詩人:高級スプーン似 | [投票][得票][編集] |
虫ひとついない
鉄塔の森
くぐもる鉛色の空
血も涙もない
人工的な景色は
今の気分に釣り合って
寸分違わずフィットする
名前も知らぬ
設計者にとっては
お誂え向きのコースか
自動操縦で
走る電車
どこに行くのか
どこまで行くのか
決定された未来は
しかし
約束はされていない
寝過ごすこともあれば
脱線することもある
それはわかってる
それはわかっている
つもり
血走り歯軋り
蜘蛛の眼
網の目
絡みつく日常
抗おうと懊悩
黄昏時
他者にとって
それは希望と羨望の
まなざし
明後日ゆき
駆け抜ける
幸福のひととき
気が狂わないの?
禍々しき赤い口
夕闇トンネル
潜り抜け
止まった先に
待つうつつ
針はチクタク
刻んでいるのに
起伏のない感情
こころは揺れず
再び動き出す中で
舞い散る粉塵を見た
怪しい雲行き
虫ひとついない
鉄塔の森
走る電車
れられりるれろらろ
ろらろれるりれられ
どこまで行けるか
安らかに輪廻するあたま
中指で弾くほどの
力も要らない
だから
いつだって壊れられる
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