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遥 カズナの部屋


[150] 碧い夏
詩人:遥 カズナ [投票][得票][編集]














1987年、沖縄
高台に建つ展望台を臨む
ガジマルのつたまみれにからまれた裾野の町
眩しい程の緑の芝生に広がる白い外人住宅を囲うフェンスの外側
陽炎たちまくアスファルトの車道の斜面に
仲間とスケートボードで何度となく転んだ
碧い海岸線を見下ろす
胸のすく夏があった

肌を刺すような陽射し
空き地の土管をくぐり抜け涼やかに吹き抜ける風
真夏の坂道を
押さえきれない明日への期待をはちきれさせながら
高速で回転する潤滑油を効かせたベアリング
肌をつたう汗
満天に轟く戦闘機の爆音にのせて
思うがままにふざけ合い
笑い転げ
腹がよじれるまで
気持ち良く疲れ果てる果てへ
つんざいていった

平屋の屋根へハシゴを掛け仲間と眺めた屋上からの景色
夕焼けが
隣近所の庭に生えたヤシの木のシルエットを鮮やかに映し出し
夕涼みを満喫するには十二分なラジカセからのメロディーが耳もとを
片思いの少女を想うような切なさで撫でてゆく
ひざこぞうを擦りむいた
まだ赤い傷口にも目をやらず
意味の必要もいらず
この小さな島で
一生を生きてゆく事を
拒むとかも
考えられなかった
それは
永遠を鷲掴みにしたような感触で
この心に色あせる事はない

戦闘機の爆音は
遠い内地に移り住んだ仲間達のところへ届かんばかりに
今日も空を轟き渡っている














2014/07/15 (Tue)

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