詩人:亜子 | [投票][編集] |
バステルブルーの
いくつもの驚きを含んだ
はじけるスウィートドロップ
硝子細工の小瓶から
きみがくれるドロップを
僕はとても愛してた
何度舌でころがして
いつからか味が消えても
苦みのむこうに
雨上がりのような
目が覚めるほど胸のすく
薄荷味が見つかるのを
待っていた
それだけを待っていた
黄色信号が点滅する交差点でなくした小瓶の蓋を
とりに行ったきり君は戻らない
独りよがりのなかで
歯をたてれば
ドロップが
ころん とないた
噛み砕こうか
いっそのこと
いやまだ砕かない砕けない
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黄昏が帰り道を
教えて消えて
隣家の影と
空がくっつく頃
昼の残した
アスファルトの匂いに
また君に会いたくなった
なにもない夜が
君を鮮明にして
孤独に愛が現れて
また苦しい
甘い匂いに
軽率を欲しがって
モンシロチョウのような
不確かな軌道で
出会いと別れの帰り道を
ひとり
ここまできたから
ここからいくよ
もう少し
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光って気付いた
舞う蛍
明滅するあかりは
頼りない
光らなければ
期待は失せる
振り返られず
夏の夜に紛れ
忘れられていく
ふらふらと
迷っているように
空に向かって消える
彼らも憧れるのか
絶えず光る
あの星に
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真空の夢のなか
自由という
真綿のうえで宙がえり
足音しのばせた
宇宙の透きとおる夜に
聞こえた
君のひそやかな寝息
宇宙遊泳のとちゅう
僕は忘れものを
見つけた
現実という星のうえで
手をつなぐ
僕たちは
自由だけが恋しいとは
もう 言わない
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霧雨がしんと幕をおろす
あなたしか見えない夜
雨粒を
互いの吐息でつないだ首飾り
指先の繊細なうごきをおぼえて
大切に守る
そう祈りをかけた
そして遠くをのぞむ眼差しをもつ二人だった
守れば守るほど
ゆがんでいく祈りに
ついに壊れたあの衝撃と
霧雨が晴れた開放感は
忘れはしまい
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沙羅の木の下闇で
涼に笑み
落ちる雨を
恵みと喜び
露華に夢心地
影は消えたと
安堵を貧る
流れる風が
憂鬱を教えるまでは
沙羅の木の下闇で
目を閉じ息を潜め
あなたの手を握る
身動きさえ止めて
ぬくもりに祈る
今こそ玉響の時
握り返る力よ
いかないで
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さみしさの
波紋ひろがる水たまり
蹴って乗りこむ
電車の窓に
つややかな雨粒
駆けるたびに
めくるめく光の星雫
ためいき掠う流れ星
夜空は
手を埋めるほど近く
願い星ははるか遠い
その狭間に雨音
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どこかの国の
衛星の軌道がずれたって
ねえ
ぼくらのさ
軌道はあってるかい
ひとりでいられないふたりなら
もう素敵じゃないよ
やめようよ
君とブラックホールは
まっぴらごめん
僕らは塵じゃない
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ぬくもりを側に
他になにもいらない
このままでと
願う夜
そこに朝の陽が
なにもかも壊れて
辛く倒れて
もうこのままでと
願う夜
そこにも朝の陽が
知らず眠らされている私に
残酷な
慰めの光
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舞い落ちる花弁の
裏側が見え隠れ
それはいつも瞬きの中にひるがえり
知らない誰かの
ひたむきな心が横切った
唯の他人が
目眩のなかで変化する
先入観をはらう風に撫でられて
また少し
私の視線があがる