詩人:亜子 | [投票][編集] |
騒音と鎮まらぬ炎帝
木の下闇の冷気は微弱
他人は寄り添うのを忘れ
眩暈は止まず草いきれ
陽炎に追われ
冷えた闇へ逃げようとして
痺れた肢体から
影法師はのびた
誰に踏まれても自らは
踏めず離れず
こころを護っていた
忘れたはずの影法師は
愛すべき本質を知っている
きっと
産まれた時から叫んでた
私はここに居る
私はここに要る
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夜を照らす月は
独り
星々は遠くからみている
闇夜に慰めとなる月を
慰めるものは何処へ
ひと時のやさしいものに
すがってはいたけれど
あなたが守っていたのは
その手にある柔肌の感触
わたしにくれたのは
夜明けの残夢と
置き去りの囁き
あの
抱かれた腕の
甘さは蛍が運んだ蜜
胸にしみて
我を忘れることもできない
誰にも気づかれない涙なら
朝陽に溶かそう
あの空の白い傷痕
有明の月とともに
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西日をのみこんだ
2LDKの亜熱帯
そこにふりつもる
白い氷菓子
空色のかき氷器にあなたは
不透明な雲の塊をつめて
安物のそれへ
咀嚼するための
力を与えては
猛暑にすりへった
知覚過敏な
精神的な部分を
あてがうように
白いものをふらしてく
きんとしみて
現実がしびれるこの瞬間が
私にはなにより心地いい
ホントにスキだね
あなたは呆れるけど
2LDKの亜熱帯
そのようなあなたの氷菓子
それこそに私は
やっと帰りついたから
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どこかしらとまどいながら
点滅する信号の交差点を
急ぎ足でわたる途中
同じように急ぎきて
目があう一瞬のあなたを
私はわすれないだろう
この道の先
過去にまよってきた道標を
路肩においてきたモノを
さみしくおもいだす中で
同じように
あなたをおもいだすだろう
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青い空にふくらむ雲
波たつ草を影がとおりすぎる時
牛はそれはひょいと吸い込んで
白黒ぶち模様に飾られる
まるで気にとめず
蝿をしっぽでふり払い
草をなめあげて
風へと忠実に乗り込んでいく
草原は素直でやわらかい
そのむこうに
空を突き刺して
意味をこじあけた
鉄塔群の針山
無言の電波は
聞いてほしいと夢中でとんでいく
鮮やかに愛すものを知っていながら
けれど僕はあの鉄の砦から
それらばかりを眺めてく
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短いトンネルをぬけた先
晴れた空からこぼれた雨
ふとうつむいた君の
うなじに一粒がくっついて
匂いたった未練
重力のきれた
綿毛となった君は
すぎる景色を一本の風にして
葉擦れのような笑いをくりかえした
想う道を絶って
想う心をのこしたまま
君はそこで
ああ 泣いていたんだね
向日葵の一途さばかりが抜け道と
あの場所から手をひいてきたのは僕の言葉たち
雲になりはてた今
飛沫は僕にかえりきて
染みとなり
染みと残れ
そうして君と
すきとおる日向雨の
遠く虹をさがそう
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提灯たゆたう水槽に
朱いたのしいものを泳がせて
せっせとすくうのよ
だけど冷たいものが
胸の和紙を濡らしては
楽しいものを逃がすのよ
さざ波がまた誘う
夕闇おいかけっこ
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あの夜空から
ひとつまたひとつ
散りゆくものさえ
この身をあたためる
むきだしの手や頬は
冷えてゆこうとも
足を埋めるそれが
僕が知る愛だった
僕の末端から
セラフが採った
赤い林檎の実
押しいただき抱いて
明日へ飛ぼう
加速をつけて
風きって
僕らをとりまく
事情は
疑惑は雨は
霧は風は逡巡は
銀河の彼方
目をつむるその一瞬
君の願いに
我が身を励まして
今僕は夜空をわたる
赤い流れ星
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不純物を含んで涌きでる
疑問や悩み事の
大なり少なり
濃いなり淡いなりの
答えの所以
どこからきたかとおもってみれば
私から涌きでたところへと降り注いだものたちの
輪郭が溶け込む瞬間だったり
拡がる波紋の模様だったり
はねた一粒が透かすものだったり
私以外から訪れたものばかりに隠されていて
隣からはあなたが
終わりない不純物
あなたとふたり
手をつないだものの見方
もうあなたがいないと
だめとおもう
あなたがいなければ
溺れてしまおうとおもう
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いつかの通い道にみあげる
ささやき揺れる笹の葉と
沿うように
歩く速さの川の流れを見つければ
緑の風のなか
不器用に折った笹舟の
消えてははねる
姿を思い出す
前を走る誰かの顔と
笹舟の行方は
雲の縁取り
侵食する空へとけた
はたして
いつかの笹舟のように
この一瞬も蒼穹のかけらになりはてるのだろう
十六夜の月のように
宇宙の影に吸い込まれていくあなたの頬の輪郭を
斜め後ろから目でたどり
今あなたを
これきりとばかりに
あなたを想う