詩人:亜子 | [投票][編集] |
遊んでいたどんぐりの独楽が倒れて季節が育つと
きみはあっさりと目をさまして
未練のレッテルを貼ろうとしていたわたしの服の裾をにぎった
ちいさな欲求と手紙を添えて
期待が跳ねる敏感なまなざしと
虫も喰わないまっさらな一言の
ボクヲアイシテル?
わたしの言葉のなかで
きみだけが聞くものはそう多くないから
誰もが聞くわたしの言葉のなかで
きみにだけ意味を持つものがあるならば
文箱のなかそわそわ芽を出す間もないこの距離が
きみとわたしをつくってる
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ふんわり頬がとまどい弾いてふくらんだ
きみの笑い顔
ぼくの自慢の
まんまるまなこがたわわにたれて
喜楽がつまったお腹が
波だつたびに甘くにおう
もったいないほどの
収穫日和
秋空の
木の実のような指先は
ぼくだけを呼んだ
他のものになって逃げだそうとしたぼくを
あやふやな未来が諌めたいつかの夜
あの場所が大事なぼくだったけど
あの場所だけが大事なぼくじゃなくてよかった
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ふたりのハートに互いの歯痕を刻んだら
固唾をのんで薬指のゆびきり
君の見えっ張り色のリボンと
僕のプライドがきっちり結われたネクタイを
雪解けのブルーリバーに見送って
染みる温度に捕まれても
鳥や魚の絡まる誘いをうけ流し
流木の反乱から逃れ
海にたどりつくまで恋を遊んだら
結婚しようか
結婚しようよ
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なにもしらなくてもできる恋だけど
なにかをしることでできる愛のため
あなたが想像しないタイミングで
おどろくような事をいってみる
ハチミツにジンジャーを垂らしたような
あなたのおもいもよらない姿
そこからはもうジェットコースターをのるようなスリル感
支離滅裂は承知なわけでなく
意外かもしれないけれど
わたしはあなたに前向き
なにをしていてもいなくても
嫌われるそのときだって
あなたにみとれていたい
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目をさますと
白々しい壁
窓辺の明かり
勢いをなくした豆電球
脱ぎっぱなしの服はだらけて
ひらいたままの携帯電話と
投げだしたきみの面影
居座った昨日をゆり起こす
なんてことない夜明け
さあ とばかりにとび起きていた気持ちは
太陽と平行に昇るのも
いつのまにかずいぶんと重くなったけれど
昨日から譲りうけたぼくを試したくて
縫いつけられた新品の朝がとりあえずの踏み台になる
笑っちゃうほど小さなジャンプを
霧の庭からは
金木犀がすくいあげた
そのうち昨日のきみとぼくはいなくなるから
なにか変わったことも
なにも変わらなかったことも
怖がらないで
今日のぼくに触れてみて
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この耳にもこの目にもその指にも
幸福はどこにでも宿るのに
少しの機転をきかせたばかりに
おびえた小鳥のように飛び立っていく
余韻の羽はまき散らせても
幸福はとどまらない
だけどそれはいつでもふいに触るから
見つけたならば深呼吸
そっとみとれていたいだけ
できれば手をつないで
盗み見させて
酔いしれた君の横顔を
煙のようにかき消えた先でも
ただただ君を愛するために
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私たちはいつも
部屋の隅であっています。
公園のベンチであっています。
満員電車の揺れのうえであっています。
ディスプレイの文字列であっています。
桜の花のまわりであっています。
川の流れの音の中であっています。
一本道に寂しげな目はまようけれど
姿をとらえられない手は虚しさを握るけれど
あなたが私を想いだしてくれた時
時間のブロックをひっくり返して
私の輪郭はできあがり形は息を吹き返し
私たちはどこででもであえています。
そしてあなたのおかげで私も想いだせるのです。
私たちは、たった一つから生まれた
ただ一つあることを。