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高級スプーン似の部屋  〜 投稿順表示 〜


[439] とべないイカロス
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愛され上手な彼女の顔に
泥を塗りたくりたくなる
ような初期衝動
ポケットティッシュで
包み込む
広げれば広がる夢のあと
白濁色の世界地図

きみに触れる手はないが
ぼくを慰める手ならある
ただし
石鹸でいくら洗っても
アルコールを吹き掛けても
消えない罪悪感
ついて回る
非生産的な輪廻

とびたい
とびたい
欲求の要求から
寸前で手を離し
気持ち良く
とべない
とばさない

彼女は太陽
輝く笑顔に魅力され
空高く舞い上がりたい
近付くほどに
溶けてしまいそうな
熱を所望

普段は明るい
きみからの拒絶があれば
地上へまっ逆さま
耐えきれずに
死んでしまうだろう
だから

今日もティッシュの中
頭からすっぽり被って
漏らす欲望

大切な人
事故に遇わせるその前に
ばかとリビドーの使い道
これでも
考えてはいるんだよ



kikaku2012太陽事故手落下

2012/09/04 (Tue)

[440] くれくれ
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手遅れ
失ってから気付いた
人や物

それらは目に見えたり
目には見えないもの
どれも
とても
大切なものだったと
後悔するのも
もう飽きた

なあ
お前
ちょうどいいところに

失ったもの
大切なもの
取り戻すのに
必要なもの
すべてを
ものにするために

なあ
お前から生えている
手をくれ



kikaku2012手

2012/09/09 (Sun)

[441] くろいたいよう
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おとうさんはね
たいようになるんだよ
そういって
おとうさんは
あたしのまえから
きえました

おとうさんはね
たいようになるんだよ
このくにで
いまもくるしんでいる
ひとたちのために

おとうさんはね
たいようになるんだよ
このくにを
あかるくてらす
たいように

おとうさんはね
たいようになるんだよ
はなれていても
おそらから
いつだって
みまもっているから

おとうさんは
わらいました
あたしも
わらいました
おかあさんは
ないています

おとうさんはね
たいようになりました
くるしむひとたちの
えがおがみたくて
たいようになりました

おとうさんはね
たいようになりました
おくにのために
かえらぬひとに

ねえ
おとうさん
いまも
あたしたちを
みているのなら

おねがい
おかあさんの
なみだをとめて

ねえ
おとうさん
そらたかく
あかるく
てらさなくてもいいから

おねがい
おうちに
かえってきてよ

ねえ
おとうさん




kikaku2012太陽

2012/09/09 (Sun)

[442] 儚き趣
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横浜から
隣駅の神戸まで
走る列車は轢き殺す
針の山の頂上付近
飛び込み台から次々と
ジャンプする人々
四散した命を踏みつけて
ぼくは友達と
母親と見知らぬ中年と
旅をする
はやく
トイレに行きたい
破裂しそうな膀胱抱え
死体を越えて三千里
目的地も
目指す理由も最初から
記憶にないのだった

抑圧された願望が
爆発して
生まれた
ワンダーワールド
馬鹿を殺して
ママとセックス
父親に階段から
突き落とされるまで
膨張する我が息子
黒い穴に
望みまでもが奪われて

誰にも理解できないと
嘆くあなたを分析し
判断するのは簡単だ
けれども
結果を心から
認識するのは
もののあはれ
人の夢だと一笑に付す

どうりで
充たされないわけだ

2012/09/11 (Tue)

[443] 言ったり思ったり
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頑張れ
って言われたら

頑張ってるのに
って思う

無理すんな
って言われたら

無理しなきゃ無理
って思う

生きていれば良いことが
あるって言われたら

最近ろくなことしか
ないって思う

それでも生きろ
って言われたら

もう死にたい
って思う

そういう時は
何も言わずに

隣に居てくれるから
好き


思っても言わないけどね

2012/09/12 (Wed)

[444] 火の鳥
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進化の最先端
人が人をやめた時
言葉は言葉としての
機能を失って
あらゆる物語は死んだ

それでも
人外は歩みを止めず
光の速さを軽々越えて
前神未到の果てを行く

まだ
人類が幼かった頃
地球に寝転がり
思い思いに
読み耽った物語
歩みを止めて
空想した内容が
いま現実となって
皮肉にも
息の根を止めたのだ

限りある世界を進み
好奇心旺盛な我らは
人間をやめて
ひとつの物語を終えても
完結には至らなかった

やがて
人外も人外としての
機能を失って
滅亡した時

読んで字の如く
独り歩きする言葉たち

次は
どこへ行こうかと
物語は再び
生きるあなたを想わせる

2012/09/12 (Wed)

[445] 五文字です
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いま
いま
いま
いま
いまを追い掛けていく
きみの
五分後の消滅や
五分前の誕生を
いま
きみは知らないでいる

きのうみた映画も
あしたみる景色も
きみの考えた
偽りだとしたら?

いまを生きることに
なんの意味があるの

スタート地点は蜃気楼
近付くゴールは藪の中
明後日は四次元で
一昨日は悪い夢だ

いま
いま
いま
いま
いまを追い掛けていく
きみの
五分後の消滅や
五分前の誕生を

いま

きみは
知っている気になって
生きている気になって

気になって
気になって
やがて
五分が経過して

五分前には
知らなかった結末を
知らず
読み終えたりしている

2012/10/10 (Wed)

[446] がんばれない
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忙しい毎日
やる気のなさは普遍的で
怒られてばかりいる

負けず嫌いが大嫌い
勝てない試合に出場して
へらへら
吠えもしないお阿呆さん

殺されそうになったって
生活とは無縁の
シを書いて身を削る
なんの足しにも
出しにもならない

余力のない最終電車
ため息だけは一人前
ガタンゴトン
先をゆく後輩の背中を
目で追うだけじゃ
前には進まないから

人間なのは形だけ
振りはもう見飽きられ
泳ぐ尻尾
矛先を失って
宙に溺れる

眠れないのはお前のせい
金が無いのは社会のせい
それでも
死ねないのは 気のせい

ぐったりと尻尾を落として
憔悴

よく頑張った

振り

2012/10/15 (Mon)

[447] むしのいき
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目的がなくても
握る手はあたたかい

喧騒の中
たったひとつの
言葉も必要なくて

隣で寝息を立てる
あなたのすべてが
愛おしい

密閉された夜
星々は帳の外
伸ばした手は溺れ
このまま
沈んでいくことに
望みすら覚えた時

無抵抗のむしに
一縷のぬくもりが

気付けば
理由もなく
その手を握り返していた


あたたかい

2012/10/28 (Sun)

[448] またぐ水曜日
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もうこんな時間か

家に帰って
お風呂に入ったら
すぐに眠らなければ

けれど
このまま
一日を終えるのが
どうしても嫌で
パソコンの電源を入れる

朝になれば
欠伸をしながら
悔やむこと
わかってるのに
耳に流したい曲を
探し始める

最終電車に乗った時には
火曜日は遠い昔
午前二時に聞く歌は
日曜日の団らんよりも
痛い

精一杯の抵抗は
疲れを残して
朝日に屈す

ああもうおきるじかんだ
もっとはやくに
ねておけばよかったな
あしたこそは
なにもきかずに
はやくねよう

そう決めていたのに
最終電車
乗った頃には忘れてる

2012/11/07 (Wed)
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