詩人:高級スプーン | [投票][編集] |
朝はいつも秋
枯れた人間達が
古びた地面を
埋め尽くす
似通った
慣れの果てを見せる
人間達を
麻袋に詰めて
トラックの荷台に
乗せてゆく
怪獣に遊ばれて
崩れた街の中を走る
荷台に
山積みになって揺れる
枯れた人間達を
処理場まで運ぶのが
俺の仕事
大地震が
起きた後のような
道路は凸凹過ぎて
山道よりも走りにくい
街も人も皆
半端に壊われているから
面倒臭がって
誰も修理しない
街や人や全てを
処理場に着いた
枯れた人間達を下ろし
処理人に渡す
代わりにお金を貰う
クズみたいな
金額だが仕方ない
クズを売ったのだから
生きていても
死んでからも
人には金が付いて回る
好きか嫌いかは
別にして
なんだかな
帰り道で
パンとミルクと
煙草を買った
それから
毒も一つ
無理をして
幸せになると
副作用に苦しむ
苦痛から逃れようと
更に無理をして
幸せを
手に入れようとする
しばらくしてから
本当は
不幸だったと感じ
今度は
連鎖を
断ち切ろうとする
自分一人の力では
どうにもならなくて
最後に手にするものは
幻から覚める
効果のある薬で
理性を取り戻し
幻から解放された
人々は
夢のない現実で
最良だと思う選択をする
結果
俺は
この仕事に就けて
枯れない程度に
暮らせている訳だが
結末は
最悪なものだろう
ミルクで
毒を流し込む
多幸感を味わいながら
残りの半日は
幻の中で過ごす
夢がないと
毒を飲んで
逃避して楽園へ
夢から覚める
薬を飲んで
逃げ場を失って
辿り着く先は
どれも同じなら
俺は
少しでも幸せな
不幸を選びたい
最後には
壊れて
ボロボロになって
枯れるのだとしても
それでも
今は
生きている