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高級スプーン似の部屋  〜 投稿順表示 〜


[449] 手持ちぶさたの忙しない日々
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忙しない日々に
手持ちぶさた

この手が塞がっていたから
掴めなかったもの
振り返れば
少しは
残っているだろうか

そうだとしても
根性なしの僕は
前だけを見て歩く
僅かな希望も
抱く勇気がなくて

開いた両手に目を落とす

人に叱られたり
人に誉められたり
誰かと笑い
喜びを共にしたり
ひとりじゃないから
出来るんだよな
当たり前のことに
気付いたのは
ひとりになってから

この先
訪れるかもしれない幸せも
拒むように
人ごみを押しのけて
前へ

多忙な毎日の幕間に
足を止め
誰もが悲しんだとしても

空いた両手に何を落とす?

ぐっと堪えて
歩みを速める

別れを告げる人たちの
すすり泣く声
乾いた両手を握りしめ
ひとり列を抜けた

先に進むよ

振り返っても
当然
君はいないから

2012/12/04 (Tue)

[450] 邪悪な噛み合わせ
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勝手に近付いてきた人は
これ以上
わたしに構うなと
勝手に離れていったから
呆然となる

ふたりの会話は
幾年月もかけて行った
伝言ゲームの結末のよう
ひとことで云えば
「噛み合わない」

突然現れ
荒らすだけ荒らして
去っていく
嵐のような人
こちらから
関わることはもうない
話をすることもない
そう思っていた

7回平和になった国は
8回目の戦争の真っ最中
客観的に見れば
「馬鹿げてる」
そのひとことに尽きる
けれど

張本人は気付かない
火付け役が
まさか自分だなんて
夢にも思わない現実

邪悪な正義の使者は
颯爽と現れ
物議を醸してその後
何事もなかったように
再び
にこにこと白い歯
こちらに向けてやって来た

自覚がないんだ
気付けはしないか
わたしが避けても
首を傾げて
真っ直ぐこちらに
近付いてくるんだろう

「うちら気が合うね♪」

などと抜かしながら

2012/12/13 (Thu)

[451] 塗り絵のカラス
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輪郭だけ描かれた
カラスに着ける色
大人になれば皆が皆
黒を選んで塗り潰す

それを知らずに私
手渡された紙を前にして
軽くパニック
カラスが何かすら
わからなくなっていた

この辺は赤で
こっちは青か
そもそも青ってどんな色

誰もが正解するような
間違えようのない問題
答が提示されている
そう言っても
過言ではない局面で
誰も予想もしなかった
方向へと向かう指先
悪手とすら呼ばれず
無言の静寂が訪れる

私の思考は
理解されないし
皆の思考を
理解できずに
震える手を隠し
意味なく笑った

どうして
ここに居るのかも
わからなくなっていた
皆の笑顔が笑顔なのかも

黒く染まった洗面台
化粧を落とした顔を見る
無彩色の肌に触れ
カラスが何かを思い出す

なんだ
引っ掛け問題だったのか

色を塗る必要はなかった
白紙の時点で
完成していたのだから

2012/12/14 (Fri)

[452] 準備OK?
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世界が終わりました

けれど
それは終わりであって
行き詰まりではなくて

これ以上
先に進めない
行き止まりでもないなら

立ち止まって
深呼吸ひとつ
次のゴールを目指そうか

まもなく
新たな世界の
はじまりはじまり

さあ

2012/12/21 (Fri)

[453] 放射能]'mas 2012
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つんざく寒さにやられ
引きちぎりたい赤い耳
世界の終わる前夜
白い雪が町に降り
けれども
積もることはなく
地球に沈んでいく

来ない明日がやって来た
わかってはいたけれど
未来に続く始まりの朝
期待外れの結果は
起こす身体に
重くのし掛かってくる

予告編を見て
面白いだろうと踏んで
観た映画
騙されたのは
これで何度目か

心の片隅で願い
自分勝手に裏切られる
色気づく街中
静かに歩いて
歩いて歩いて

どこからか
伸びてきた手に捕まって
赤い耳ごと地球から
引きちぎられたい衝動は
雪のように沈んでいく

いくら汚染されても
日常にはあまり響かずに
仰いだ空は遠いまま

僕はまだ終わらない

2012/12/26 (Wed)

[454] 言の花を一輪
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心象風景に咲く花は
わたしの内側にあって
こうして
思い描かなければ
誰にも知られることは
ありません

放っておけば
やがて
記憶の彼方に追いやられ
人知れず
枯れてしまう
人の夢にも似た花で

そうなる前に
押し花みたく
仮想世界に言葉を挟み
あなたの目に触れる場所へ

けれども
それは創られた花
ありのままを
思うままに描いてみても
わたしの心に咲くそれとは
似て非なる言の花

見た目も
想いも思い思いに違う
あなたの目に届く頃には
別物になっています

確かめようもありませんが

現実でも
此処でも個々の
平行線のわたしたち
いくら筆舌を尽くしても
読めない気持ちに
変わりはなくて
ひとりぼっちに
代わりもなくて

それでも
ひとりひとり
互いに目を背けなければ
ひとりとひとり
視線は交差しますから

今宵も想い
描くのです

仮初めでもいい
心のうちに咲く花を
表に出ない感情を
うたにして

ハローハロー

あなたに
伝えてみたいのです

2013/01/07 (Mon)

[455] 美味しい世界
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人災か震災か
とあるこの世の終わり
わたしを除けば
無人の列島にて

瓦礫の街を抜け
陰る海辺にひとり
遠くを見ていた

人恋しいと嘆いてみても
漂着するのは死体ばかり
それも得体の知れぬ
百本足の巨大な化け物で

はじめは
恐ろしくも感じたが
何せ世界は終わっている
怯えることもない

それでも
震える身体の一部
空腹を満たすため
化け物の身を切り開き
眼球や腸を抉りだし
燃え盛る灰の山を背に
乾燥させて
いただきます

酒ならいくらでもある
百本足を肴に
ほろ酔えば
終末だって楽しく過ごせる

おかしな話だ
望みがすべて潰えた世界も
この目には美しく映り
幸せすら感じる

自然とこぼれる笑み
いつ振りだろうか
暗雲立ち込める空の下
とても晴れやかな気分

最後の一本を食べ終わり
わたしは酒を飲み干して
思う
あとは話し相手
美味しい世界を
共に味わえる友がほしい

海に向かって歩き出す

流れ着いた巨大生物
百本足の化け物の
足跡を辿れば
辿り着けるか
ここではないどこかへ

脱け殻の亡骸となり
今はわたしの腹の中
かつては母なる海の中
悠々と泳いでいたのなら
その姿
一度でいいから見てみたい

生きたお前に会いたいと
わたしは母体に入り込んだ

人生のスタート地点から
産道を逆戻りするような
懐かしさに襲われて
凍える
寒い
苦しい
生きた心地がしない

波にさらわれ
深みにはまり
わたしは母に溺れていく
酷い背徳行為の末
待つものは死か

胎児のように身を丸める
どこまでも昏い深海
進んでいるのか
退いているのか
それすらも不明瞭
意識も遠退く

だが不思議と
心は落ち着いている

暗闇の底
切り替わり
ハイになる
いつの日か味わった
幸せな気分が甦える
わたしは足を伸ばして
再び進み始めた

教わることなく
悠々と
恐れることなく
深海を
どこまでも
どこまでも

いつの日か
この美しい世界を
喰らい合える
お前に会えるまで
わたしは行くよ

ここではないどこかへ
か細い足でどこまでも

2013/01/16 (Wed)

[456] ふにゃちん
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あなたは
みんなに笑いかけます
わたしは
みんなに入っていません
右肩から指先へ
指先から左肩へ
胸を前にして作られた
小さな輪の中にみんな
ふと
空を仰げば
外側からでもわかります
俯瞰する顔
太陽や神様気取りの
嫌な笑み
小さな小さな世界に入れず
私はほっとしながら
けれども
拠り所なく
安らかに眠れずにいます
太陽の見えない場所に
行けば凍えます
神様の見えない場所に
行けばもう
何を信じればいいのか
だから
離れられずにいます
けれど
歩み寄れずにいます
近付き過ぎると
囚われてしまいそうで
怖いのです
そして
輪の中から逃げ出した
わたしは二度と
戻れはしないのでしょう
己を最後尾に置いて
みんなの気持ち
考える努力をしない限り
風向きは悪化するばかり
逃げることからすら逃げ
ひとりでは息もできません
弱りきった息子の頭を
傷つけないよう
やさしく撫でてまた
現実を疎かにするのです
あなたの目が
ぎょろり
こちらに向くこと
内心びくびくしながらね

2013/01/20 (Sun)

[457] WORLD IS MIND
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野に咲く花が
一輪じゃないから
人の歴史は
終わらないでいる

それはそれ
地球丸ごと
養分にしてでも
綺麗な花を咲かせたい

隣で揺れる
一輪の心すら
知らない人もいる

少し前までお花畑
今や見る影もなく
そして
誰もいなくなった

2013/01/28 (Mon)

[458] わたし、脱いでもすごいんです。
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溺れる者は
細枝をも掴む

乱れた息を整えながら
枝の先に目をやると

そこには
痩せ衰えたババアが
立っていた

骨と皮だけの腕
けれども
振り解けはしない

血走らせた眼で見下ろし
ババアは鬼の形相で云う

にげるな
にげるな
かわまではぐぞ
にげても
にげても
はてまでおうぞ

ババアに罪を脱がされる
重さの分だけ罰を受ける

気の狂うような年月を
激しい痛みの中で過ごす

死んでも
死んでも
苦しみからは逃れられぬ

百年ごとに
綿で払った巨大な石が
磨り減り
消えてなくなるよりも
永い時間

地獄を味わい
うまれかわる

蝉の声
千より短い一生を

己を戒め
人のため
次は
実を手渡せるよう

乾いた衣服を着て
細枝を掴むまで

生を全うしようか

2013/02/01 (Fri)
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