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高級スプーンの部屋


[339] 海月の手の中
詩人:高級スプーン [投票][編集]

光の色を知ってるか
と聞かれ
光の音を知ってるか
と聞かれ
分からないと首を振る
僕には
見えないし
聞こえない
説明を受けても
理解らずに
どうにもならずに
拳を強く握るしか
出来なかった

他の誰かになら
いとも簡単に
いや生まれた時から
手にしているものは
どれだけ望んでも
この手では
掴めないものと知り
目の前の扉は
パタリと閉まり
部屋の明かりは
フッ と消えた
望みが途絶え
立っている場所が
闇に包まれ
寒気がして
震えが止まらなくなって

初めて気付いた事がある

マンホールのフタ
開いた先
広がる深海
異なる相手からすれば
暗くて中が
よく分からない
ものでしかない
けれども僕には
手に取るように分かる
生まれた時から
手にしていたから
その色も
その音も
僕は知っていたのに
周囲の輝きにばかり
気を取られ
己の拳の中の光
見ようとしなかった

あなたがどうしようと
どうにもならない
力を秘めている
未知分の一の確率で
発症した一個の生命体
他の誰とも違う
光を放っている

僕だけに見える光
僕だけに聞こえる光
真理では計れないもの
僕だけの光を
この手に宿し突き進む

2005/09/24 (Sat)

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