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高級スプーン似の部屋


[274] 背面祖歌
詩人:高級スプーン似 [投票][得票][編集]

思い出すのは
いつも背中
あの時
きみは
どんな顔をしていたのか
思い出せない

思い出せないのは
あなたが
背を向けていたからよ

そっか
じゃあ
ぼくが見ていたのは
誰の背中だ

あなたのママよ
このマザコン

そうか
そうだな
思い返せば
いつもそう
母はぼくを
見ていなかった
彼女が見ていたのは
父の背中
ではない
名前も覚えていない
あの人の背中だった

あなたの背中に
文字を書く
人差し指で
言葉を描く

ぞくりと伝わる
きみの声 泣き声に
振り向けば

顔を合わせる二人と
背中合わせになった二人
計三人とあと数人
合わせていけば
ねずみのように
増えていく

誰に背を向けて
誰と顔を合わせるか

それは
気分次第の自分次第

背中合わせ
鉢合わせての
顔合わせ

表を向けば裏には裏が
表の前には裏か表が

いま

ぼくの前には
わたしの前には

ひとりの誰かが笑ってる

その裏で
泣いているのは何人か

ぼくが見ていたいのは
わたしが見ているのは

そう

背後から忍び寄る
かなしい歌には
目もくれず

一心不乱に顔合わせ

ふたりで一緒に笑ってる

2010/12/02 (Thu)

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