詩人:桜井 楓 | [投票][編集] |
雨の降る通り
街路樹から落ちていく雫
古い街並みに見えるのは
あの頃に通(かよ)ったレコード店の
閉じて錆びたシャッターが
どれだけの時間が経ったのかを
僅かばかりにズレた
記憶の断片が
必然的に頭の中に閉じ込めた…
人は誰もが
気にしまい、大したことではないと
思い続けると
かえって
古い滓(おり)が水面へ浮かんでくるように
思い出してしまうもの
本当に忘却できぬそれは
まるで
雨で溜まった水面に薄氷が張り
それを知らぬ間に誰かなのか
はたまた陽の光が溶かしたのか
一度は無くなり
しかしまた一晩にして冷えて凍りついては
再び覆い被せるものとなる…
いつかは明けるとは知りつつも
それがどのような姿であるのかは知らず
たかだか知れた人生に於いては
この街並みの歴史に刻まれる事はなく
だがしかし
確かに触れた雨の雫は
古の内心とは差異もなかった…
詩人:桜井 楓 | [投票][編集] |
わたしは天才である
生まれながらに授かりしものがある
貴方にもありますか?
わたしにはありますよ
わたしも持っていますよ
わたししか持っていませんよ
「浸透写真」
誰もに用意されていて
そこに見本はなく
そこに答えもなく
で見つけていくもの
朝顔の咲く項 朝日が登り 朝が来て
昼顔を見る頃 夏の訪れ 帰り水
夕顔を眺めて 儚さを知り
夜顔も共に 朝顔を迎えよう
二十四時間の営業の終わり
四季が三季になる頃に
近く変動が訪れて
大地を揺るがす出来事に
また
生きゆく花の切なさと
人々の思惑が余計なことと
傘 鳴り合って
微笑み返すことが
ヒトの本文であることに
改めて変わりがない
こととする…