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高級スプーンの部屋


[357] 銀玉鉄砲
詩人:高級スプーン [投票][編集]

憧れていた
ガンマンになりたくて
買ってもらった
銀玉鉄砲
今の僕の手には無く

慣れに
負けたくないから
常に皆が求めるものをと
時代を意識して
いままでの僕を
斬り落とし
新鮮な血を零す
真っ新な紙の上に

いつしか
繰り返す行為にも慣れ
余裕も猶予も失くし
青ざめる顔

斬新な赤を欲し
震える手が
鈍く光る
強迫を握り締め
もっと深く
更に深くと
自分を斬り刻む

取り囲む現実が
二重にも三重にも見え
膝をついて
そのまま
染み込まない赤に沈み

自ら吹き出した
血溜まりに溺れ
朦朧とする意識の中で
思い出したのは
あの頃の夢
何故
こんな結末を招いた

弱虫だった僕は
その強い正義感で
たった一人
悪党に立ち向かい
町を守る為に戦う
ガンマンに憧れていた

勇気を胸に
思いを弾に込めて
引き金を引き
解き放ったのに
紙に書いた言葉すら
撃ち貫けず

安易な考えは捨てろ
希望じゃ夢は叶わない
銀玉鉄砲を放り投げ
僕は誰の力も借りず
たった一人で
この道を行くと決め

結果
このザマか
己を見下ろし嘆く声
心に悪の巣窟
自身も守れず
赤に抱かれ

銀玉鉄砲で
撃ち殺されたのは
僕だ

2005/10/07 (Fri)

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