詩人:亜子 | [投票][編集] |
私たちはいつも
部屋の隅であっています。
公園のベンチであっています。
満員電車の揺れのうえであっています。
ディスプレイの文字列であっています。
桜の花のまわりであっています。
川の流れの音の中であっています。
一本道に寂しげな目はまようけれど
姿をとらえられない手は虚しさを握るけれど
あなたが私を想いだしてくれた時
時間のブロックをひっくり返して
私の輪郭はできあがり形は息を吹き返し
私たちはどこででもであえています。
そしてあなたのおかげで私も想いだせるのです。
私たちは、たった一つから生まれた
ただ一つあることを。
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この耳にもこの目にもその指にも
幸福はどこにでも宿るのに
少しの機転をきかせたばかりに
おびえた小鳥のように飛び立っていく
余韻の羽はまき散らせても
幸福はとどまらない
だけどそれはいつでもふいに触るから
見つけたならば深呼吸
そっとみとれていたいだけ
できれば手をつないで
盗み見させて
酔いしれた君の横顔を
煙のようにかき消えた先でも
ただただ君を愛するために
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目をさますと
白々しい壁
窓辺の明かり
勢いをなくした豆電球
脱ぎっぱなしの服はだらけて
ひらいたままの携帯電話と
投げだしたきみの面影
居座った昨日をゆり起こす
なんてことない夜明け
さあ とばかりにとび起きていた気持ちは
太陽と平行に昇るのも
いつのまにかずいぶんと重くなったけれど
昨日から譲りうけたぼくを試したくて
縫いつけられた新品の朝がとりあえずの踏み台になる
笑っちゃうほど小さなジャンプを
霧の庭からは
金木犀がすくいあげた
そのうち昨日のきみとぼくはいなくなるから
なにか変わったことも
なにも変わらなかったことも
怖がらないで
今日のぼくに触れてみて
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なにもしらなくてもできる恋だけど
なにかをしることでできる愛のため
あなたが想像しないタイミングで
おどろくような事をいってみる
ハチミツにジンジャーを垂らしたような
あなたのおもいもよらない姿
そこからはもうジェットコースターをのるようなスリル感
支離滅裂は承知なわけでなく
意外かもしれないけれど
わたしはあなたに前向き
なにをしていてもいなくても
嫌われるそのときだって
あなたにみとれていたい
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ふたりのハートに互いの歯痕を刻んだら
固唾をのんで薬指のゆびきり
君の見えっ張り色のリボンと
僕のプライドがきっちり結われたネクタイを
雪解けのブルーリバーに見送って
染みる温度に捕まれても
鳥や魚の絡まる誘いをうけ流し
流木の反乱から逃れ
海にたどりつくまで恋を遊んだら
結婚しようか
結婚しようよ
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ふんわり頬がとまどい弾いてふくらんだ
きみの笑い顔
ぼくの自慢の
まんまるまなこがたわわにたれて
喜楽がつまったお腹が
波だつたびに甘くにおう
もったいないほどの
収穫日和
秋空の
木の実のような指先は
ぼくだけを呼んだ
他のものになって逃げだそうとしたぼくを
あやふやな未来が諌めたいつかの夜
あの場所が大事なぼくだったけど
あの場所だけが大事なぼくじゃなくてよかった
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遊んでいたどんぐりの独楽が倒れて季節が育つと
きみはあっさりと目をさまして
未練のレッテルを貼ろうとしていたわたしの服の裾をにぎった
ちいさな欲求と手紙を添えて
期待が跳ねる敏感なまなざしと
虫も喰わないまっさらな一言の
ボクヲアイシテル?
わたしの言葉のなかで
きみだけが聞くものはそう多くないから
誰もが聞くわたしの言葉のなかで
きみにだけ意味を持つものがあるならば
文箱のなかそわそわ芽を出す間もないこの距離が
きみとわたしをつくってる
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みなさんこんにちは
みなさんさようなら
わたしの思想は
いつもこの間を旅をする
ときおり戻ったら
この腕に力いっぱい抱きしめて愛していると伝えては
この愛が
旅の先のあの人に触れたらいいのにと
またやんわり送り出す
銀杏の木の下をなにげなく歩く間も
再び持ち帰る
枯れ葉の死臭に包まった無二の孤独と好奇心がわたしばかりを愛さぬように
この腕はあたためて待っている
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赤とんぼのとまどいを
人差し指でごまかして羽根をつかめば
君はここにいる
ぼくのわがままの底へおちていく
君の凛々しき探求への挑戦は夕日の朱
寂しくて仕方がないぼくの頬を染めるもの
愛しく暖かいと想う
明日もまた見たいと想う
ほんの少しの哀しみが
宇宙にたどり着く前にこんな色を見せるのなら
白波の空にのせて言伝てて
赤とんぼの舞う道をはいあがりたい
まつ毛の先の灯をたよりに幻の星座を見つけて
指さして笑いあえる君とぼくは
真正面で出会った重力を知っている
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願いを賭けそびれた星屑が落ちる間に1秒は過ぎて
あの人をのせた車が走り去る間に10分は過ぎて
紫陽花をゆくカタツムリの歩幅の間に1時間は過ぎて
初恋を追いかけるように
1日は過ぎて
思い出したように1年を拾いあげる
そこで見つけた忘れ物と
抱きしめていた宝物
どちらも貪欲に執着し
静かな覚悟の谷間に後悔を投げ捨てて
たったひとつだけでも
差し出せる自慢の品を丁寧にしまってから
雨上がり大地が起き上がる空の下
君と会いたい