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そほとの部屋


[28] 脱皮
詩人:そほと [投票][得票][編集]

泣き出しそうな雲
カラスが捨てゼリフを吐いて
何処かへ消える
嗚咽を漏らしながら糸を引いてゆく水滴
冷たく突き放すトタン屋根
肩をふるわせころがり落ちてゆく
死にぞこないのコオロギ
十字架を背負ったコオロギに
口を開けるマンホール
暗黒の中の底知れぬ海
波打つうわばみの腹の中
エサを求める働き蜂の群れ
ヴームという羽音が
重なり合い ぶつかり合い
空間の一部を占領する
一本の枯れ木が
芽を吹き 葉を付け 造花を咲かせ
禁断の木の実をぶら下げる
冬眠から覚めたヘビが
食べろと言う
俺には
断る理由がない
何処かで
コヨーテの遠吠えがこだまする
けばけばしいトゲで
着飾ったサボテン
ざわざわと ゆれる
息が詰まる
意識らしきものが薄れてゆく
また遠くでコヨーテの
いや ちがう
人の声 歓喜の声 狂気の声
そして背後彼方で
さよならの 声



2009/01/29 (Thu)

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