詩人:高級スプーンあと何年 | [投票][編集] |
日の出が見えない
高層ビルが邪魔をして
ジャングルジムを登ったくらいじゃ
達成感は得られなくなった
それくらい
目覚ましい人類のバージョンアップ
新しく自分を書き換える時間がない
ぼくの心臓はぐるぐる回る
思考も身体も停止したまま
人生の何にも手をつけられずにいる
モノローグに次ぐモノローグの果てに待ち受ける死よ
ロック画面に設定して
いつでも見られる状態にすれば
少しは変化があるかな
正午
真上まで来れば
高層ビルがあったって
陽だって見える
雲が邪魔をしなければ
大気圏を突き抜けるまで
アップデートを繰り返さなければ
ストレートには味わえないのか
厳しいな
日の目が見えない
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耳元から心臓まで貫かれる
俺にとって刺さるモノは
貴女にはどうでも良くて
一緒にいるのが不思議だな
その実何の不思議もなくて
俺が可愛いと思う貴女が
「かわいい」と云う相手が
一緒にいるのが事実だから
昨日林檎を食べた虫達が
今日どんな騒ぎを起こすのか
興味はなくて
その場に座って静かに思い返す
可愛い貴女と過ごした日々を
ふたりの蠢きは
裏返したダンゴムシの脚を見るよう
愉しかったな
あいつは昆虫じゃないけれど
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抜き取った背骨を並べ立てて
標にしたいよ
他に寄る辺もないからね
独り、薄笑いを浮かべる姿は
共感を得られず
そっと潮が引く
割れた海の向こう
輪の中心から外れて裏に回って
ハンカチを落とす要領で
背骨を抜き取っていった
分岐点
導いてよ
尊い存在
推しとして
教えてよ
この先
どこをどう行けば?
次世代アーティスト気取りのS字
雰囲気だけじゃないってさ
証明するなら矯正してよ
標として
最適化
させてよ
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産声を上げてまもなく死に絶える
はじまりとおわりはたったの一行
歴史にも墓石にも残らない途中経過の
今、
が
冗長だ
なんて
大袈裟なんだ
生死よりも
身近な人間たちとの
折り合いのつけ方に
東奔西走四苦八苦
どうでも良いよ
明日死ぬとわかっても徹夜して
心臓が止まる直前まで後悔を繰り返し
何もしないで大事なことを後回し
スペースキーを打ち続けるだけで
埋まる半生
大袈裟でも何でもない生活苦
四畳半
声にならない声を上げて
もれなく必死に耐える
前触れなく死に絶えるまで
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シティポップを聴きながら
夜の海まで車を走らせる
カッコ良い顔なんだろうなそいつ
お別れまでの過程も
あとに残る切なさも
醜さのカケラもないんだろうなあ
恥の多い半生は滑稽過ぎて
サブスクで解禁は無理
誰にも聴かせられない失恋ソング
死にたい夜
部屋の隅っこ 脳内で流してる
気持ち悪いな
きみのことを思い出し
どうしようもない
泣いたらさすがにブサイクすぎるから
無表情
出口のない夜更け
どん底の六畳間
感情を殺して寝転がる
死体みたい
でも息はしてる
イヤホンさして
逃避しても変わらない現実
あれもこれも
キャンセリングできずに苦しい
きみとの思い出から
良いところだけを抜き出して
昨日のことのように
耳元に引き寄せて聴き浸る
気持ち悪いな
人間らしさと交換でも良いから
正しくきみを忘れたい
正気のままじゃ前を向けないとか
ホント醜いな
いつまでも続かない夜に
出来損ないが何を想う
嘔吐きながら
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隣り合わせの苦しみは
地獄そのもの
首を絞められ気絶をしても
冷や水のような現実をぶっかけられて
目を覚ます
そんな時
夜の誘いよりも
眠りに落ちるよりも
ぼくを魅了するきみだ
走馬灯は見てられない
思い出に成った過去はないから
物覚えの悪いバカのまま
一度も振り返ることなく
消えてしまいたかった
誰でも良いわけじゃない
今すぐ会うには
そうするしかなかった
気を紛らわせるには
他の誰でも良かっただけで
事が済んだら
また逢いたくなるって
そこまで頭は回るのに
最低だ
何より素晴らしいことを
「生きるほど」とは言わないよな
そういう話
想えば想うほど楽しめない
僅かな間もなく息ができない
また襲われる
出会ったこともないのに
きみほど恋しいものはない
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もしも
時間が停まったら
何がしたい?
無銭飲食
金品強奪
公然猥褻
殺人テロ
エトセトラ
ぼくはタバコが吸いたい
みんなの前でタバコが吸いたい
スパスパスパスパ
思う存分
吸ってやりたい
ぼくはタバコが吸いたいよ
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ハロー素晴らしい世界!
無菌室から生配信
安全地帯から
ロックを歌われたってねえ?
どっかの偉いさんが
知った風な口でほざいていたな
おっ死ぬ前に
正しいのはどっちか
いつかあの世で議論しようぜ
でも
今は
どうか
あなたが無事であってほしいと願う
こんな唄
マスクやアルコールよりも
頼りないのはわかってる
けれども
便りがないのが良い便りだと
消息不明
音信不通のあなたが
どこかでこれを聞いていればと叫ぶ
駅も商店街も
劇場も議事堂も
どこもかしこももう駄目だ
地上は奴らに占拠されている
トイレットペーパーはまだあるか?
銀の弾丸はないけれど
NO LIVE, NO LIFE
あなたを想って唄を歌う
都内地下深く
四畳半の核シェルターより愛を込めて
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不用意に目を潰す
見えなくなったと駄々をこねる
叱ればいいのか
笑えばいいのか
ぼくは
母親がするように背を向けた
母親とは違って愛情はないから
振り向かず
抱き寄せず
帰路に着いたよ
地べたで泣きじゃくる彼も彼らも
独りになったと気が付けば
腫らした両穴で虚空を仰ぐか
星ひとつない闇を見るのはきっと辛い
後悔しても
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拒絶を拒絶したい
抵抗に抵抗したい
やられる前にやらなくちゃ
逃避からの逃避行
逃げても逃げても逃れられない
自分自身にも負けるのか
我が身に刃を突き立てて
やられる前にってそれ
自傷というより自殺行為だ
掻き毟る
赤く滲む
束の間の静
殺しても殺しても追いかけてくる
諸悪の根源は別にいる
黒幕を倒さなければ意味ないぜ
拒絶して
抵抗して
逃走しても闘争しなけりゃ
自分自身と手と手を取り合って
戦え
このまま野垂れ死ぬのは御免だぜ
そうでもないのか