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高級スプーンあと何年の部屋


[50] 暗がりで足踏み
詩人:高級スプーンあと何年 [投票][編集]

溺れるのが怖かったから
安易に
「助けて」だとか叫んでしまった
間髪入れず
疑いもなく差し出された手を
迷わず一直線に掴む
この暗がりならバレやしないか
助けてもらった後にびくついて
足がつくほどに浅い絶望を
相手に知られるのが怖かった

そこからは
トントン拍子で
とんとんと
未来への階段を登る機会が絶えず訪れる
五年後、十年後
ルーペの必要もなく見え見えの未来が提示され
必要なのはわたしの懸命さだけ
賢明ならばご存知のとおり
これまでの不幸が怠惰によるものだと
明るみには出なかったが
わたしだけが今更思い知らされる
嫌というほどに

用意された階段は今も
一段も登れていない
一歩も動いていないのに動悸が激しい
息切れがヤバイ

それは気持ちの問題で
それは努力が足りないせいで
それは弱さで
あなたの全貌は
残っていない足跡が物語っている
足踏みをしていても
けして前には進みません
差し出された手を取っても
その先はあなた自身の頑張りが必要です
病名があれば
救われるのなら
診断書を書きましょう
お薬を出しましょう
あなたは
お金を出しましょう

頑張れって言われたくないのなら
もっと頑張れよ

浅瀬で溺れるわたしが
水面下から藁にもすがる
掴まえて掴まれて
自分で自分の足首を絞めて
身動きを取れなくしている
安易に
「助けて」だなんて口にすれば
すぐに人が集まって助けてくれる
心配してくれる
世の中には良い人ばかりじゃないが
良い人は結構いるから
笑って嘘をついて
自分だけ騙せなくて
暗がりで足踏み
進展がないまま
擦り減らす時間
これ以上
まぶしい笑顔をわたしに向けないでくれ

2018/11/26 (Mon)

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