| 詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
浜辺で拾った
貝のカケラ
「あの砂浜で生まれたの」
粘液と共に吹き出され
清らかな肉を包み
命が当たり前みたいに側にあった…
月が照らしていたのを覚えています
潮が引いていったのを覚えています
蟹達の噴く泡の弾ける音を覚えています
轟く波を覚えています…
朽ち果てた今
幾億の仲間達と
この砂浜の
この星で
無限の宇宙へ
溶けゆく事を知らない…。
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水浴びをしようとして
浴室で整然と並ぶタイルを眺めていたら…
ここはまるで太古の墓の王の間のようじゃないか?
遊びたくなって
明かりを消して
横になると
冷たい背中に身を清められるようで
いよいよ面白いではないか
三千年のファラオの夢に興じてみた…
だけど
君に同じ事を奨めたりはしないよ
こんなに面白くて
面白くて、面白くても
決して奨めはしないよ
君が僕に
他に面白いオモチャや遊びを教える事が出来るなら
その資格があるかも知れないけれど
だから
決して奨めたりはしないよ
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ゆっくりと…
視力が取り戻されて行くように…
静寂な東の夜空の帳は
ぼんやりと開き始める。
やがて冷たい大地と空と海を暖めながら…
ゆらり、ゆらりと…
日は世界を巡り来る。
闇を西の空へと追いやりながら
永遠に
朝は世界を
進んで行くのだ。
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君に僕の代わりがなければ良いのに…。
この星のように
肉親のように。
死ぬ事以下がないように
僕のいない程の苦しみが
君にとってなければ良いのに…。
時が、いつか君を愁いに包んでも
当たり前でない新しい僕が
いつでも君の側にいれば良いのに…。
まだ知らない未来が幸せであれば良いのに…。
たとえその事がわからなくても
信じずにはいられない程
君が僕を好きならいいのに…。
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母猫が子猫を呼んでいる。
「お前の可愛い子猫は…」
母猫が呼んでいる。
「表通りで車にひかれてしまったよ…」
母猫が呼んでいる。
あのアサガオのくるくるとしたツルのような可愛らしい尾が、風に跳ね回る事はもう無い
母猫が呼んでいる。
「うるさい猫め!」
…悲しくなる…
母猫が呼んでいる。
…そうだね…
私もお前と思い出そう…
あの子は可愛い子だった
本当に可愛らしかった…
母猫が子猫を呼んでいる。
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牢獄にあっても
幸せを見出だす人は居るが
宮殿にあっても
不幸しか目に映らない人も居る
それは夜、灯りに群がる虫達のようじゃないか?
一点の視界
以外の視界に
無限の自由はある。
、
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碧い月と潮騒の浜辺
人魚の亡きがらは打ち寄せた
淡い月の光りにさえ
透ける程白いその肌は
今しも波へと溶けそうだ
暗い沖からきっと
仲間がこちらを見つめてる
波音も物悲しく聞こえて来る…
彼女の夢は人を愛する事
報いは泡と消える事
碧い碧い潮騒の夜
願いを叶えた月の夜
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誰も居ない劇場の
僅かに日の射す舞台の上に
赤い花びら一ひら
静かにそっと落ちていた
押し寄せる客席を向こうに
暗く高い天井を見上げ
赤い花びら一ひら
何も知らないみたいに落ちていた…。