詩人:そほと | [投票][編集] |
朝がいつも
真新しいシャツを着て
ボクを起こしに来る頃
母さんはいつでも
先に起きていて
不服そうに寝ぼけまなこを
開いたボクに
「おめざめね」
と言いながら
大きなアメ玉を
口の中に押し込む
ボクはキョトンとした顔
してみせたけど
本当は知っていたんだ
起きぬけの
全ての幼児がそうであるように
目覚めの瞬間
母さんの温もりを感じられない
不安
あてもなく訴えるためだけに
ぐずらぬように
と
早く目覚めすぎたお腹の虫を
仕度ができるまで
だまくらかそうとしていることを・・・・
それでも
その時は
確かに幸福だったんだ
確かに
そして
今
朝は
昨日と同じシャツを着て
昨日と同じ手口で
起こしに来る
僕は僕で
長い長い夜を
眠ったふりをしながら
手ぐすね引いて待っているんだ
ヤツのシャツが
日一日と汚れ
擦り切れてゆく淋しさを
だまくらかすための
大きなアメ玉
口の中へ押し込んでくれる
やさしい手の無い事を
知りながら