詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
知らなければ
不便にも感じなかった
でも
知らなければ
必要とも思わなかった
それは良かったし
悪かったことでもあって
ただ
失わなければ
気づかなかったのは
良いとも悪いとも
言えなくて
うん
この感覚は
もう二度と
味わいたくないな
そう
思っていたのに
また
伸びる 手
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どれだけ
楽しい時間を過ごしても
それと同じ分だけ
苦しみが訪れるなら
ゼロになりたい
いまある喜びが
やがて
悲しみに変わる前に
わたしはゼロになりたい
幸せを手にした分だけ
不幸に奪われるなら
わたしは最初から
何も要らなかった
なんて
言えないけれど
足した分だけ
引かれていくなら
わたしもゼロになりたい
差し引きゼロなら
いいけれど
そうじゃない
きみとふたり
いまはひとり
わたしはいつも
ゼロにはなれない
出会っても
いつか
別れがくるのなら
わたしは
はやく
はやく
ゼロになりたい
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虫ひとついない
鉄塔の森
くぐもる鉛色の空
血も涙もない
人工的な景色は
今の気分に釣り合って
寸分違わずフィットする
名前も知らぬ
設計者にとっては
お誂え向きのコースか
自動操縦で
走る電車
どこに行くのか
どこまで行くのか
決定された未来は
しかし
約束はされていない
寝過ごすこともあれば
脱線することもある
それはわかってる
それはわかっている
つもり
血走り歯軋り
蜘蛛の眼
網の目
絡みつく日常
抗おうと懊悩
黄昏時
他者にとって
それは希望と羨望の
まなざし
明後日ゆき
駆け抜ける
幸福のひととき
気が狂わないの?
禍々しき赤い口
夕闇トンネル
潜り抜け
止まった先に
待つうつつ
針はチクタク
刻んでいるのに
起伏のない感情
こころは揺れず
再び動き出す中で
舞い散る粉塵を見た
怪しい雲行き
虫ひとついない
鉄塔の森
走る電車
れられりるれろらろ
ろらろれるりれられ
どこまで行けるか
安らかに輪廻するあたま
中指で弾くほどの
力も要らない
だから
いつだって壊れられる
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玄関のドアを開けて
外面を脱げば
帰ってきたなと
襲う沈黙
みんなの前では
あんなに
笑えていたのにな
多少のお愛想も
混じっているかもだけど
それなりに楽しんでる
自分だっているしさ
鏡を見ると
人前には現れない内面が
精気のないツラ
向けてきやがる
ひとりになると
明るく振る舞えない
どん底まで急落する気分
自分じゃ
どうにもできなくて
誰かに助けを
求めてしまうの
って
友達が
悩んでるんだけど
わたしは
どうすればいいと思う?
友達?
じゃなくて
きみは
そうだね
まずは自分と向き合っ
模範回答は
聞きたくないの
欲しいのは
言葉じゃないの
欲しいのは
絆
こころの奥深くで
繋がり合うことが
できるような
相手が欲しいの
ああ
わたしじゃなくて
友達の話ね
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濁さずに
「」をつけて
言えたらなあ
じぶん磨き
どれだけ
ピカピカにしたってさ
わたしは私
価値は変わんないよ
なんて
言ってないで
たまにはさ
決めてみようよ
キザキザに
気持ちは変わるさ
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もう夕方か
斜面に落とされた長い影
自らを虐げるように
頬を引き裂いて
笑ってる
一切信用できないな
けれど
気が付けば
その削られた細腕に
むしゃぶり縋る
俺がいた
足を取られて
沈む陽は
手を伸ばしても
救えない
それと同じで
どんなに
もがき苦しんでも
心のうちは
一向に伝わらないもので
笑う角を曲がれば
目を背けていた山が見える
運悪く
しわ寄せ喰らった
死に体の山が
ひどく冷たい
投げやりな笑みは
最初から
俺をアテにしておらず
それどころか
一方的に
舐め睨めしていただけで
あっかんべえ
流れ出たボロは
やっぱり
役には立たなかった
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授業で習った社会と違う
縮小されない歴史に刻む
アノ足コノ足
ぶつかって
複雑に絡む
ほどけない
もう歩けない
疲れたにゃあ
わたしとあなたの経済力
どっちが上か
一目瞭然
だから見ないふり
ごまかし笑い
踵を返して
ハンカチ噛み噛み悔し涙
絶滅せずに増え続け
未来へ未来へ突き進む
あなたわたしみんなみんな
みんな
紡がれ乱れくるくるくる
まるで毛糸の玉のよう
うしろに垂らす足跡は
のちの英雄独裁者
それとも名乗るほどの
者でもない者
途絶えた軌跡
人間社会とは何ぞや
授業を受ける宇宙人
窓の外ばかり見てる
つまんない
歴史にだけは
したくない
それまでは
死にたくないなあ
ホトトギス
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実は
我が道にそれる方が
その場しのぎ的に
ラクな時もある
その後の行方を
知る者はいないが
定時に起きて
支度をして
定時に家を出て
定時に定所に着き
定時まで定事をして
定時になったら
家に帰ったり
付き合いで
どこかへ行ったり
家に帰らず
失踪したり
見えないレールに
乗っかって
決められた未知を行く
やがて
避けられない小石に
ぶつかって
今までやってきたことが
パー
ぐうの音も出ず
首チョッキン
そんな時もね
あるよ
脱線したら
戻ってこれない
だから
必死にしがみついて
ひかれたレールの
上を行く
誰かをひいても
自分を差しひいても
それでもなお
あなたのために
やりたいことがあるのなら
どこまでも走る
我が道じゃなくても
定められた道だとしても
走るよ