| 詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
僕らを包む全てへ
君はなっていったんだね…
君の体が灰となり
空気に溶けて
大気と一つとなった時
君を呼吸した僕らの胸は
痛くなり
この体の隅々の血に
君を感じたよ…
やがて瞳の毛細血管から
静かに涙腺へ至った君は
優しく頬に
流れ出て
僕らの汚れた眼を
洗い清めてくれた…
君が名残惜しんだ
この美しい世界
この君の全てに
相応しくなりたい…
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君の盲目の目を
癒す術を探して
旅に出た
デタラメな医者、曖昧な占い師、高慢ちきな教祖達。狡猾な商人、迷信や化学、怨念や逸話…雑踏に苛まれ
知らずうちに僕は人を恨むようになっていった…
全てがデタラメな世界
君を痛め付ける事すら糧とするこの世界
こんな世界の全ての人を盲目にして
僕も目を潰してしまえば
楽園が出現する
平和ボケしたクズどもがのたうち回るのを尻目に
君と暖かく闇に包まれたい…
今
君の苦しみを全ての人に叩きつけてやる為に
全ての人を盲目する猛毒を探している
全てが
バーチャルなこの世界で
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洗い立ての棉のシャツみたいに
優しい君の気遣いを
そのまま君のありのままの心と感じながら
毎日を生きているよ
心が
どうしようもない事に駆られそうな時も
人の
理不尽な毒に濁りそうになっても
おびただしい腐敗と喧騒に汗塗れに汚れ
クシャクシャに萎びてしまいそうになっても…
朝
君のひたむきな思いで洗濯された
白く香の良いシャツに腕を通したなら
何もかもみな新しくなる
今日一日を
君と全うしたくなる
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渚の夕顔は
白いワンピースの少女のよう
その夕立に濡れたしどけなさよ…
可憐と呼んで通り過ぎるに忍びず
眺めていると
ようやく日の射し始めた砂浜で
君を囲む鮮烈な黄緑と白
葉と砂の色が鮮明さを競い始め
その影も濃い程に
風は
君の虹色に輝き出したワンピースの可愛いらしさにいたたまれず
迎えに遊びに来ては
連れ去ろうとして吹いて
その度に
濡れた髪のようなツルをクルリと弾ませ
花びらの裾はひざ小僧を隠そうとしながら
ハニカミ
少女は優しく
僕に
微笑むのです…
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夜も明け切らぬ荒磯に降り
喧しい波の音と
いそいそとした空に挟まれて
愛竿を手に深く息を漏らす時
何も楽しい気持ちはありはしない
期待と寝ずの倦怠感が
潮の香りと渦を巻き
騒がしく背中の方で私を軽く持ち上げてしまいそうになるのだ
「落ち着くのだ」
やがて
ぼんやりとしてはいても
夜が明ける程に黒く鮮明な釣り人と鋭い竿のシルエットが
朝焼けに立つ
「もう何も迷う事等無い」
穂先は空を切り
固い意思は
しっかりと鳴り響いた。
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何一つ染みの無い雪の結晶が
超電導帯の黄金の基盤の細密さを充満させ
誰も知らない教室の
窓を映したビーカーの中
チラチラと
万華鏡を回し
完全に不完全になろうとして
揺れている
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色とりどりの花の咲く種を
君にあげたい
独り占めにしたら
採れた種が
寂しかったから
やっと見つけた
素晴らしい曲を君に伝えたい
君もきっと
誰かに伝えたくなるよ
一人では
とても切ない曲だから
本当の寂しさは
独り占めに出来なくなる
だから
君をみんなに紹介したいのさ
本当に寂しい Color
きっとみんなも君を好きになる
みんなもきっと誰かにそれを伝えたくなる
本当に寂しい事は独り占めに出来なくなる
だから
独り占めにしないで
君も
君を
独り占めにしないで
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不幸を知らない
オママゴト戯言は
恨めしく
垂れ流され
痛い事が
何より嫌な私は
とにもかくにも…
蓋をして
釣りに等に出かけ
煩わしい
人のあるべき様を忘れて
水面にひっそりと立つ
浮きに自分を重ねて
緊張感と倦怠感を混ぜ合わせたら
今よりましな自分を
見据えるのです
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突然の風に音をたてて落ちた
母の病室
それに
退院予定日が印される事は無かった…
実家に戻れば
会える気持ちのまま
線を引くように裂いた音
妻の病室
出産予定日は近づき
裂いた一枚を
捨ててしまうのには虚しく
丁重に紙飛行機にする…
窓を開いて
悲しい夢から覚めたような気がしても
潤み出す景色
めくるめく日々の向こう
そよぐ母のもとへ
我が子よ放て
カレンダーの紙飛行機
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困った男だ、お前は
「歯医者じゃ麻酔はしない」のだと言う
酔って車をぶつけたりする
「俺は長生きは出来ないだろう」と言う
日焼けした顔で目だけがギョロギョロと睨み
ある夜
二人で飲んでいると
「最近、仕事が減った…」と鼻から溜め息ついた
いつか
子供をビデオに録りたいと話したら
「馬鹿じゃないか?」と罵られた
思い出は心に焼き付けるように、両の目でしっかり見るのだと…
お前は本当に
困った男だ