詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
真っ暗な
誰も知らない鍾乳洞では
幾つもの
水滴が弾ける度に
溜息の余韻が
百年も
千年も
しとしとと…折り重なり
白い
石灰質の寝床には
あまりに透明な
光りを知らない地下水が
ただ清らかに冷たく
湛えられていて
それは
青空の白い雲
夜空の碧い月
波打ち際で砕け散る泡に
何一つと言えど引けをとらず
美しく
切なさに
歯痒ささえ
残すのです
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私の成り行きを
何一つと言えど人のせいにはしまいと
この体を結ぶ紐と言う紐を
きつく締めているつもりだ
片手で水を掬って稼ぐような日々
申し訳の無い思いをよそに
妻と幼子の拙い会話は
温かな湯のように
心の背から掛けられて
私は
解きほぐされる…
お前達の為に
病気に成らぬよう
毎晩飲んでいた酒も止めた
酔って嘘塗れに塗り潰されてしまいたかったこの世界で
お前達は私の道しるべになったのだ
その道すがら
いつか
当たりまえの
普通の詩を
書いてみたい…
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残業で
深夜の帰宅
狭い台所で
弁当箱を洗う…
妻と子の小さな寝息を妨げぬように
優しく
静かに…
仕事は
明日も目の回るような忙しさになるだろう…
けれど
共働きの妻は
私の為に
夜も明け切らぬ寒い朝に
この弁当箱に慎ましく
私の好きな卵焼きやら
焼き魚やらを詰めてくれるのだ
だから
何も辛い事等無い…
疲れ切った体
温かい心で
私は
静かに
弁当箱を洗う…
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僕らを包む全てへ
君はなっていったんだね…
君の体が灰となり
空気に溶けて
大気と一つとなった時
君を呼吸した僕らの胸は
痛くなり
この体の隅々の血に
君を感じたよ…
やがて瞳の毛細血管から
静かに涙腺へ至った君は
優しく頬に
流れ出て
僕らの汚れた眼を
洗い清めてくれた…
君が名残惜しんだ
この美しい世界
この君の全てに
相応しくなりたい…
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君の盲目の目を
癒す術を探して
旅に出た
デタラメな医者、曖昧な占い師、高慢ちきな教祖達。狡猾な商人、迷信や化学、怨念や逸話…雑踏に苛まれ
知らずうちに僕は人を恨むようになっていった…
全てがデタラメな世界
君を痛め付ける事すら糧とするこの世界
こんな世界の全ての人を盲目にして
僕も目を潰してしまえば
楽園が出現する
平和ボケしたクズどもがのたうち回るのを尻目に
君と暖かく闇に包まれたい…
今
君の苦しみを全ての人に叩きつけてやる為に
全ての人を盲目する猛毒を探している
全てが
バーチャルなこの世界で
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洗い立ての棉のシャツみたいに
優しい君の気遣いを
そのまま君のありのままの心と感じながら
毎日を生きているよ
心が
どうしようもない事に駆られそうな時も
人の
理不尽な毒に濁りそうになっても
おびただしい腐敗と喧騒に汗塗れに汚れ
クシャクシャに萎びてしまいそうになっても…
朝
君のひたむきな思いで洗濯された
白く香の良いシャツに腕を通したなら
何もかもみな新しくなる
今日一日を
君と全うしたくなる
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渚の夕顔は
白いワンピースの少女のよう
その夕立に濡れたしどけなさよ…
可憐と呼んで通り過ぎるに忍びず
眺めていると
ようやく日の射し始めた砂浜で
君を囲む鮮烈な黄緑と白
葉と砂の色が鮮明さを競い始め
その影も濃い程に
風は
君の虹色に輝き出したワンピースの可愛いらしさにいたたまれず
迎えに遊びに来ては
連れ去ろうとして吹いて
その度に
濡れた髪のようなツルをクルリと弾ませ
花びらの裾はひざ小僧を隠そうとしながら
ハニカミ
少女は優しく
僕に
微笑むのです…
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夜も明け切らぬ荒磯に降り
喧しい波の音と
いそいそとした空に挟まれて
愛竿を手に深く息を漏らす時
何も楽しい気持ちはありはしない
期待と寝ずの倦怠感が
潮の香りと渦を巻き
騒がしく背中の方で私を軽く持ち上げてしまいそうになるのだ
「落ち着くのだ」
やがて
ぼんやりとしてはいても
夜が明ける程に黒く鮮明な釣り人と鋭い竿のシルエットが
朝焼けに立つ
「もう何も迷う事等無い」
穂先は空を切り
固い意思は
しっかりと鳴り響いた。
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何一つ染みの無い雪の結晶が
超電導帯の黄金の基盤の細密さを充満させ
誰も知らない教室の
窓を映したビーカーの中
チラチラと
万華鏡を回し
完全に不完全になろうとして
揺れている
詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
色とりどりの花の咲く種を
君にあげたい
独り占めにしたら
採れた種が
寂しかったから
やっと見つけた
素晴らしい曲を君に伝えたい
君もきっと
誰かに伝えたくなるよ
一人では
とても切ない曲だから
本当の寂しさは
独り占めに出来なくなる
だから
君をみんなに紹介したいのさ
本当に寂しい Color
きっとみんなも君を好きになる
みんなもきっと誰かにそれを伝えたくなる
本当に寂しい事は独り占めに出来なくなる
だから
独り占めにしないで
君も
君を
独り占めにしないで