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高級スプーン似の部屋  〜 投稿順表示 〜


[509] この物語は
詩人:高級スプーン似 [投票][編集]

実在の人物や団体とは
一切関係ないらしい
それらのおはなしは
ここではないどこかに
僕等を連れて行ってくれる

日曜夜六時半の物語が
別に嫌いじゃない君は
夜な夜な街を徘徊し
殺人鬼やサイコパス
極悪非道の
人でなしが引き起こした
残虐な事件を思い返す

無軌道に揺れるいのちが
まだこの世に
べったりとはりついて
離れていかないのは
真っ赤なウソにこそ
引力
救いがあるからだ

辛苦に染まる現状を前に
頭を抱えるように
震わせる拳
開いてみれば
一握の砂さえもない
誰彼とも無関係な
責任逃れの夢物語
すがりつくほかないのだろう

それなら書くしかないな

たとえ虚構と呼ばれても
君という名の赤の他人とは
縁もゆかりもない話を
身もふたもない真実を
ここに


この物語はフィクションです

2014/06/08 (Sun)

[510] そういえば
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いつからだろう
記念日に慣れてしまったのは

誰かの誕生日
誰かの命日
何かの記念日
何かの何かを
祝うことも
呪うこともなくなったのは

去年の今頃も
忘れていたよね
誰かに言われて
初めて気付く
忘れたことも
忘れていたよ

何か思うところもなく
心の所在は
ありもしない幻想に
どこだそれは
どこなんだ?

かえるべき初心
見つけられずに

記念日に慣れてしまった
この世界に慣れてしまった
誰かが死んだこと
誰かと生きること

今日に生きること
昨日に生きたこと
明日が来るまでに
見つけ出せるか

お探しのものは
何でしょうか
答える我は居らず
心ここに在らず
忘却の彼方

誰かのいない日にも
慣れてしまった

誰かの顏すら
誰の顔かすら
もう思い出せなくて

きみは誰なのか
ぼくは誰なのか
誰でもいいや
慣れてしまえば

ところで
今日は何の記念日だっけ?

2014/07/12 (Sat)

[511] くれよくなれ
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お前の才能をくれよ

容姿が良くて羨ましい
性格も好感持てて疎ましい
その上
最愛の人が居て
妬ましい

家族が居て
友達が沢山居て
やりがいのある仕事を持って
目標に向かって邁進する
傍ら
大切な人たちを
一番に考えて行動している
お前はすごいな
恨めしい

こんな自分消えてなくなれ
でも怖いから
代わりにお前居なくなれ

そして
お前の全てをくれよ

そうして
手に入れた私は幸せか
お前みたいに
こなせない日々
ひび割れて
笑顔が張り裂けそうに

ああ

ため息ひとつにも
個性が無いな

それが私のすべてなら
もう何も望みはしない
心底
羨ましいお前

私の中から消えてなくなれ







2014/07/13 (Sun)

[512] シニカル少女とくちゃおじさん
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夢がないと言って
部屋の隅に隠れる少女に
差し伸べる手は
何色か?

完成形を目指して
未完成であり続ける幸福
噛みしめている
とっくに味はない

そこで満足すれば
嗚咽が止まらなくなりそうで
いやだな

空っぽの胸
吐き出すものなど
ありゃしない
それこそ泡沫の
いいや
何でもない

大人びた少女が成熟し
真の大人になった時
味のない夢を
くちゃくちゃ言わす
おじさんを見て毒突く

「アンタ、それでも大人かよ」

想像するだけで怖くなり
部屋の隅に必死こいて隠れてる

震える尻だけが見えていて
とても滑稽
笑えはしないが



2014/07/16 (Wed)

[513] 時鳥の残滓
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どのような意図をもって
設計されたのかもわからずに
窮屈なトンネルを抜けていく

天地の境目すれすれに飛ぶ
ピンポンと跳ね返る音を残し
去り際までに振り返らずに
けれども
辿り着いたこの場所は
まだゴールには程遠い

無邪気に笑い
苦悩しないた
いくつもの難題を抱え
ある時は壁にぶつかり
ある時は途方に暮れた
向こう側に期待しては
それだけで満足をしたフリ
奇矯な振る舞い
黙って堪えて
悲しくなって
抱きしめるのはぬいぐるみ
感じる温もりは
生き滾る自身の血潮だと
気付かされてまた

なけばいいのに
すぐにでも
そうしないのは
強がりなのか

他の望みを外界へ
蹴り落としてまで
託す未来は見えなくて
客観的に理解すれば
面白おかしく
涙が出るよ

やがて
同じトンネルを潜る我が子へ
その心
伝える仕組みはなく
少しだけ形を変えて廻る命
根源
尽きて
果てること
迷うに及ばず

躊躇なく殺してしまえ




2014/07/22 (Tue)

[514] 高級スプーンの副読本
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はじめは気付きもしなかった

目が合ったのは
物心ついてすぐの時

むやみやたらと飛び起きて
遠ざけたのは少年のじぶん

受けいれられずに
背ける背にも
酷薄にも刻一刻と
近付いてくること
わかってしまう

今も変わらず耳を塞いで
こうして
気を紛らわしているというのに

「おいでおいで」しているよ

これ以上は蛇足だろうと
筆を置いたあとに
思い描く
心象の景観の中で
異彩を放っているから

続きは
期待できない岸の向こう

載せられないのが残念だ

本当にそう思うのか
いかがわしいところ

2014/07/23 (Wed)

[515] 自分たちのサッカー
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最適化された都市から
外れた路地裏にあるトタン
長い間風雨に晒され
錆びついたソレを
べりべりと剥がせば
見えてくる
久しく更新されていない
家族の風景よ

寝たきりの老人
世話をしながら
力なく笑う
旧式のおばあさん
最新機種の息子は今日も
家には帰らず
クラウドの支柱となって
作動し続けている

彼は現代社会の礎
と言えば
聞こえはいいが
製造者が誰かも
わかっていない
ネットワーク内で
走り回るその姿
人としての機能は
次第に失われつつあって

ネコ型ロボットが
うまれる前に
人類は絶滅し
新たな生命体が
産声をあげる動画が
世界中に拡散された

葬られる歴史
路地裏の生活感は
色褪せて
アップデート完了後には
もう

因果もへったくれもない未来
いまを生きる現代人
永久機関により
回り続ける地球の上で
次は何をする?
次は何をする?

検知されたウイルスは人間です

時間ばかり気にして
最先端をフォローする
0と1のお前の頭
蹴り飛ばしてやるから
そこにおけよ




2014/07/28 (Mon)

[516] 星を見る少女を見る少年
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屍姦じゃなくて
視姦でよかった



普通じゃないから
なんだか
特別な気がした夜

妙な胸騒ぎ
危険信号
響くサイレンの音は
この胸の高鳴りが
掻き消したから
なんだか
きみに恋をした夜

積み重ねた経験が
恋する気持ちに
変化をもたらす
下心は
真心へ
ワンランク上の関係に

愛する気持ちを知ってから
きみを求めなくなった

恋をするのに
下心が必要なら
セックスレスは
真の愛か

手の届かないきみに
会いに行ったら
なんてことはなく

流れる星を掴んだら
路傍の石と変わらなかった
そんな気分

もう届かないきみに
会わなきゃよかった

普通じゃないのと
特別なのは
イコールじゃない
わかっていたのに

恋する気持ちを知ったから
きみを求めてしまった



2014/08/02 (Sat)

[517] ワンコインラバーズ
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うまれつき目立たない
モブキャラちっくなあの子
担任の先生だって
覚えてられない
黒髪メガネの地味め系女子

教室の隅
休憩中も寝たふりを続ける
幽霊みたいなクラスメイト
あの子と寝るには
ワンコイン
五百円あればいいって噂
真に受けて

放課後
まだ居眠りを続けるあの子
机の上にワンコイン
あくびをひとつ
五百円を受け取った
あの子のおでこには
カーディガンの袖口の跡

はにかみもせず
無表情に席を立つ彼女は
僕の手を引き
教室の外へ

西日差し込む
廊下を抜ける
階段を降りて
保健室に入るまで
誰ともすれ違うこともなく
誰もいない室内で
リボンを外す女の子

一糸纏わぬ姿
眼鏡を掛けていなくても
存在感は希薄なままで
白いベッドに誘われる

行為も淡泊そのもので
後にも先にも残らずに
一息抜いて終えたあと
静かに後始末をする彼女
シャツのボタンを留めながら
夢を見ていた

朝になれば
目は覚めたけど
心にはわだかまりを残し
気分は晴れない

誰とも仲良くせずに
うつ伏せのまま
いつの間にか消えていた
不登校になり
卒業式にも来なかった
あの子の笑顔
今になって知りたくなって

そもそも
あの噂は本当だったのか?

思い立って企画した同窓会
やって来たのは
久しぶりの面々と
今でも付き合いのある奴ら
そこに
あの子の姿は

向かいの席に座っている彼女は
あの頃よりも垢抜けていて
大学のサークルで出会った男と
結婚したらしく
幸せそうな笑み浮かべ
楽しげに
ウーロン茶を飲んでいる

「お酒は飲まないの?」って
何気なく訊いたら
彼女ははにかみながら言う

実はね、

僕はワンコインを置いて
店を出た

彼女はもう
あの子じゃなかった

あの子は最初から
どこにもいなかったのか

どうにもならないこの気持ち
僕は叫んだ
とにかく走った

そのあとすぐに
佐藤の野郎に呼び戻され
説教とジャーマンを受けて
三次会まで幹事を続けたんだけど

橋さんは終電前に帰りました







2014/08/06 (Wed)

[518] pahu_pahu
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悶々と罪を犯す
性欲を全部
削ぎ落しても
その柔らかな乳房
愛おしく思えるだろうか

石膏像にはない魅力
適切な温もりをそのままに
相変わらずのきみを抱いた

頂きから
突き落とされる手前までは
小難しく考えるのをやめても
シャワーの音を聞きながら
ふりだしに至る
間抜け

また登るのか
空を見上げて
晴れた顔など出来はしない

どうせまた
同じ想いを繰り返すくせに

悶々ときみを裸にする
頭も性器も全部
削ぎ落とせば
ぼくという人間は残らない

身も心も燃焼し
どれだけデトックスしても
なくならない皮と肉
そこに己がいなくても

食べない
ヤラナイ
眠らない

そんな人間は
とっくに死んでいるから

2014/08/26 (Tue)
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