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遥 カズナの部屋


[412] 観察
詩人:遥 カズナ [投票][編集]

波打ち際の
防波堤の隅っこに
トンボがいて

明日には
台風が来るから
風も幾らか
強く吹き始めていて

神様が

手際よく描いた
デッサンみたいな
美しい線のフォルム

強い筆致で刻まれたような6本の足

機敏にくいっと動かした頭には
空も私も映していたであろう黒い目玉が丸く

川面を思わせる透明な羽と
血色の真紅の身体を
風に弄ばされそうになりながら
佇んでいて

命と言うものは

生きてそこにただあるだけで
十分意味があるのだと言う事を
わからせてくれていた

2025/10/11 (Sat)

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