詩人:遥 カズナ | [投票][編集] |
巷で
不味いと聞いていた魚を確かめる為に
釣れてすぐに脳天を貫いてしめた
風は北風
この俺を忌々しく思うような
ただ、ただひたすらに強い
向かい風
冷たいナイフで
手のひらを切らないように
慎重に腹を切り裂く
磯臭く青白い、ドロリと不快で不味そうな腹わたが
その顔をあらわにする
まだもがく魚を
しっかりと押さえて
血だるまの頭の方へ
指先を突っ込み
エラを引きちぎると
荒波に放り捨てた
ところどころ
鱗の張り付く
魚臭い手のひらで
クーラーボックスに獲物を放り込むと
バケツの海水で手を洗い流し
タオルで拭う
不味いと言われている魚は
大概に釣れてからの処理が悪い
血抜きや内臓を捨てるのが遅いからだ
持ち帰っても
家族にまで歓迎されない食材を
まな板に置いて三枚におろす
確かめられるのが
釣り人だけの至福で、いい
小皿の醤油に刺身を浸すと
脂がサッとひろがった
山葵以外に
何がいるだろう