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高級スプーンあと何年の部屋


[14] ハートビートブラックボックス
詩人:高級スプーンあと何年 [投票][編集]

エールを注がれ
花が咲く
華やかなあの夢を見て
いつか実を結ぶこと
信じて念じて種を植えたんだ

坊主頭が掻き鳴らす
絶望よ、さよならだとか
長髪を振り乱して歌う
四畳半のダイヤモンドだとか

応援歌が何より好きだった
満天の星とインターチェンジ
高速を疾駆する光も
嘘みたいに真っ直ぐな友情も
どれもこれもが心に響き
脳天直下
停止しかけた己を揺り動かす
あなたがブルーハーツを好きだったように
わたしもナイフを持って立っていたかった

暗い帰り道
顔の見えないヘッドフォンの少女が
金属バットをフルスイング
流線型の後頭部を直撃
もう少し早く死んでいれば人気も出たかなあ

特に名前を知りたくもない雑草だって
アスファルトの抜け目から
花を咲かせているっていうのに
どうして芽吹きもしないんだ

笑顔を知ってるダンデライオン
紅茶に入れるシロップはふたつ
何度でも立ち上がるヒーローは
どこにでもいる失敗作だったのに!

同じじゃないのか
何が違うんだ
努力の数が違うんだ
夢破れても
張り裂けない胸
心臓破りの坂を見上げるだけで
明日
また明日と先延ばし
間延びした願望充たすため
あくびした
眠りに就いた
いつしか夢は悪化して
見るたびうなされるように
あんなに嬉しかったエールも
今では残響
銀河の終着駅まで乗り過ごしたぼくよりも遠く

とても遠くに来てしまったし
遠く
とても遠くに行ってしまった

並み居る強豪相手にひとり立ち向かう
戦士のような応援歌だったなら
ここから逆転
満塁ホームランは打てなくとも
金属バットもヘッドフォンも失ったとしても
身一つ
不細工に格好良く戦うんだろう
硝煙 葛藤 血飛沫舞って
最期の一滴まで抗うんだろう
こっちが応援したくなるくらい
だけど

現実は
雨に濡れれば風邪をひく
大切な人が死ねば悲しい
夢破れれば立ち尽くす
そんなにうまくいかないや

どうしよう
どうすればいいんだろう
これから先
聴く耳すら持たなければ
それでも
胎動するものは?

「ほら、また蹴ったよ」

この左胸を衝き動かすのはナニモノなんだ!?







2017/05/01 (Mon)

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