詩人:高級スプーン似 | [投票][編集] |
終わってしまった熱の街
川のせせらぎは
嘘のように
喉の渇きを潤さず
両手ですくったそれは
冷たいだけの
砂だった
変わらず月は綺麗で
凍えた体から
今にも飛び出しそうな
脳
ドロドロと
街を覆い
丸ごと
のみ込んでしまえば
何も考えなくて
済むのかもしれない
が
新たな始まりを告げる陽
やはり暑い
汗が本体だったなら
俺はもう
ここにはいない
ここにいるのは
人の形をした砂で
現実は違う
あれほど
強かったことには
理由がなかったけれど
これほど
弱くなってしまったのは
アイツが原因だ
あれもこれも
すべてに絡んでくるから
だから
人前では泣けないんだ
赤く燃え
風に舞い
脈動する砂の海
クジラもイルカもいない
溺れる人間が一匹
釣り上げられるのを
待たずに
そんな幻想は地の底だ
希望を抱いて
もがくあがく
このままでは
終わらせないぞ と
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