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高級スプーンの部屋


[570] (再)
詩人:高級スプーン [投票][得票][編集]

半紙に落とした半生
押え付ける文鎮
散らない記憶
あの日の失敗

ハミングバードを
奏でるように
悔いの残らない
告白をしたかったのに

廊下の向こう側
友達に支えられ
泣きながら歩く
君の姿を
見ながら止まる
チャイムが鳴って
いつも通り
教室に吸われた

この前テレビで
確か観たよな
一晩推敲して
実行したプラン
脚本は既にあって
演じたのは
別の誰かだと
今更気付いた

始まらなかったのに
今も終わらない
必死になって
拭っても
消えない
過ち


繰り返し
繰り広げられる物語
そして例の場面
二人の行方を追っては
あの日の光景
思い出し
再考する

現実は
巻き戻せない
やり直せない
幾ら演っても
停止してる
進まないのは
当たり前
気付いてんだろ
いい加減にしろ

二番煎じの
三文芝居は
虚構じゃない
完全なオリジナル
画面の外に居ても
誰にも見られていなくても
不細工なお前が主役
分かってるんだろ

君が好きだ
ふざけたことを言う
アイツの演技は
下手過ぎて
なのに二人は
ハッピーエンド

沈黙に更ける密室で
水も取らずに
寝転んでばかり
切れたトカゲの尻尾は
トカゲには再生しない
それでも
頭の中
廻る闘争
色褪せながら
どこに行く

僕から抜け出た
塊が
ぺらぺらと
中空を彷徨う
部屋の扉も窓も
鍵が閉まっている
仕方がないと
空に戻る

すっきりしたくて
発射した
笑いながら君は
その場を去った
静まり返る空間
思いの丈を
出し尽くせずに
取り残された

引き金を引いたら
撃たれたのは自分自身
慣れないセリフを
使うもんだから
倒れてしまうんだ
蝉の幼虫の真似をして
うずくまる

成長はしない
そのまんまで
余生を送る

素晴らしい世界を
執りながら
ペース配分も
考えずに走り
たった一度の
試練に破れ
面白くないと
人生を擱(お)く
お前と云う作品の
見所は
どこにある

2006/05/14 (Sun)

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