詩人:遥 カズナ | [投票][得票][編集] |
釣りをやっている
求める魚は
悠々と
どこかを泳ぎ
胸を焦がす
こちらの意図など
藻屑のように潮に流され
途絶えていく
白い紙面と
ペン先と意図
技能なら
分解してみれば
基本的な動作を素早く繋ぎあわせたようなもので
それはあたかも
点と点とを
なめらかに繋ぎあわせていくようなもののはずだ
深呼吸の
波の音が
聞こえる
揺れ動く海原
その深淵は
いく筋もの潮が織り成す
絶海へと
かすれ吹きすさびそうな
蒼い肩達の面影の縁を
逸れぬように
トレースしていく
身障者の息子の手を引く
老いた母親
後ろ足を結わえられたまま
首筋を鎌で裂かれ
そのまま木につるされた山羊
雨の日の校舎に囲われた
花壇に咲く紫陽花
推測はいつも期待よりに傾いていて
誰のものにでもなれそうに装ってはいるが
それには
距離感が欠落していて
虎視眈々と色濃くなっていく執着ともつれ合いながら
波間に見えかくれする
か細い意図をつたい
弾かれた指の感触が
出逢いの閃を身体中へ流がしこむ
全てがつながる
あらんかぎりの力で
こたえおうずる
初めて竿が弧を描き
出口を知らない
期待と不安が
こみ上げてきた頃ように
今日もまた
ここに一つの点を
残しておこう
虚構に近い
無限の差異のただ中で
影の実体を
探し求めている
深呼吸の
波の音が
聞こえる