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高級スプーン似の部屋  〜 投稿順表示 〜


[397] 生えていないパン
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婉曲な物言いは
角も毛も立たない

歪みは矯正されて
全体的に丸みを帯びる

ちくたくミカン
清潔感

大人の言い付けを厳守
子どもにやさしい存在に

どこに行ったんだろう
さっきから
探しているんだけれど
見つからないんだ

誰に問い
何を失ったのかさえ
忘却してしまったよう

こつ
  こつ
    こつ
彼方より
指差す先に
あるのは額

パンはパンでも
食べられるパンは
なんだっけ

示す意味は
さっぱりで

ご飯を食べて
おやすみなさい

2012/03/15 (Thu)

[398] エンドレス循環型にんげん
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環状線を
朝からぐるぐる
山手線の
あなたは今
何周目に突入しましたか?

叩き起こされるまで
眠りたい
前提をまず
間違えている
ぼくの部屋には
一人しかいないから
寝過ごしたんだきっと

これまで
巡ってきた道程
迷宮じゃないから
出口はあるのに
標となる
立て札もパンくずもない
それでも
一本道だから
ゴールは見えている

けれども
行ったり来たりの
大阪環状線
まもなくカーブします
次は
次も
またその次も

実は環状線じゃない
山手線
あの人は今

朝からぐるぐる
思い巡らし
もう一周

はやく誰か
起こしてよ
あと一周だけ
寝かせてよ

巡るぐるぐる
ぐるぐる脳内

回る大阪環状線

2012/03/28 (Wed)

[399] きみと死体
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立ち込める悪臭
腐乱死体のそばで
机に向かってカガクする
きみはまっしぐら
人の道を逸れていく

通じないんだリテラシー
それじゃあ
愛せないんだって
白くもないのに
怪しい粉をフリカケる

死体死体
それは死体
生きてるモノには
見向きもしない

ブードゥーブードゥー
摩訶不思議
不可解魔界のまじないを
独り言ちる

どうすればいいの
この気持ち
死体になれば
愛してくれるの
死体にすれば
思い通りになるのかな
自殺シタイ死体
きみを殺シタイ死体

苦悶の表情も好きだけど
楽にイきたいイかせたい
シカンはいやん
後々のこと考えて
なるべく
傷つけないように

標本にはしたくない死体
甦るのはいつの日か
それまでに
きみも死体
ぼくも死体

シタイ相手に
成就しない恋
墓場に持ってイけないや

2012/03/30 (Fri)

[400] 束の間の
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嘘をついたら
大嫌いだと言われた

引けなくなって
大嫌いだと返した

あなたは泣いた
わたしも泣いた

どちらからでもなく
嘘だよって言った

言わなくてもわかってた
けど

あなたに嫌われるのが
怖くて泣いた

嘘だとわかって
また泣いた

抱き合って泣いた

それから
顔を見合わせて笑った


そんな展開を望んでた


嘘をついた

大嫌いと言われて
大嫌いと返した

引けなくなって
そのまんま

同窓会で
あなたに会った

あなたは笑った
だから
わたしも笑った

あなたは
忘れているのかな

覚えているのは
わたしだけなのかな

だから
嘘をついたこと
もう忘れることにした

帰り際
あなたに

やっぱりわたし
あなたが大嫌い

この大嘘つきめと
言われるまでは

2012/04/01 (Sun)

[401] 絡繰れない
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電子音
駆ける五線譜
捕まって
離せないヘッドフォン
繰り返される
アルケ←
   →スティス
回回回る毒
痺れていく心臓は
しかし
脈打つのを止めず
跳ね上がり
コーダを昇る
揃い踏み
私YOUを決す
さだめも
余韻もなきものに

2012/04/02 (Mon)

[402] 帰り道はひとりがいい派
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目玉だけ
ぷかぷか
歩いていたら
判別できないからね
視線を落としたり
柱の影に隠れたり
しなくて済むのにな

道端
店先
街中
郊外
何時でも
何処でも
俺が出歩いてる間
知り合い全員消え失せろ

そりゃ
気付かれたら
笑いはするよ?
相手が誰でも
好意を見せてさ
でもね
見つかる前に角を曲がる

先輩
後輩
元彼
彼女
友人
知人
親族
家族
どいつも
こいつも
会いたくないから
帰宅するまで砕け散れ

気にしているのは
私だけ
破砕して消失して
お詫びします

だから
目玉を向けないで

角を曲がって
知らない道へ
全然
おうちに帰れない

2012/04/05 (Thu)

[403] 百万光年SOS
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優しい言葉を
かけてほしくて
発しているんじゃない
信号を

手を伸ばさなくていい
座ってお空を
見上げてごらん

浮かぶ雲を
吹き出しにして
呟いたSOS
視界の隅にちらり
それだけでも

助けを
待っているんじゃない
誰かを救いたいなら
他を当たれ
私は自分で
なんとかするから

放っておいて
届かない距離だから
許せる心
触れられない安 感

ほっと一息
あなたの口から
こぼれる真綿に包まれる
何気ないひとこと

きらり流れる星を見て
私はクスリ
笑えたら
明日もきっと
生きていられる

2012/04/08 (Sun)

[405] カーネーション
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歩いても
そう遠くない距離にいる
けれども
足は動かずに
訪ねるのは年に数回だけ

老い先短い命だから
会えるうちに行かないと
後悔しても知らないよ
自分に言い聞かせ
覚悟を決めないと
会いに行けない不幸者

血は繋がっているけれど
心を閉じて
愛想笑い
家族なのに
可笑しいよなあと
苦笑して
僕は僕を嘲笑う
開き直って外に出る

花屋に寄って
買ったのは
一輪の家に帰る理由
これがないと
育った場所にも戻れない

ドアを開ければ
そこにいる
緊張はしないが
息が苦しい
いつから
こんな風になったのか
これでも
マシになったほう
無意味な問答繰り返し
玄関のドア
開けると暖かい笑顔
またひとつ
皺が増えていた

一輪の理由を渡して
邪魔すらせずに
一息もつかずに帰る

次に来るのは
いつだろう

今度はもう少し
早く来たいな
それからちゃんと
話もしたいな
次に行く理由は
どうしようと
考えながら
僕は歩き出す

そうして僕も歳を取り
いつか死ぬ
その前にまた
会いたいな

2012/05/02 (Wed)

[406] シムシカ
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相手を心配
しているという
よりも
自らの保身しか
考えていない
薄皮一枚隔てた
二人の関係に似て

普段は隠れている一部
繋がっているだけで
いいんだったら
はいおしまい

けれど
違うんでしょう
証が欲しいんでしょう

私だけじゃなく
相手もバカなら
すぐにでも
授かることは
出来るのでしょうが

優しい策士の目は
今も明後日の方向でしか
笑っていない

愛してほしいだけなのに
押し込めて
苦しむしか無理
っていうか溺死寸前

精一杯の我が儘は
泣かずに笑顔を返す
騙されていれば
こんな関係でも
まだ続くから

畜生

2012/05/09 (Wed)

[407] わけありわけめなし
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こりこりこり
人差し指で
左胸を削っていく
貫通しても
まだ息をしている
折れた首で
ぽっかり空いた胸の穴
覗き込んだら
景色が見えた
滴る血も涙もないが
眼球はある
心はどこへ

こりこりこり
人差し指で
左胸の穴を拡げていく
切り離された
下半身は
上半身を
取り残したまま
どこかに去っていった

されど
転ばぬ先の知恵は健在で
ぼくは考える
ずっと考えている
物心ついた時から今まで
望みが絶えても
死なないわけを
自分に問い続けている

同じように考えている
みんなと協力し
答を出しあっても
やがて戦争が始まって
燃え盛る炎の中でも
まだ探しているんだろう

事実を
受け入れられる現実を

もう
アナタ
とっくに死んでいるのに

2012/05/09 (Wed)
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