観音堂の水は予想外に甘くそれは物質外で初めての実体を伴う甘さで 観音堂の水は小さな湧き水で一人用の大きさしかなくて歪なひしゃくなど置いてあって古戦場の故事など読んできた私は( いいえ たとえ読んでいなくても )心細く屈み込んでいて 奉られているのは千手観音で水を飲むにしてもふさわしい手が在るのだろうな 私には2本の手しかないのでこの手で飲んだのだがおこなえばそれがふさわしい在り方だとあの甘さは千手観音の微笑みだったのだな
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