波打ち際の防波堤の隅っこにトンボがいて明日には台風が来るから風も幾らか強く吹き始めていて神様が手際よく描いたデッサンみたいな美しい線のフォルム強い筆致で刻まれたような6本の足機敏にくいっと動かした頭には空も私も映していたであろう黒い目玉が丸く川面を思わせる透明な羽と血色の真紅の身体を風に弄ばされそうになりながら佇んでいて命と言うものは生きてそこにただあるだけで十分意味があるのだと言う事をわからせてくれていた
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