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高級スプーン似の部屋  〜 投稿順表示 〜


[408] 空気はおいしいものなのか
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スーツがない
ネクタイがない
いつも
ネクタイを締めてくれる
妻がいない
ワイシャツがない
下着がない
そういえば
パジャマも着ていない
確かめるための
鏡もない
リビングがない
ていうか
寝室がない
キッチンがない
玄関へと続かない
出掛ける家がない
すやすや眠る
娘はどこへ行った?
あたりを見回すと
風景がない
見回す首もない
手首もない
両手がない
これじゃあ
ネクタイを見つけても
結べない
そもそも
歩く足がないから
会社に行けない
妻も娘も
探しに行けない
参ったな
これが
悪い夢なら
まだ良かったんだが
あいにく
俺には夢がない
希望がない
かといって
絶望も出来ない
考える頭もないから
だとすれば
あれれ
俺がいない
というより
誰もいない
いや
最初から
誰もいなかったのか
始まりも何もない
だから
自分を探す
俺がいない
それなら
もう
苦しまないですむ
はずなのに

最初からないのに
なくならない
そして
誰もが妄りに想う
エアー

ところで
空気は
おいしいものなのか

あなたは知っていますか?

2012/05/25 (Fri)

[409] パンパンパパンパ
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額に手を当てると
平熱です
病気じゃないって
病気でしょうか

体温計を挟んだって
散々頭を悩ませたって
壊れませんよ
人間ですもの

弱いからこそ
頑丈に出来ていて
強く生きようとすれば
心身共に
簡単に折れますけれど

死んじゃいますから
生きちゃいます
無表情に無感動に
自分に伝わるこの気持ち
喜怒哀楽にあとひとつ
そろそろ
加えて下さいな

お医者さんは言いました
今日に至るまで
よくある症状のひとつです

吸って吸って吸って
吸って吸って吸って
溜め込んだもの
一気に吐き出そうとして
死んじゃいそうになる
でもまだ
生きちゃってます
自分しか知らない自分

額に手を当てて
どれだけ熱があるかより
額に手を当てる行為
生きていること
そのものがもう
あれ

なんて
言おうとしたんでしたっけ

病名を告げる前に
お医者さんは消えました

パンパンパパンパ
手を叩いても
変わりませんね
何も

病名はなくても
病気じゃなくても
変わりませんね
何もかも

生きちゃってます
ケチャップ
クラップ
続きはなくとも

今を生きずに
今は死なずに
生きちゃいます

お薬代は空気も込みで
対価は人生
払えるもんなら
払ってみそ汁

2012/05/28 (Mon)

[410] 自分逃しの旅路の果てに
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目的も当てもない
果てのない旅に出るのは
自分逃し
先伸ばしをするため

始まりは
目を背けるところから
探しても探しても
見つからないように
身を隠そうとする
ちょっとやそっとじゃ
見つけられないように

秘密を抱き抱えて
必死に抱き抱えて
手放す日を夢見て
彼此れ何年だとか

冗談じゃない!
      って
うん そうだよ
   現実だよ

go to 自分

手を伸ばし
掴んで捕まえ
失敗するため
自分を逃し
追い掛けていく

そうして
見つけたのはいいが
困ったな

帰りの切符を買う金が無い

2012/06/05 (Tue)

[411] 気にせず話を続ければ?
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皆に見えない
この僕が
塵になって消えたって
誰も困らないよ全然

笑い声と共に
聞こえてきた影揺れる

そんな風にして
あと2、3人
灯された火
吹いて消したってそう

騒然となるのは最初だけ
百年と続きやしない
だからねえ
殺してもいいですか?

お前も僕も皆みんな
巻き込んで
地球ひとつ
塵にしたって一緒でしょ

運悪く
見えない僕ひとり
生き残ったって
揺れる影
きっと笑って震えてる

それなら別に
消さなくたって
いいでしょう
橙色の灯火を

ねえ
そうでしょう
僕にしか
聞こえない声で言う


こっち見んな

2012/06/08 (Fri)

[412] 窓から落ちない場合
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繋いだ手を離しても
崖からは落ちない
いかにも安全な状況に
安心しきって
緩めていたんだ

ふとした拍子に
転がるカメラ
空を仰げば開いた窓が
傷ひとつない壁は
凹凸のない崖に変化して
離れた手と手
玄関口からさようなら

赤い命綱
見方ひとつで
すぐに千切れる
こんなにも脆いとは

手繰り寄せ
かちりと
握っておけよなあ
指導員は居ないもの
独学では届かなかった
未熟者ども
落ちていったのはどちら

きみは星になって消えた

2012/06/09 (Sat)

[413] 目と鼻の先にある
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少しの誤差で
助かって
救われなかった誰かの
冥福を祈る

もしかしたら
自分が殺されていたかも

目と鼻の先にある事件を
パシャパシャ撮る人の横顔
夜のニュースで
観ていた昨日

うなされて
目が覚めたのも
若干
鬱になったのも
事件のせいにするのなら

足の爪先にある地球で
殺されていく人間の顔を
思い浮かべただけで即発狂

誰でも良かった人の標的が
自分じゃなくて良かったと
思う人が何を祈るというの

巻き込まれなければ
風化する
どんな事件だって

今朝だってそう
いつもと変わらず
身を守るもの
何ひとつ持たずに
出掛けただろう

そういうことだよ
あなたって人は
そういうもんだよ
わたしって人間は

どれだけ祈ったって
今日も目と鼻の先
事件が起きて人が死ぬ

誰でもないあなたも
わたしもいつものように
今日も爪先には地球
地に足つけて歩いてる

別に生きていても
今すぐ殺されても
どっちでもいいんだね

2012/06/12 (Tue)

[414] 停滞知らず
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雨が降らなくとも
風が吹かなくとも
滞りなく進む人の歩み

停められるものか
停められるものか
堂々巡る思考の渦

荒々しくも
何も為さない外は晴れ
中心にぽつん
見上げた先にある光
照らしはするけれど

導かれる先は常に闇
苦悶の表情で
途方に暮れる
それでも止まらぬ
歩みよどこへ

道程はいつも足下へ
自分について回るのに
肝心の結果が ねえ

雨が降っても
槍が落ちても
自己を犠牲に進む

免れる術を持たずに
裸で歩く
ひたすらに

人の歩みは停滞知らず

2012/06/20 (Wed)

[415] 親しき仲にはひと坪いくら?
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疑いは常に
過半数には届かない
どれだけ
疑り深い人でも
だから
騙される

疑い半分
触れてみた
すると
どうでしょう

触れれば
触れる程
あれ
何これ
好きかも
ヤバい
超好き
ハマった
ツボに
ハマった
どつぼに
ヤバい
マジこれヤバい
激ヤバヤバい
ヤバいのは
あなたの思考です常考

あなたの嗜好は信仰に
親しい友だちは教祖に
次から壺を差し出せば
あなたは喜んで
尻尾を振るでしょう
次から坪の話をすれば
あなたは悦んで
土地を買うでしょう
家を建てるでしょう

彼を
助けて下さい
彼は今
とても困っています
彼は
笑っていますが
本当は
泣いているのです
彼が震えているのは
笑いを堪えているから
ではありません
悲しみや怒りを
抑えつけるのに
必死なのです
このままでは
彼は必ず
死んでしまうでしょう
その前に
助けて下さい
あなたの大好きな彼を
救って下さい

これは
あなたにしか
出来ないことなんです
彼の特別なあなたに

それは魔法
呪文のような
甘い嘆きを唱えたら
あなたは
何もせずには
いられなくなり
何だって
してしまうでしょう

疑いひとつない
快い心
晴れ晴れとした気持ちで
建てた家を
売り払うでしょう
いくらでも
お金を払うでしょう
それが喜びであり
悦びなんですから

あなたの幸せを
疑う余地は
もうありません
買える土地も
帰る家もありません
すると
あれあれ
友だちの姿が見えません
そりゃそうでしょう
友だちなど
最初から
居ないのですから

だから
私はいつまで経っても
人を信じられず
ひとりぼっちで居るのです

半信半疑
一進一退もせず停滞
信じる気持ちもまた
誰にも届くことは
ありません

だから
親愛なるあなた
一線を越えて
私を助けにきて下さい
お願いです
私を救って下さい

その前にまず
この壺を
手に取ってみて下さい

あなたが
私を信じてくれるなら
私は
あなたを100%信じます

ありがとう
ありがとう
わたしの友は
あなたしかいない

2012/06/21 (Thu)

[416] 冷たい中学生
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青春は笑わない

何故だか理由を考える
途端にわからなくなる

あなたは卒業したから
あなたは卒業したから

むしゃくしゃしてやった
鼻で笑う動機
語尾に恨みと付ければ
陳腐な事件に成り下がる

理由不明で殺された人
残された家族は
誰ひとり笑っていないよ

くだらない日常が
つまらないものだと
切り捨てる若者は
全員
死ねよ

煮えくりかえる
はらわたを引きずり出して
遊べばきっと
死ぬでしょう

答は常にシンプルだから
名前も書かずに提出
評価を得られない

今日も街に出て
犯行に及ぶ

悪い人など居ない
複雑怪奇な笑みは
妄想の副産物なんだ

桜の木の下で
燻らす私怨
風に吹かせば
たちまち消える

青い春
外はまだ寒いから
心を閉ざすよ

2012/06/28 (Thu)

[417] ぬるいゾンビ(30)
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日陰は
身を隠すのに最適で
とても涼しいが
身震いするほどに
寒くもなる
けれど
氷を放置すれば
いつかは
溶けてしまうもの

言い知れぬ
義務感と不安に煽られ
自ら日向に
出てきたのはいいが
時間を前に進める作業
いつまで従事すれば
得られるのだろう
達成感とか
充足感とかさあ

常温の世界
沸かしたお風呂も
忘れた頃には
冷めている

悟りさん
悟りさん
さっさと開いて下さい
お願いします

世知辛い世の中に
身を任せれば
常在化する苦痛
受け流さずに
受け容れていく
生ぬるい嘔吐物
飲み込んでしまえば
吐く必要も無いものね

直射日光
浴びて今日も病気です
期限を設定しないから
腐っても人間
醜い姿で歩むのです

現実に襲いかかって即死
七回殺されても
まだ起き上がってくる
最早
怖いを通り越して可哀想
そう思われたら
バッドエンド

アハハ
終わってますね

(      )
返す言葉を括弧に閉じて
蓋をする人は
セリフまで臭いから
近寄らないで三十歳
格好はつかずに末路まで
反省会はあの世でね

もうずっと笑ってないよ

はいはい
次の人生でまた
頑張って下さい

2012/06/29 (Fri)
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