詩人:緋子 | [投票][編集] |
なにもかも吸収してくれる枕が欲しかった。
怒りのパンチ、
抑えきれない叫び声、
わけもわからず流れてくる涙、
ひとりの夜の震える身体。
なにもかも吸収してくれる枕が欲しかったのかもしれない。
鏡のように向き合えばすぐそこにあって、
ビニール袋のようにぱっと開く利便性があって、
ぬいぐるみのようにぎゅうぎゅうに抱きしめても壊れる心配はなくて、
ラインなんかよりも簡単に意思疎通できて既読無視の既の字も存在の余地もない位確実にわたしと縛り付けられるもの。
私は無機質で無感情な枕を愛してる。
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面倒だからといって
心を開くのを諦めても
ゴロゴロと音を立てる雲のように
胃の中で怒りは渦巻き続けながら
雷の落とし場所を求めているよ。
口から、目から、胸から、腕から
ふとした瞬間漏れてあふれる
黒い煙のそれ。
立ち込める暗雲を、必死で押し留めようとするけれど
指先からするすると流れてしまう
隠せない
隠すのは面倒
だけどもう、私
そこにしか
自分をうまく表せないよ。
真っ赤な隙間風を通して
色んなものを詰め込んだこの脂ぎった喉の奥を、
さらっと一掃できたらな。
きっとはっとするようにして
私は目を覚ます
大人がそれをゆるさない
自分と言う未完成の大人が
私と言う未熟な子供を
黙って歩けばいいの と
すべてを制止する眼つきで威圧してる
乾いた日常に
からからの、胸の奥
涙が満ちるよりも先に
真っ赤に切り落として堕ちてしまおう
予感はさらりと煙になり、静かに消えていく
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音のない日々に、かっこをつけて
てきとうに選んだ色づかいで、
むちゃくちゃに飾り付けるけど
やっぱり、
私の中に残るのは、ただの虚しさと
汚したてのひら。
きみの目、耳、心。
欲しいものはいっぱいある。
欲しい言葉は、数えきれないくらいたくさん。
だけどその前に、
私がここにいること、
こんなにも届かない。伝わらないの。
毒を盛ろうか?
花を飾ろうか?
何色に染めれば、きみ好みの味になるのだろう
ただ、こっちを見てほしくて、
重ねるほどに遠ざかるのは。
私の土台がこんなにも空虚な嘘で膨れ上がっているから。
飛んでいるような気分は、
いつか破裂してしまわないかという不安で浮きっぱなしの足元。
それを私の夢だと唄えるうちは、
どうしても後戻りなどできなくさせる
一瞬の喜びを、
終わりなど恐れずにずっと感じていたいの
ふうせんのように膨らます、
私の愛言葉。
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何をされようと、裏切られようと、
これっぽっちも痛くはない
どんな終末も、すりぬけていく。
好きじゃない。
ただそれだけに行き着いて、
ただそれだけに終わる
ありふれた言葉に、
ありふれた答えを返すだけ。
好きなんじゃなくて、
嫌われたくないだけ。
私の恋愛。
音のない、意味のない、
乾いた心臓を長い髪で覆い隠し
恥じらいに見えたなら笑顔で釘を打っておくよ
中身なんてないのに
跳び跳ねて、はにかんでみても
心は波打たない
その正体に気づくのは、いつも終わってから。
私は君という他人じゃなくなった他人に
どうせなら嫌わないでほしかっただけ
好きの本質も知らないで、貪ったつもりになろうとしてただけ
真面目に真正面に向き合うことができる愛を知りたかったけれど
掴むことができた時点できっとそれはニセモノなの。
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逃げ場も逃げる方法もないと
この世の中に
唯一受容される自分の意思が
消えることしかないように感じる
泣くことしか出来なくて
浮かび上がる”消えたい”の向こう側にある
”幸せになりたい”も見えなくなって
ただ私は死ななきゃいけないんだって思う
楽になる方法は分からないけど
きっと私は生きたいし、
この先出会う希望の可能性も捨てていない
一瞬の絶望に身を投じてしまわぬように
涙に浸かりながら
”消えたい””消えたい”を繰り返して
”幸せになりたい”を呟いている
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また、「変わりたい」が暴れ始める。
うまくいかないことばっかりや、
不安が続くとき、現れる
じわじわと滲みだす「変わりたい」。
人の顔色窺って 「変わりたい」。
魅力的な人を前にして 「変わりたい」。
失敗ばかりの自分 「変わりたい」。
孤独を感じて 「変わりたい」
優しさに触れて 「変わりたい」
強くありたくて 意味が欲しくて 自分が欲しくて
じわじわ じわじわと
溢れだす
ひとりは嫌だよ
だけど、弱い自分でいるのも嫌
足場がとても脆くて崩れそう
どうか、ここにいること、誰か気づいて?
自転車で 川に飛び込む
大声で 意味のない言葉を叫ぶ
突然飛び出す 変な歌
予想もしない瞬間にまた、爆発する
私の中の「変わりたい」。
何の意味があるのと問われても分からないよ。
ただ、ものすごく、今すぐに、何が何でも、お願いだから。
どうにかする瞬間をつかみ取り、その一瞬で転身してしまいたいと思う。
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あんまり考えたことがなかった。
言わなきゃわからないこと
伝えなければ、始まらないこと
交わさなければ、生まれないこと
待ってるだけじゃだめなんだ。
君が投げかけた笑顔が100点であるように
私の返す笑顔も、満点をとりたい
難しいけど精一杯、私の心を裸にしたい。
君の前で。
いつもどこからかやってくる、人と接する恐怖を
ぜんぶ拭い去ってくれる。
君の笑顔は羨ましい。
だから無駄にしないように
これからも見れるように
変わっていけるように
私は鏡になって、
君の光と
私の心を
私のからだ全面で照らし出したい。
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どんな言葉も
わたしの声である限り
嘘にしか聞こえない
本当に笑っているんだと
思いたいのに
作り笑顔のように感じる
何度も立ち止まってしまう
進みたいのに邪魔をする
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嘘ではない言葉を並べる人の目は綺麗だ。
揺るぎない真実が、その人の自信と、威厳に繋がっているのだろう。
私はいつまでも汚い嘘にまみれてる。
自分でも真実と偽りの区別がもはや完全につかない。
嫌われないために作る笑顔
頭の中はいつも空っぽ
何も残らない心は不感症
それでも、生きてるふりがしたくて必死に息を吐き出したのに
わたしの耳は音を拾うことを失ってしまった
自分を疑って、自信がなくなって、居場所を失いたくないばかりに、
人間を取り繕うけれど、壊れてしまった人形のように、
まるで意志が交わらない。わたしは抜け殻。ただの死骸。
自分のために空回りして、死者甦生に必死なの。
わたしは生きたい。本当にここにいたい。
もしも溢れる嘘が真っ赤な血となって目に見えてくれたなら
きっと誰もがわたしの必死に生きる様を理解してくれるのに。
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どこかで脱ぎ捨てたはずの自分の殻が
どうして未来を覆い隠すのか
だれもが前を向いているというのに
私ひとり 俯いて
歩けない
また、置いていかれる?
逆戻り。
遠ざかる、
忘れていく、
手放してゆく
どんどん広がっていく 恐怖
つかみかけた当り前は、
こんなにもたよりなく
握りしめていた掌の中から
崩れ去っていく
痛みが頭蓋の内側にじわじわと立ちはだかる
暗黒にこの目を塞いでは呼吸を奪う
自分が欲しくて、何度も傷つけた
わけもわからず人目も憚らず
何も見えない眼球を振り乱して
また、繰り返してしまいそうで
たった一言。
わたしとみんなを隔てる
決定的な言葉。
きっと意味のない通り過ぎていくだけの日常。
わたしひとりが恐怖を感じていたの。