詩人:神原良 | [投票][編集] |
風の時間
微かな 肺の痛みに
復た 繰り返す 秋の
悲しみに肖た 単音の
雨音。
ピアノを弾く
一瞬
の指のもつれに
ひび割れた室内の大気の磁器。
生存という
極めて危うい均衡の中で
急速に 摩耗する
風の予感。
ふいに
時間が乱れ
かつて存在した者たちの
蒼白の息吹がよみがえる時――
父が
語らうように 父が
鍵盤の
隅に 立ち現われる――
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コスモスの恋
秋深く 見はるかす北の大地に
どこまでも続く コスモスの群落
その薄桃の闇の中で 僕らは
あの日 互いを 見失ってしまった・・
風が吹いていた 一瞬 強く
忘れていた この胸の痛み
十年 夢は薄桃の影にひたされ
さらに 幾年 苦しい夢見の果てに
記憶は ふいに覚醒する あの丘の上で
風に佇つ コスモスの花の精のように
しなやかに 蘇る 君の姿
ああ 忘れていた ひとつ前の世では
丘の向こう あの水辺のあたり 僕らは
ふたり 静かに暮らしていた・・
詩人:神原良 | [投票][編集] |
マニフェスト・孤独
ひとりに飽きたら
漫画を読もう
オオシマ・ユミコなんて最高
死が 光ってる
これは少女の遺書ではなく
僕は 男
職業は テロリスト
二人 殺した
本当は三人 だったけれど
最初に殺したのは父 だったので
彼は 赦してくれると思う
彼だけは きっと
切り捨て 切り捨て ここまで来た
ごらん 僕のいまの左手
指が五本しかない
以前は六本 あったのだけれど
目覚めた朝
世界は 畸形だった …いや
世界ではなく 僕が 畸形だった
(世界ハ少シモ畸形デハナカッタ)
女というやさしい性器を持つ鳥の種族と
この十年 僕は 暮らしてきた
ある時は 軽やかな狂気を装い
ある時は 装う必要もなく
三月の窓――
爽やかな雨が降りつけ
降下する鳩を 僕は
受け止める何の手立ても知らない
救済
と 唯それだけ書いたら
涙があふれて
もう 何も 書けない
降り続く 雨
降下する 鳩
現在 おまえは こんなにもひとりで
雨の舗道に 落下していくのか?!