え上げられると
ただ突然に空へ
ほうり投げられるように跨がされた

両手に触れたその背中は
ひび割れた皺が渇いた大地のように生温かく
その生えた毛は 痩せた土地の草のように疎らで

上から見下ろした 親や見物人達の よそよそとした期待の様子の遥か高く 遠くにある その土地…

海の向こうから連れてこられて
何が分かっていた筈も無いその子象との出会は
ぞんざいな記憶だけを僕に宛てがい
どうにも釈然としない感触は ただこの手に
今も遠く蘇るばかりだ…






2007/12/15 (Sat)

[89] 
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何もかも

どうでもいい位に青い空

かき氷よりも

かき氷みたいに白い雲




ジーンズの埃を叩いて

日なたに出てみたら

理由も無く

歩るき出せていた




さっき迄の自分が

ばからくて




真っ直ぐに伸びた飛行機曇で

この空を

綱渡りしてみたくなっていた


2007/03/17 (Sat)

[87] 今日
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今日は

心には何も無い

白い紙をこのペンで汚してしまうのには 勿体ないみたいだ



さっき

「日曜日に釣りはどう?」って 電話があったから

心は

いよいよ清らかだ



今日は何も書きたく無い

とても「幸せ」だ

2006/06/15 (Thu)

[86] 何も無くとも
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私を心から愛おしい気持ちにさせ

報いを必要ともせずに

恥ずかしさと情けなさに塗れながらも

それとは知らずに

私は『詩』を書いてみたいと願っていたのです…




何も有りません




ただ そこに咲いた

一輪の無駄も余裕も持たない

花が

いつの間にか

そうさせて いたのです

であるならば




何も無くとも




私の書く文字が

いつか逆に

花のように 何かが咲く事を

促してはくれないかと

夢見 

また願いもするのです

2006/10/01 (Sun)

[83] 滝のほとり
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ほんの ひとときの

きらめき

笑いはじける

水しぶきと虹

肺を満たす清涼感

抑え切れないときめきが

雫に跳ねた若葉の頃




川のせせらぎ

戻らない 一瞬 一瞬

切なさに 追いつかれるよりも先に

はしゃいで飛び込んだ滝壺




日の射す

渇いた岩の上には

翼をやすめた蝶のように

色とりどりに乾されたシャツたち…




滝のほとり

あの日の僕らを映し

過ぎ去った

澄んだ清流のみなも

その 今もたゆまない

眩しさよ…

2006/03/08 (Wed)

[81] 綿津見の眼
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綿津見の紺碧に潤んだ眼

その深淵より聞こえる口惜しき魂達の慟哭
最も巨大な海獣達の木管楽器の遠い音色

深海より豊潤な息吹のように沸き立ち 閃くプランクトン

轟き打ちあぐる波しぶき
目に沁る潮の霧 迎え煌めく小さな虹

回遊魚の鱗のあまねく過ぎ去る大海原
それを掠め 翼を潮風に洗いしだく海鳥達

流氷と氷山の うごめきひしめくオーロラの彼方から
碧い月の砂浜に残る海亀が辿った家路まで

太陽と月の旅立つ扉

その安らかな寝床

私を誘う綿津見の紺碧に潤んだ眼






嗚呼…海よ







2007/12/13 (Thu)

[79] ヒマワリ
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写実的な カラーの点描画の美しさで描きたかった…

日差しに ほくそ笑むヒマワリの頬は

君の頬

君が「好きだ」と言った花

明日への期待に溢れそうな笑顔

手の平を伸ばせば

落ちて行きそうな位 青く澄んだ空に

僕には予感がしていた…







眩しさが際立つ程 影の不安は色濃くなってゆく…

何度も描こうとしたのだけれど

筆を握った僕ではなく

未来を見つめる その瞳を

どうしても上手に

描けなかった…






もう二度とは描けない…






ヒマワリを見れば

君を思い出す






ヒマワリ






僕よりも

明日を愛した君

2006/09/09 (Sat)

[77] 鍾乳洞
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真っ暗な

誰も知らない鍾乳洞では

幾つもの

水滴が弾ける度に

溜息の余韻が

百年も

千年も

しとしとと…折り重なり

白い

石灰質の寝床には

あまりに透明な

光りを知らない地下水が

ただ清らかに冷たく

湛えられていて

それは

青空の白い雲

夜空の碧い月

波打ち際で砕け散る泡に

何一つと言えど引けをとらず

美しく

切なさに

歯痒ささえ

残すのです

2006/01/10 (Tue)

[75] 普通になりたい
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私の成り行きを

何一つと言えど人のせいにはしまいと

この体を結ぶ紐と言う紐を
きつく締めているつもりだ

片手で水を掬って稼ぐような日々

申し訳の無い思いをよそに

妻と幼子の拙い会話は

温かな湯のように

心の背から掛けられて

私は

解きほぐされる…




お前達の為に

病気に成らぬよう

毎晩飲んでいた酒も止めた

酔って嘘塗れに塗り潰されてしまいたかったこの世界で

お前達は私の道しるべになったのだ




その道すがら

いつか

当たりまえの

普通の詩を

書いてみたい…

2005/12/28 (Wed)

[74] 弁当箱
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残業で

深夜の帰宅

狭い台所で

弁当箱を洗う…




妻と子の小さな寝息を妨げぬように

優しく

静かに…




仕事は

明日も目の回るような忙しさになるだろう…

けれど

共働きの妻は

私の為に

夜も明け切らぬ寒い朝に

この弁当箱に慎ましく

私の好きな卵焼きやら
焼き魚やらを詰めてくれるのだ

だから

何も辛い事等無い…




疲れ切った体

温かい心で

私は

静かに

弁当箱を洗う…

2005/12/08 (Thu)
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