詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
彼女はその夜
何もかも捨ててしまうつもりだったのです。
覚えている事はみんな
みんな
口惜しさの影で
水滴みたいに
しとしとと流れて行き…
ただ
ただ忘れる事だけが
彼女の救いとして
許されたのです。
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繰り返し、繰り返し
君は振り返る
turnする
奏でられた思いでに…
木漏れ日を腕時計に透かした光りのスペクトルが黄金の秒針とすれ違う
君は繰り返し、繰り返し
振り返る
スカートの裾は赤い風車
桜吹雪の中でゆっくりと止まる…
僕は息を呑む
奏でられた思い出の中
君は
繰り返し、繰り返し
振り返る…。
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何も求められていない赤子が笑っている
黄色い ちぃっちゃな花が幾つも 幾つも
ユラユラとする
抱き抱えると
モソモソと柔らかく
一杯の揺らめく水のように
大切に包んだ手の中から
こぼれようとする
煌めく明星の瞳
風にそよぐ綿帽子の手の平
甘く香る水蜜桃の頬
その未来に
過去、全ての死者の生きた理由を
その魂に
命と愛の意味を秘めて…
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思い出すのは
小学校へ入学する朝、母に写真を撮って貰った事
拾った子犬をもといた場所に置いて
泣きながら逃げ帰った事
雨の花壇で紫陽花を
しゃがんでじっと見詰めていた事
海水浴後のおにぎりを甘く感じた事
田舎の夜が深く
恐かった事
校庭で長く伸び始めた陰に立ち尽くした事
兄と二人で花火をした事…
取り留めも無い記憶
愛しい記憶
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忘れ去られた砂浜をさ迷う
割れたビン、靴に玩具…
吹きすさぶ風に砂が混じる
大切な事を忘れてしまった気がして
探している
薄曇りの空
足にじゃれつく砂
時折日が射す
不明瞭な世界
神様は空から見ているのか
砂の混じる
風の吹きすさぶ
誰もいない
砂浜をさ迷う…
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映画館の前は
心が騒いで
旅立つ朝みたいで
あの入場券の真新しさ
上映前のよそよそしさ
出発の警笛のようなブザー
そして…
ようこそ「風と共に去りぬ」
ようこそ「スターウォーズ」
ようこそ「ハリーポッター」
ありがとうチャップリン…。
僕は
生まれて来て良かった
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鼠には
何故カゴの中で
何故カゴがあり
何故その中で自ら車を回し走り続けているのか…
理解する日は来ない…。
人も何故この世界があり
何故この世界で生き続けるのか
理解する日は
永遠に来ないいだろう…。
詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
ソーダ色の空
溢れる泡の雲
さよなら太陽
閃く波しぶき
オレンジに闇と光りがざわめく境界線に
つんざき吹きすさぶ
もうただ…ただ行く…
風の音が五感を一つに溶かし
羽ばたきもせず
グライダーよりも
純粋な風そのものになる
陸が閉ざされた二次元の紙切へと どんどんとなって行く…
沖は人魚の姿
メデューサの呪いが
波間に見え隠れしている
このままグラン・ブルーのイルカと帰れなくなるまで…
世界の果てへ落ちてゆきたい